第2章21話:告白

ルウが、俺を見極めようとする視線を向けてくる。


俺がいつの間にか料理技術を身につけていたこと。


それは確かにルウにとって、違和感を覚える事象だろうが……


もっと本質的な部分で、俺が以前のラングと違うことを、ルウは感じているのだろう。


「……」


話すべきか悩んだ。


テキトーにはぐらかそうかと思った。


しかし。


(ルウの前で、ウソは通用しない)


なぜならルウには、特殊なユニークスキルがあるからだ。


俺は言った。


「……わかった。事情を話す」


「そうですか。では私のスキル―――【心眼しんがん】を使わせていただきますね」


心眼。


相手のウソを判別するスキルだ。


それがルウのユニークスキル。


ゆえにルウの前では、あらゆるウソは見破られる。


いわば強力な嘘発見器うそはっけんき


ルウをだますことは誰にもできやしない。


もちろん、俺もだ。


「兄さんも知っていると思いますが【心眼】の前でウソは通用しません。本当のこと以外、話さないでください。ちなみに黙秘も認めません。黙秘した場合、私はあなたのことを金輪際こんりんざい、信用しません」


「……」


ウソも禁止。


黙秘もダメ。


退路を断たれたな。


やはり……話すしかないだろう。


「了解した。……でも、これから話すことを他言たごんするなよ?」


「はい。……姉さんにだけは報告させてもらうかもしれませんが」


「ああ、構わない。じゃあ、言うぞ」


ルウの目が細まる。


【心眼】を使い始めたのだ。


ここからウソを言ったら、心眼の判定に引っかかる。


俺は慎重に言葉をつむいだ。


「まず俺は、異世界から転生してきた人間だ」


「……は?」


ルウがぽかんとした。


「俺は日本という国で生まれ育ち、料理を学んだ。それが俺の前世だ。いまの俺には、その前世の記憶があるんだ」


「ちょ、ちょっと待ってください。冗談ですよね?」


「いや……心眼を使ってるんだから、冗談かどうかわかるだろ?」


「……!」


むしろルウのスキルに感謝したほうがいいかもしれない……と俺は思った。


異世界転生をしてきた人間だ、なんて、世迷言よまいごとだと思われてもおかしくない。


しかし、ルウの心眼はきちんと判別してくれる。


俺の言葉がウソじゃないということを。


「さっき作った料理は、まさに前世の料理だよ。俺の料理技術も、料理の知識も、ほとんどが前世から引き継いだものだ」


「……」


ルウが驚きと困惑で、混乱の表情を浮かべている。


しかし【心眼】は発動したままのようで、ルウがぽつりとつぶやく。


「そんな、ウソじゃないなんて……」


ルウは信じられないといった様子だった。

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