第3章33話:冒険者ギルドへ

<シャロン・ルウ視点>


一方。


アイリーンの街の、冒険者ギルド。


ここにはシャロンとルウがやってきていた。


目的は……


営業セールスである!


「というわけで、よろしければ冒険者ギルドに、うちの唐揚げパンを置かせてもらえませんか?」


とシャロンは述べた。


―――冒険者ギルドの執務室。


執務机にはギルド長が座っており、そばには、補佐たる秘書の男性が立っている。


ギルド長の前には、唐揚げパンが一つ置かれている。


ルウが告げた。


「冒険者の方が冒険に出る際、持参しやすいのが唐揚げパンです。携帯食料けいたいしょくりょうとして販売すれば、高い売上が見込めると思います」


さらにシャロンが告げる。


「冒険者ギルドのほうに負担はかけません、商品を置かせていただくだけで結構です。それで売上が発生したら、そのうちの2割を冒険者ギルドの取り分としてください」


「なるほどな……」


とギルド長が理解する。


ギルド長は尋ねた。


「しかし、本当にこの唐揚げパンとやらは売れるのかね? お前たちの店は……ルナトリアといったかな? 聞いたことのない店だ。そんな店の商品が、そうそう売れるとは思えんが」


「では実際、食べてみてください。きっと気に入ってもらえると思いますよ」


とシャロンが言った。


ギルド長は怪訝そうな顔をしつつ。


唐揚げパンを手に取る。


しばし、唐揚げパンを眺めていたが、


やがて口に運んだ。


もぐもぐ……とギルド長は食べる。


次の瞬間。


「ん!!?」


ギルド長は目を見開く。


美味うまい! めちゃくちゃ美味うまいぞ!? なんだこれは!? やみつきになりそうな味だ!」


ギルド長がガツガツとパンにかぶりつく。


シャロンとルウがにやりと笑う。


ギルド長が、あっという間にひとつたいらげてから、言った。


「おっとすまない。つい完食してしまった」


「いいえ。お気に召していただけて光栄です」


「ああ。本当に美味うまかった。……なるほどな、無名の店であるが、味はホンモノということか」


「はい!」


とシャロンは肯定する。


ギルド長は尋ねる。


「しかし、いいのか? これほどの商品を、庶民価格しょみんかかくで販売しても? 貴族に売っても通用すると思うが」


「幅広く、いろんな方に食べてもらいたいというのが、うちの店のコンセプトですから」


「ふむ、そうか。……いいだろう! 唐揚げパン、うちのギルドに置かせてもらおう!」


「ありがとうございます!」


シャロンとルウが礼を言った。


この日から、冒険者ギルドに唐揚げパンが入荷されることになる。


冒険者ギルドのロビー端にスペースを借りて、そこで唐揚げパンを販売する手筈てはずだ。




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