第2章18話:二人を店内へ

ルウが困惑をあらわにしつつ確認してくる。


「えっと……『俺の店』って、兄さんが店主ってことですか?」


「そうだぞ」


俺はうなずいた。


さらに告げる。


「ちょうど開店準備中かいてんじゅんびちゅうでな。いま、従業員を募集しているところだ。だから……お前らを雇えるぞ?」


シャロンが尋ねてきた。


「ちなみに、何のお店なの?」


「魚料理の店だ」


そう答えるとルウが首をかしげた。


「は? 魚料理?」


「ああ。ちなみに俺が料理長だ。俺の作った料理を提供する店なんだぜ」


と俺は自慢げに言った。


するとルウが呆れた顔をした。


「あの、何を言ってるんですか兄さんは? 兄さんの料理なんて、美味おいしいわけないでしょう」


「そんなことはない。今のところ、食べてもらった人には絶賛されたぞ」


まあ食べてもらったのはキルティナと料理長だけだが……


ルウが言った。


「ウソですよね? だって、兄さんは貴族令息きぞくれいそくで、料理なんてほとんどしたことないじゃないですか。そんな人の作った料理が美味しいなんて、ありえません」


まあ。


俺は転生者だからな……


異世界での俺しか知らなければ、そういう反応になるのも無理はないか。


シャロンが言う。


「うーん……私もちょっと信じられないかな。ラングくんが料理上手りょうりじょうずなんて、初耳はつみみだし」


ふむ。


仕方ない。


こうなったら。


「じゃあ、実際に食べてみろよ」


「え、食べてみろって……」


ろんより証拠しょうこだ。俺が作った料理を食ってみて、それで判断してみたらいいさ」


そう述べてから、俺は店の中に入った。


二人を招き入れる。


「わぁ、素敵な店だね」


店内ホールを見たシャロンがそう感想をこぼした。


俺はカウンター奥の扉からキッチンに入る。


さっそく料理を始める。


……。


……。


……。


「おい……なんで後ろに立っているんだ?」


シャロンとルウがキッチンに立っていた。


二人して俺の背中を見つめている。


ルウが答える。


「いや、兄さんが不正をしたりしないか監視しようと思って」


「不正なんかしないよ」


と俺は言った。


シャロンが告げる。


「私は、ラングくんが料理しているところを見たいと思って。……邪魔かな?」


「いや、まあ邪魔ってことはないけど」


俺は料亭の息子。


見られたぐらいで集中力を欠くほど、ヤワな鍛えられ方はしてない。


シャロンは言った。


「そっか。じゃあここで見てるね? でもラングくん、すごいね! テキパキ動いて、本当にプロの料理人みたいだよ!」


「おう。ありがとよ」


俺は答えつつ、調理を続ける。


しばらくして。


料理が完成した。



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