第3章37話:反撃と結末

<ラング視点>


唐揚げパンのきはとてもいい。


ゆえにキルティナはパン工房を新たに2つ購入して、唐揚げパンの量産体制りょうさんたいせいを整えた。


料理人りょうりにんを大量に雇いまくり、1日で数千個すうせんこの唐揚げパンを作る。


そして以下の方法で販売する。



1:露店におろ

2:冒険者ギルドやアイテム屋などの商店しょうてんおろ

3:行商人ぎょうしょうにん卸商人おろししょうにんなどに売る

4:ルナトリアでテイクアウト販売をする



また、予約販売もおこなう。


これにより、唐揚げパンを欲しい人が、欲しいときに手に入れられるようにできた。







しかし、ここにきて不穏なニュースが飛び込んできた。


ヴィオーネが新商品を販売し始めたという。


しかも大々的だいだいてきに宣伝しており、相当そうとうちからを入れてヒットさせに来ているようだ。


ヴィオーネのきもいりの新商品。


俺は警戒を強める。


しかしキルティナが言った。


「大丈夫ですわよ」


彼女は不敵に笑う。


「あなたの作った唐揚げパンのほうが、絶対に美味しいですわ」






<カノリア視点>


ヴィオーネの新商品。


それは――――魚とトマトの煮込みスープだ。


煮込んだトマトスープの中に、魚の白身しろみを投入したもの。


味は美味しい。


大ヒットは間違いない。


そう確信したカノリアは、大々的に宣伝をおこなうことにした。


あちこちにカネをばらまいて、新商品の告知をおこなう。


おかげで、新商品発売しんしょうひんはつばいの当日。


ヴィオーネの客足きゃくあしが回復した。


オープン以来いらい大行列だいぎょうれつができた。


(ふふふふ、あはははははは! 狙い通りです!!)


行列を眺めながら、カノリアは内心で高笑いした。


(やっぱり私は、商売の天才ですね。これでルナトリアに奪われた客を、取り返すことができます!)


実際に、ルナトリアの行列は小康状態しょうこうじょうたいとなっている。


客を取り返した証拠だ!


笑いが止まらなくて、カノリアは有頂天うちょうてんとなった。





しかし。


日が経つにつれ……。


ヴィオーネの客足きゃくあしは、だんだんと落ちていく。


一週間も経つころには、またルナトリアのほうに客が回帰かいきしていた。


「な、なぜ……」


カノリアは冷や汗を浮かべる。


たしかに、魚のトマトスープは美味しかったはず……。


なのに。


「あれだけお金をかけたのに……!」


魚のトマトスープは、きもいりのアイディアだ。


この世界では未発見の【トマトスープ】というアイディア。


それを魚と組み合わせる大胆な発想力。


しかも味が良いだけでなく、宣伝にも余念よねんなく力を入れて、客に知ってもらう努力もした。


なのになのに。


ブームが起こらない。


こんなにあっさりと客が去るなんて。


これじゃあ、宣伝費すら回収できない。大赤字おおあかじだ。


「くっ……」


激しい怒りと悔しさで、カノリアは歯ぎしりするのだった。





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