第3章40話:シャーベット2

キッチンでシャーベットを作る。


……


……できた。


完成したシャーベットをお盆に載せて、ホールに戻る。


「できたぞ。いちごシャーベットだ」


俺はテーブル上に、いちごシャーベットとスプーンを差し出す。


「おお……」


キルティナがしげしげとシャーベットを見つめる。


「ジュースを凍らせる……こんな感じになるんですのね」


「ああ。良い感じに果汁を濃縮できた。ぜひ食べてみてくれ」


「わかりましたわ」


キルティナがさっそくスプーンを握る。


シャーベットをひとつ、乗せて。


口に運ぶ。


「ん~~~~!!」


キルティナが顔を上気じょうきさせた。


「美味しいですわ!!」


「気に入ったか?」


「ええ! 夏場(なつば)にこれはたまりませんわね!」


シャーベットぐらいの冷菓は、日本だと簡単に手に入る代物しろものだ。


しかし異世界では、そうじゃない。


なにしろ異世界にはロクな冷菓れいかがないからな。


「いちご以外にもいろいろあるぞ」


と言ってから、俺は他のシャーベットも持ってきた。


いちご以外の4種類のシャーベット。


キルティナは目を輝かせる。


「まあっ」


「全部食べるとシンドイだろうし、ひとくちずつでいいから、ぜひ味見してみてくれ」


「ええ!」


キルティナはさっそく食べ始める。


まずはメロンシャーベット。


「ああ! この甘味あまみがたまりませんわ!」


次に蜜柑みかんシャーベット。


「オレンジの酸味が素敵ですわね!」


次にグレープシャーベット。


「酸味と甘味がマッチして……とても心地いいですわ! まるで上質なワインを飲んでいるかのようですわね!」


そして最後にヨーグルトシャーベット。


「な、なんですのこれは!? 甘いような酸っぱいような……でも、とても好きな味ですわ!」


キルティナは、とても満足げに感想を述べていった。


全てを味見してから、キルティナは告げた。


「天にも昇る心地でしたわ。素晴らしい冷菓れいかの数々を、ありがとうございます」


「ああ。喜んでもらえたみたいでよかったよ」


俺は微笑む。


キルティナは不敵な笑みを浮かべて言った。


「これは絶対売れますわ! ですが、氷となると予算がかさみますわよね……」


キルティナがそう懸念けねんを口にする。


氷は、異世界では安い代物しろものではない。


氷魔導師こおりまどうしがいないと、なかなか手に入らないからだ。


なので庶民にアイスを売る場合、やや高値たかねで販売することが多いし、それでも赤字になることもある。


しかし……俺は言った。


「俺の【料理錬金術りょうりれんきんじゅつ】なら氷なんて一瞬で作れる。水さえあればな」


「そうなんですの?」


「ああ。だから費用については考えなくてもいいぜ」


するとキルティナは微笑みを浮かべた。


「あなたのスキルは、本当に素晴らしいですわね! では、さっそく販売を開始しましょう!」


「おう。じゃあ作り方を教えておくよ」


「はい!」


意思決定が済んだらスピードが命。


さっそく明日からルナトリアで、アイスが販売されることになった。

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