第3章29話:相手の狙い

翌日(オープンまであと6日)


朝。


ルナトリアの店内にて。


俺は、ヴィオーネのオープン日について、みんなに報告する。


「なんですか、それ……」


とルウが唖然とする。


「完全にかぶせてきてますよね」


ルウが不満そうに指摘した。


シャロンが怪訝そうに口にする。


「ヴィオーネは、ほんの数日前に、向かいの家に入ってきたばかりだよね? それなのに、ずいぶんと開店日が早いように感じるけど」


キルティナが答える。


「……まあ、有名店ですからね。ノウハウもツテも、最初から全て揃った状態でのオープンですし、早いのは当然ですわ」


ルナトリアのオープンには、何もかも一からはじめなくてはいけなかった。


しかしヴィオーネは、6号店なので、すでに開店のノウハウがある。


店舗さえあれば、すぐにでもオープンできるのだろう。


ただ。


「早い遅いの問題じゃないですよ。うちと開店日をかぶせてきたのが問題です!」


とルウが憤慨したように言った。


そうだ。


カノリアさんは、明らかに、ルナトリアのオープン日と合わせてきている。


目的は……


(客を根こそぎ奪うため……か)


それしか考えられない。


商売とは弱肉強食。


特に、魚料理は最も競争が激しい業界だ。


潰しあいも熾烈しれつを極める。


コルゼン島は競争がゆるい島だと思っていたが……甘かった。


キルティナが言う。


「まあ、どうしようもありませんわね」


一拍置いてから、続けた。


「もう開店日の届出とどけでは出してありますわ。いまさら変更することはできません」


「そう……だな」


俺は言う。


「相手がどうあれ、俺たちは最善を尽くすだけだ。誠心誠意、取り組めば、きっとヴィオーネにだって負けないさ」


言い聞かせるように、前向きな言葉を口にした。

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