第3章41話:反応

シャーベットは、アイスなので、溶ける。


このため、行商人に売ったり、アイテム屋などにおろすのは難しい。


彼らは冷凍保存をするすべを持たないからだ。


なので唐揚げパンのように幅広く販売することはせず、


あくまでルナトリアのみで販売することになった。


小規模での販売となったシャーベットだったが……


販売開始して直後、恐るべきスピードで話題が広がり。


3日も経たないうちに大ブレイクした。


「シャーベット一つ!」


「んー! グレープシャーベット、美味しい……!」


「夏にコレはたまんねえな!」


ルナトリアに訪れたお客さんたちが、次々と好評を口にする。


シャーベットだけを食べにくるお客さんもいるほどだった。


シャーベットについては唐揚げパンと同様、テイクアウト販売や予約販売もおこなうことにした。


これにより売上がさらに爆増し、生産が追いつかなくなる事態となった。


(まさかここまで売れるとは……)


この世界では冷菓という分野は、ほとんど開拓されていない。


だからシャーベットでも、それなりに客を集めるだろうと思っていたが……


そんなレベルではなかった。


唐揚げパンと互角か、それ以上の人気ぶりを博している。


夏のアイスというのは、やはり需要が絶大だ。


(よし、作って作って売りまくるぞ!)


俺はやる気がみなぎった。


といってもシャーベットは、作り方さえわかっていれば誰でも作れる。


なので料理人を雇って、ひたすら量産させる。


夜。


閉店時間を過ぎたあと。


キルティナが言った。


「シャーベット販売、大成功ですわね!」


大好評の売れ行きに、キルティナもホクホク顔だ。


シャロンが言う。


「やっぱりラングくんはすごいね! 魚料理だけじゃなくて、氷菓も作れちゃうなんて!」


ルウが言った。


「ジュースを凍らせるという発想は以前からありましたが……本当に凍っただけの菓子でしたからね。兄さんのは、食べやすさが段違いです」


キルティナが微笑む。


「いまとなっては唐揚げパンと並んで、アイリーンの二大名物ですわ。ラングを発掘した私の目に、狂いは無かったようですわね! オーッホッホッホ!!」


おお……


キルティナが、お嬢様みたいな笑い方をしている!


今までほとんどしたことなかったのに。


よほどご満悦まんえつのようだな。


「行列の問題は、依然として残っているけどな」


と俺はぽつりつぶやく。


現在、唐揚げパンとシャーベットは、店の前に屋台やたいを作って販売している。


このように隔離して販売することで、行列が分散されたが……


多少やわらいだぐらいで、まだまだ行列は激しい。


するとキルティナが言った。


「まあ、もともと行列のあるところに、追加でシャーベット販売も開始しましたもの。より行列がひどくなることは予想できましたわ」


「だよな。シャーベット販売は、控えるべきだったか?」


「いいえ」


とキルティナが否定した。


彼女は告げる。


「今は、ルナトリアの地位を不動のものにしてしまうことが先決ですわ。シャーベットのヒットにより、それは揺るぎないものになったと思います」


「ふむ」


「あと……これでヴィオーネにトドメを刺すこともできますもの」


キルティナがそう言った。


するとルウが同調する。


「唐揚げパンに続いて、シャーベットのヒット。ルナトリアが二発連続で当てたことで、ヴィオーネは完全に存在感を失っていますよ」


店を開店したばかりのころは、ルナトリアはヴィオーネの足元にも及ばなかったが……


現在は、立場が逆だ。


ヴィオーネにはもう行列がなくなっている。


お客さんのヴィオーネに対する熱も、かなり冷めているようだ。


「行列の問題は今後も対応しつつ……いまはジャンジャン料理を売って、多くの人にルナトリアの味を知っていただきましょう」


とキルティナがしめくくる。


俺たちは、強くうなずいた。

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