第2章10話:他者視点2

<シャロン・ルウ視点>


ラングたちがレストラン経営を決意した同時刻どうじこく


グレフィンド子爵邸ししゃくていにて。


シャロンとルウは、執務室しつむしつをおとずれていた。


二人はラングの姉妹である。


「ラングくんの勘当かんどうを撤回していただけませんか? お父様」


そう告げたのは――――シャロン・グレフィンド。


ラングの姉である。


19歳。


身長170cm。


茶髪のロングヘア。


黄色い瞳。


母性や包容力のある、おっとりとした雰囲気の女性だ。


コルセット&タイトスカートを身につけている。


「私も、勘当はやりすぎだと思います。父上」


そう告げたのは――――ルウ・グレフィンド。


ラングの妹である。


16歳。


身長154cm。


茶髪で、肩にかかるぐらいの髪。


黄色い瞳。


吊り目がちな目つき。


物静ものしずかそうだが、気の強い雰囲気もあわせもつ女性だ。


コルセット&ミニスカートを身につけている。


「ええい、何度も何度もうるさい!」


執務机しつむづくえに座る、ロンバート・フォン・グレフィンドは答えた。


ロンバートは、ラングの父である。


「勘当は撤回しない! ヤツの追放は絶対だ!」


そう叫ぶように告げる。


ここ10日ほど。


シャロンとルウは何度も、ラングの追放を撤回するように、ロンバートに陳情ちんじょうしていた。


しかしロンバートは、何度陳情されようが全て却下していた。


「だいたい、なぜヤツにそこまでこだわる? お前たちとは血のつながりはないだろう!?」


実は、ロンバートは二度結婚している。


一度目の結婚時に生まれたのがラング。


一方、シャロンとルウは、再婚相手の連れ子なのだ。


ゆえにラングとシャロン・ルウのあいだに血のつながりはない。


義理の姉弟きょうだいである。


しかし、シャロンは言う。


「血のつながりがなくても、心は深くつながっていますから。というわけで、ラングくんの追放を撤回してください」


「くどい!」


とロンバートは怒鳴った。


「そうですか、」


とシャロンは答えた。


「では、私も、この家を出たいと思います」


「……!? な、なんだと!?」


ロンバートは目を見開き、思わず立ち上がる。


勘当かんどう……いえ、逆勘当ぎゃくかんどうといったらいいでしょうか? ラングくんが戻らないなら、私はグレフィンド家と縁切えんぎりします」


そう告げたシャロンに、ルウも同調する。


「姉さんが出て行くなら、私も出ていきます。姉さんと同じく縁切りということで」


「ちょ、ちょっと待て」


ロンバートは慌てた。


ラングだけならともかく。


シャロンとルウがいなくなったら、グレフィンド家の未来は立ちゆかなくなる。


シャロンは、グレフィンド家を支える柱となりつつあるし……


ルウの持つユニークスキルは、グレフィンド家にとって極めて有用だ。


いなくなられては困る。


しかし、そんなロンバートをよそに、シャロンとルウは背を向ける。


二人は肩越かたごしにロンバートを振り返った。


「それでは、今までお世話になりました。お父様」


「お元気で、父上」


シャロンとルウが歩き出す。


「待つのだ! お前たちがいなくなったら、グレフィンド家の未来はどうなる!?」


と、ロンバートは二人を追いかけ……


追いすがるように手を伸ばしたが。


「……!」


シャロンが魔法を放つ。


衝撃波しょうげきはのような魔法だ。


「ぐああッ!!?」


ロンバートが吹っ飛ばされた。


執務室のテーブルや家具もひっくり返る。


シャロンが言った。


「ラングくんがいないグレフィンド家なんて、どうなろうと知りませんので!」


ルウが言った。


「では失礼します。さようなら」


執務室の扉を閉めて、シャロンとルウは退散するのだった。


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