第3章31話:試食販売

俺が販売しはじめた商品。


それは……


【唐揚げパン】である。


魚の唐揚げを、パンとマヨネーズで包んだものだ。


これを、従業員たちの協力で、販売することにした。


――――俺の狙いはこうだ。


まず唐揚げパンをヒットさせる。


その際に、ルナトリアの名前を知ってもらう。


名前さえ知ってもらえれば、来店してくれるお客さんも現れるだろう。


あとはお客さんに、ルナトリアの料理を食べてもらい、味を知ってもらう。


そこでファンとリピーターを獲得し、口コミによって人気を広げる流れだ。


つまり唐揚げパンというヒット商品を呼び水に、来客を増やしていく作戦。


(唐揚げも、マヨネーズも、美味いからな。外れるわけがない)


すでに唐揚げとマヨネーズは、従業員たちからも好評をもらっている。


異世界人の口に合うことがわかっている。


だから、唐揚げパンは当たる。


俺はそう確信していた。







<キルティナ視点>


翌日。


昼。


晴れ。


中央広場にて。


キルティナが、テーブルと皿を持って、試食販売をおこなっていた。


【唐揚げパン】の試食販売である。


唐揚げパンをひとくちサイズにカットしたものを皿に載せてある。


このサイズにしたのは、手でつまんですぐに食べられるようにするためである。


(商品の一部を、客に無料でお試しいただくサービス……画期的ですわね)


とキルティナは思う。


この試食販売というサービスは、ラングが提案したものだ。


――――この世界では、試食サービスは一般的ではない。


お金をもらわずに商品を提供するなんて、正気の沙汰ではないと思われているほどだ。


しかし、キルティナには、試食販売の狙いがわかった。


商品を知られずに埋もれていくぐらいなら、タダでもいいから提供して、まず知ってもらう。


そしてファンになってくれた方に、有料の商品を購入してもらうのだ。


あとはリピーターになってもらったり、口コミをしてもらうことで、収益を拡大していくビジネスなのだろう。


「中央広場にいらっしゃる皆様! ご注目ください! 新規オープンしたレストラン、ルナトリアの新商品ですわよ!」


とキルティナが宣伝する。


「その名も唐揚げパン。今回は、なんと無料でひとくち、お召し上がりいただくサービスを提供しております! どうか一度、食べてみてください!」


しかし、市場いちばを歩いている者たちは関心を示さない。


キルティナは一瞬、めげそうになる。


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