第2章16話:姉妹

テーブルに着いて、スタッフ募集のチラシづくりをおこなう。


業務内容。


募集人数。


給料。


などなどを記述。


簡単なイラストも描いておく。


「よし……完成だ」


ざっと30分ぐらいで出来上がり。


ここが日本であれば、あとは印刷しまくるだけなのだが……


異世界に印刷機いんさつきはない。


だから、ここから手描てがきで、チラシの量産作業りょうさんさぎょうだ。


大変である。


けど、まあ、楽しい。


2時間が経過する。


「んー! ちょっと休憩」


2時間も作業したことで、身体がり固まってきた。


立ち上がって、伸びをする。


息抜いきぬきに、外の空気を吸いにいくことにした。


店の玄関ドアを開ける。


店の裏手うらてに回る。


腰ぐらいの高さのへいがある。


へいの向こうに、眼下がんかに広がるアイリーンの街並まちなみと、海がある。


海風うみかぜがなびいてきて、心地よい。


「ふう……」


しばし、そこで休憩。


10分ほど、何をするでもなく海を眺めたあと。


店内に戻ろうとした。


店の玄関ドアの前に立った、そのときだった。


「あー!!」


突然、声がする。


声のしたほうに振り向くと。


「ラングくんだー! おーい!」


「……姉さん?」


そこには二人の人影があった。


間違いない。


俺の姉妹――――


シャロンとルウだ。


シャロンが、こちらに向かって駆けてくる。


「どうしてここに――――おわっ!!?」


いきなりシャロンが抱きついてきた。


後ろに転びそうになったが、なんとか踏ん張って耐えた。


「やっと見つけたよラングくん! ここにいたんだね! 会いたかったよー!」


すりすりと頬ずりをしてくる姉さん。


そんな姉の様子に、あきがおのルウが、ゆっくり近づいてくる。


「お久しぶりです、兄さん」


「ルウ……ああ。久しぶり」


偶然、この姉妹がアイリーンの街を訪れた……


なんてことはないだろうな。


俺は言った。


「もしかして、俺を探しにきてくれたのか」


「そうだよー!」


とシャロンは即答した。


しかしルウは目をそらして、否定する。


「姉さんはそうかもしれませんが、私は別に、探していたわけじゃないです。うぬぼれないでください。私は姉さんの付き添いにすぎませんから」


するとシャロンが告げる。


「えー? ルウちゃんも、私と同じぐらいラングくんに会いたがってたよね?」


「なっ!」


ルウが顔を赤くする。


シャロンが無邪気な笑顔で言った。


「兄さんに会いたい……兄さんが心配だ、さびしい……って、ずっと言ってたじゃん?」


「っ!?」


シャロンの暴露ばくろに、ルウが顔を真っ赤にする。


ルウが全力で否定した。


「い、言ってません! 言ってませんからねそんなこと! 別にさびしいとか、全く思ってなかったですから!」


「そ、それはちょっと傷つくな……」


と俺が言う。


するとルウが慌てた。


「あ、いや……全く寂しくないわけでは、なかったかもしれません。ちょっとぐらいは、私も寂しく感じていた……と、思います」


ルウが顔を赤らめながら、そう訂正する。


素直じゃないところもあるが、なんだかんだ優しい妹なんだよな、ルウは。

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