第1章6話:二人が食べる
俺はテーブルのうえの皿に、できあがった唐揚げを移した。
「へい、お待ちどう!」
「……お待ちどう?」
とキルティナに変な顔をされる。
おっと。
つい前世の口調が出てしまったようだ。
お待ちどう、という言葉はあんまり異世界では馴染みないからな。
「お待たせしました、という意味だ。……さあ、食べてみてくれ」
「ええ、いただきますわ」
試食は、キルティナと料理長がおこなうことになっている。
料理長が尋ねてくる。
「これは……なんという料理でしょう?」
「唐揚げだ」
「唐揚げ……」
「片栗粉と呼ばれる粉で包んで、油で揚げたものだ」
片栗粉はジャガイモで作る。
この片栗粉は、スキルで生成したものである。
「唐揚げは庶民ウケのしやすい料理だ……あと、マヨネーズをつけると、より美味しくなる。よければ試してみてくれ」
「マヨネーズ?」
「これだ」
と俺はマヨネーズを
キルティナが納得した。
「承知いたしましたわ」
キルティナと料理長が、食前の祈りをおこなう。
そして。
唐揚げをしげしげと眺める。
キルティナがフォークで唐揚げを突き刺す。
ゆっくりと口に運び……
食べた。
「……!!?」
キルティナが、驚いたように立ち上がる。
「な、ななななんですの!? この料理は!?」
彼女は目を見開きながら、告げた。
「こんな美味しい料理、食べたことがありませんわよ!? ほ、本当にあなたが、これを作ったんですの!?」
「実際に作ってるとこ、見てただろ?」
「そ、それはそうですが……」
キルティナが、椅子に戻る。
料理長も、唐揚げをひとくち食べていた。
「信じられませんね……」
料理長がつぶやいた。
「これは、参りました。……悔しい話ですが、私が作るどの料理よりも、美味しいです」
しみじみと料理長がそう告げる。
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