第2章17話:仕事

シャロンは言った。


「そりゃあ、会いたくて来たに決まってるよ。だいたい私たち、家を飛び出してきたんだよ」


「ん……飛び出してきた、とは?」


「だから、グレフィンド家と縁を切ってきたんだよ」


「!!?」


俺は仰天する。


縁を切った?


グレフィンド家と?


俺は慌てて尋ねる。


「お、お前たちも勘当かんどうされたのか!?」


するとルウが否定した。


「逆ですね」


「逆……?」


俺が首をかしげるとシャロンが説明する。


「私たちのほうから、お父様に縁切りを申し出たってこと。ラングくんを追い出したグレフィンド家なんか、出ていってやるー! ……ってね」


「まじかよ……」


俺は心底、驚いた。


まさかシャロンとルウまでも、グレフィンド家を出るなんて。


「……俺のせいか」


と俺はつぶやいた。


俺が追放されたから、シャロンやルウの人生にも影響を与えてしまった。


しかも、たぶん、悪いほうに。


「ラングくんのせいじゃないよ。私たちが自分で決めたことだからね」


とシャロンが答える。


ルウもうなずく。


「兄さんが気にすることじゃないです。……ただ、勢いで飛び出してきたせいで、いろいろ問題を抱えていますが」


「問題?」


「はい。実は、遠からず路銀ろぎんが底をつきそうなんですよね」


「え、そうなの?」


と俺が聞くと、シャロンが答えた。


「結構、無計画に飛び出してきちゃったもんね。まあなんとかなるかーって感じで」


「はい。だから屋敷を出るとき、1ヶ月ぶんぐらいの生活費しか、持ち出してこなかったんですよね」


なるほど。


1ヶ月なんてあっという間だろうな。


俺は尋ねた。


「つまり働き口を探してる、ってことか?」


「そうなりますね」


「だったら俺が雇ってやろうか?」


「……え?」


とルウが首をかしげた。


「雇うって、どういうこと?」


とシャロンも聞いてくる。


口振りからするに、シャロンとルウは、俺がレストランを準備していることを知らない。


だから俺は告げた。


「この店……実は、俺の店なんだよ」


俺は親指で、背後にある店舗てんぽ示唆しさする。


「は?」


「え?」


シャロンとルウはぽかんとした。


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