第3章

第3章27話:ライバル店

―――第3章―――





それから数日。


開店に向けて、俺たちは意欲的に宣伝をおこなった。


前向きだった。


きっと上手くいくと思った。


しかし。


俺たちの出鼻をくじくように。


ある出来事が発生した。





実は。


ルナトリアの店舗の、向かいの建物は空き家だったのだが……


そこに、とあるレストランが入ることになった。


レストラン・ヴィオーネ。


魚料理の店である。


ルナトリアのライバルとなる店だ。


いや、ただのライバルではない。


もしも、ヴィオーネがうちと同じ新参のレストランだったら、俺たちは警戒する必要はなかったかもしれない。


だが……


ヴィオーネは、新参ではない。


この【マドリエンヌりょう】における大手おおてレストランだ。


マドリエンヌ領のあちこちの島に支店してんを出し、市民から絶大な人気を得ている有名店ゆうめいてん


そんな名店の6つ目の店舗てんぽ―――6号店ごうてんが、俺たちの向かいに開店することになったのである。


ライバルどころではない。


完全なる格上かくうえ……


ルナトリア開店を前にワクワクしていた俺たちは、冷や水を浴びせられる形となった。







朝。


店内にて。


テーブルに着いて、オープンスタッフ全員でミーティングをおこなう。


「向かいの家にとんでもない強豪きょうごうが現れてしまった件についですが、」


とキルティナが前置きしてから、告げた。


「考えても仕方ありませんわ。開店まで、あと7日。やれることをやりましょう」


「そうですね。いまさら足掻あがいたところで、結果は変わらないでしょうし」


とルウが同調する。


シャロンもうなずいた。


「うんうん、最善を尽くすだけだね」


そうだ。


イレギュラーが発生しただけだ。


気にしてもしょうがない。


自分たちは、自分たちにできることをやるしかないのだ。


俺たちは言い聞かせる。


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