第3章43話:二つの店

シャーベットの販売により、ルナトリアはさらなる繁盛はんじょうとなった。


唐揚げパンとシャーベットの二枚看板にまいかんばんによって、人気はうなぎのぼり。


テラス席も含めて、毎日のように満員となった。






一方。


ヴィオーネは……


閑散かんさんとしていた。


ヴィオーネに対する客の熱気は、完全に冷め切って……


現在は、行列はもちろん、まともな来客もない。


おかげで毎日のように赤字だ。


もともとトマトスープと氷菓を二連続にれんぞくで外してしまったダメージもあり――――


ヴィオーネの経営は、いまやくるまである。






さらに1ヶ月が経つと、この傾向は加速していった。


ルナトリアはアイリーンの街での地位を完全に確立した。


客は絶えず、行列は絶えず、満席も絶えない。


ルナトリアの人気は一過性いっかせいのものではない、瞬間風速しゅんかんふうそくではないと……誰もが認識しつつあった。


一方、ヴィオーネは。


もはや新商品を出そうと、宣伝を打とうと、客が来なくなっていた。


赤字は増すばかり。


しかし「新参であるルナトリアに負けている」ことが許せなかったカノリアは、なかなか撤退の決意ができず、抵抗を続けていた。


いつかツキが巡ってきたら、逆転も有り得るのではないかと思ってしまった。


そのせいで余計に赤字を抱えることになってしまっていた。







「はぁ……」


客のいないヴィオーネ6号店。


店内ホールのテーブルに座ったカノリアは、暗いため息をつく。


そのとき。


りん、りんと玄関のベルが鳴った。


お客さんが来た……?


そう思ったカノリアが立ち上がる。


しかし。


現れたのは、客ではない。


ラングであった。




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