第2章23話:キルティナと顔合わせ

そして。


いろいろあったが……


とりあえず、シャロンとルウが従業員として働くという方向で、話がまとまった。







翌日。


昼前ひるまえ


店内ホールにて。


キルティナとシャロン・ルウが顔合わせをした。


4人がけのテーブルに着く。


俺の隣にシャロンが。


正面にキルティナ、斜めにルウが座る構図だ。


「あれ? シャロン様とルウ様じゃありませんの。お久しぶりですわね」


とキルティナが言った。


口振くちぶりからするに、初対面ではないようだ。


名前に「様」づけをしているのは、シャロンとルウが貴族令嬢きぞくれいじょうだからであろう。


シャロンとルウが挨拶を返す。


「久しぶりだね、キルティナちゃん」


「お久しぶりです、キルティナさん」


「お会いできて嬉しいですわ」


3人が微笑みあう。


俺が告げた。


「キルティナがうちの商会のトップなんだ」


「へえ、そうなんですね」


とルウがあいづちを打った。


俺はキルティナのほうを向いて、告げる。


「キルティナ。実は、姉さんとルウをうちで雇いたいと思ってる」


「え? シャロン様とルウ様を?」


「いろいろあって、二人ははたらぐちを探しているんだ」


「それについては私が説明するよ」


とシャロンが口を挟んだ。


シャロンは、仕事を探している理由を説明しはじめる。


グレフィンド家を出たことを聞いたキルティナがまとめた。


「つまり、ラングの追放に納得がいかず、実家を出たと……」


「そういうことになりますね」


とルウが肯定する。


シャロンが言った。


「ラングくんと離ればなれになりたくなかったからね」


するとキルティナが微笑む。


「仲がよろしいご家族なんですわね」


「そうなんだよ~。えへ~」


とシャロンが俺の腕に抱きつくような姿勢で、肩によりかかってきた。


他人の前でこれは恥ずかしいぞ。


人前でもお構いなしに抱きついてくるんだよな、シャロン姉さんは。


「兄さん。鼻の下が伸びてますよ」


とルウが、ジト目で言ってきた。


「の、伸びてないぞ」


と否定したが、ルウがさらに言い返してくる。


「いいえ。伸びてます。まったく、人前でベタベタしないでください」


「それは姉に言ってくれないかな……」


と俺はため息まじりに答えた。


そのときキルティナがおそるおそる尋ねてくる。


「ら、ラングは、シャロン様と恋愛関係にあるわけじゃないんですわよね?」


「ん? 当たり前だろ。ただの家族だ」


と俺は否定したが、シャロンが抗議してくる。


「えー! 私、ラングくんのこと好きだよー? 恋仲こいなかだよー!?」


「……誤解を招くような冗談を言うなよ。あと付き合ってないのに恋仲とは言わないだろ」


と俺は言い返した。


するとシャロンがすねる。


「冗談じゃないもん。ラングくんのバカ。ふんだ」


ぷい、と顔をそむけてしまうシャロン。


ルウがジト目でいってくる。


「兄さん、鼻の下」


「だから伸びてないって」


「まったく兄さんは、女性に言い寄られるとすぐデレデレするんですから……」


となぜかルウが不機嫌ふきげんになりはじめる。


さすがに姉に言い寄られてもデレデレしてないつもりなんだがな……。


と。そんな俺たちの様子を見て、キルティナがぽつりとつぶやく。


「なんだか、シャロン様とルウ様を雇ったら、強力なライバルになってしまう気がしますわね……」


なぜか不安げな様子だった。


俺は尋ねる。


「ライバル? どういうことだ?」


「ふん。なんでもありませんわ!」


とキルティナが顔を赤らめながら、怒鳴どなるように言い返してきた。


……なぜ怒る。


ルウといい、キルティナといい、不機嫌になるポイントがわからないぞ。

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