第2章19話:パスタ
全員でホールへ移動する。
カウンター席に座るシャロンとルウ。
「おまたせ」
俺は料理を差し出す。
差し出したのは、アサリの魚介パスタ――――ボンゴレだ。
シャロンやルウは貴族令嬢。
だから、上品な料理のほうが口に合うだろうと考えた。
それゆえのボンゴレである。
俺は自分のぶんのボンゴレもカウンターテーブルに置いて、そこに座った。
シャロンが料理を見下ろして、感嘆の声を漏らす。
「わぁ、すごい。ちゃんと料理だあ」
ルウが信じられないといった表情で、つぶやく。
「た、確かに美味しそうですね……それに匂いも」
しかし、すぐにルウは
「た、ただ、見た目と匂いだけじゃダメですからね。料理は味です味! 味がまずければ、何の意味もありませんから」
「そうだな。是非、食べてみてくれ。……おっと、食べ方を言っておいたほうがいいな」
異世界ではパスタは一般的な料理ではない。
はじめてパスタを出されると、食べにくくてしょうがないだろう。
「こうやってフォークで、パスタをくるくると巻いて食べるんだ。……うん、美味しい」
自分でパスタを食べてみての感想。
あさりのダシ、
オリーブオイル、
にんにくエキス、
刻んだタマネギとネギの風味と香り、
新鮮な海水塩、
……等々の味わいがよくまとまっている。
にんにくだけでなくタマネギを加えることで
ネギによって風味を強めている。
あと、見た目がさっぱりしすぎなため、プチトマトを切って添えることで、色鮮やかさを高めた。
「さあ、召し上がってみてくれ」
と俺は言った。
「うん、じゃあ」
とシャロンが食前の祈りをする。
ルウもそれにならった。
シャロンが、フォークを使ってパスタをくるくると巻く。
そして。
口に運んだ。
「……!?」
シャロンが目を見開いてから、言った。
「んー! 美味しい!! これ、ほんとに美味しいよ、ラングくん!」
シャロンがどんどん食べていく。
お気に召してもらえたようだ。
一方、ルウは。
ひとくち食べて、ぷるぷると震えていた。
「な、なんですかこれ」
ルウは言った。
「めちゃくちゃ美味しいじゃないですか。え、うそ。こんなに美味しい料理を、兄さんが!?」
ルウはやはり信じられないといった様子だった。
彼女は続ける。
「こんなの、社交界でも通用しますよ? そのへんのプロが作る料理よりも、全然美味しいです」
「それは嬉しい言葉だな。俺の料理も捨てたもんじゃないだろ?」
「え、ええ……」
とルウが肯定する。
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