第2章22話:報告について

まあ、当然か。


だがルウ自身が【心眼】で判定したことだ。


信じられなくても、きっとルウは受け入れる。


「ちなみに俺が、お前の兄であるかどうかについてだが……前世の記憶を思い出しただけだから、多少、人格に変化はあるかもしれない。なにしろ記憶が混ざり合ってるからな。でも……俺はお前の兄だよ」


「……」


ルウは押し黙る。


ややあって、ルウはふうと息をついた。


「なるほど、わかりました」


さらにルウは言った。


「信じがたいことですが、一切ウソはないようですね。でも、だとすればとんでもないことですよ。異世界の記憶を持った人がいるなんて、前代未聞です」


「ああ。だから、あまり吹聴ふいちょうしないでもらえると助かる」


「当然です。兄さんが、変な連中に目をつけられるかもしれませんからね。むしろ兄さんこそ、あっちこっち言いふらしちゃダメですよ?」


「わかってるよ」


自分が転生者であることを、吹聴するつもりはない。


きっとルウ以外に打ち明けることはないと思う。


「とりあえず、兄さんがニセモノではなく、正しく兄さんであることは理解できました。姉さんにも報告しておきますね」


「ああ、よろしく頼む」


「ただ、兄さんが転生者であることについては、どうしますか? 姉さんに報告しますか?」


「うーん、そうだな。やっぱり報告したほうがいいかな?」


俺はルウに見解を求める。


ルウは答えた。


「私の意見としては、話さないほうがいいかと思います」


「そうか?」


「はい。兄さんが転生者であるというのは、重大な秘密です。親しい間柄あいだがらには、その秘密を共有したく思うかもしれませんが、秘密を知る人が増えれば増えるほど、知れ渡るリスクは増えていきます」


「まあ、そうだな」


人の口に戸は立てられない。


それは親しい者だろうと関係ないだろう。


「なので、どうしても打ち明けなければいけない場合を除いては、みだりに秘密を明かさないほうが無難でしょう」


うむ。


一理ある。


「じゃあ、ルウ以外の相手には黙っておくことにするよ」


「わかりました。では姉さんには、転生の件は黙っておきますね」


「ああ。料理技術は、秘密の特訓で身につけたことにしておいてくれ」


「承知しました」


とルウはうなずいた。




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