第3章38話:市民の評価

街の市民は語り合う。


「なあ?」


「なんだよ」


「ヴィオーネが新商品を出したって、知ってるか?」


「ああ、知ってるよ」


「なかなか変わったスープらしいけど、まだ食ったことないんだよな。どんな味なんだろうな?」


「トマトスープだろ? オレ食ったぜ?」


「え、マジか? どうだった?」


「なんつーか……まあ、まずくはないんだけどさ」


「何か問題があったのか?」


「いや、どうしてもルナトリアと比べちまうんだよな」


「あー……」


「ルナトリアの料理を食ったときほどの衝撃がないっつーか……あれだったら、ルナトリアの魚介スープを食ってたほうがマシだな」


「比べるのは可哀想じゃね? ルナトリアは別格だし」


「まあそうだな。ルナトリアは値段も安いからな。唯一不満があるとすれば、最近のルナトリアは行列が長すぎて、かなり待たされるところだな」


「それはわかる。オレも待ちくたびれたときは、ヴィオーネで妥協だきょうすることもある」


「行列だけはなんとかしてほしいよな。ルナトリアは2号店ごうてん出さないのかな?」


「そういう発表はねえな。でもそのうち出すだろ。あんだけ人気だったらさ」





ルナトリアとヴィオーネは、よく比較される。


向かいの店であり、同じ魚料理の店であるからだ。


しかし客の評価はだいたい同じである。


まとめると、以下のようになる。


・ヴィオーネの新商品【トマト煮込みスープ】は、悪くないが、ルナトリアの料理ほどじゃない。


・ルナトリアは別格。美味いし、安い。


・ルナトリアは行列が長いので、ヴィオーネで妥協することも少なくない。







この評価を、たまたま小耳こみみに挟んでしまったカノリアは、内心でいかくるった。


(うちで……ヴィオーネで『妥協だきょうする』ですって……!!?)


ヴィオーネは大手。


ヴィオーネは名店めいてん


それが、ルナトリアに劣っているような扱いを受けるなんて。


ルナトリアは、ぽっと新参者しんざんものなのに!


(なんでうちが格下みたいな評価を受けなければいけないんですか!)


カノリアは、激しい怒りで目まいがしそうになるのだった。



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