第1章5話:料理完成

このたいを使って何を作るかは、もう決めてある。


唐揚からあげにしよう)


今回食べてもらう相手はキルティナだ。


俺はキルティナと友人なので、彼女の好みはおおむね把握している。


見た目も口調もお嬢様なキルティナであるが、貴族ではなく、商人の娘であり、あくまで身分は平民。


だからかもしれないが、キルティナはお上品な食べ物ではなく、庶民的な料理のほうが好きである。


油物あぶらものも、彼女の好みの一つだ。


「よし……」


頭の中に、料理の道筋みちすじえがけた。


とりあえず【料理錬金術りょうりれんきんじゅつ】によって、欲しい調味料を生みだす。


材料を錬金術によって加工し、マヨネーズや片栗粉かたくりこを生成する。


ちなみに材料は、屋敷に来るまでの道中で買っておいた。


(こういう調味料や調味粉は、レシピさえわかっていれば、一瞬で作れるんだよな)


料理人にとって、料理錬金術はなかなかのチートである。


「ふーん。それがあなたのスキルですのね?」


「ああ」


短く答え……


軽くマヨネーズを味見してみる。


(うん、美味い)


いまの俺は異世界人いせかいじんだが、その舌にもマヨネーズは美味しいと感じられるようだ。


まあキルティナや料理長まで美味しいと思ってくれるかは不明だが……


後で食べてもらえばわかることだろう。


とりあえず、先に料理をこしらえよう。


さっそく俺は、ミズマダイの調理を開始することにした。


まずはうろこを丁寧に落とす。


次に、たんのうを潰さないように気をつけながら、内臓と骨を除去。


さらに唐揚げとしてちょうどいいサイズに包丁で切る。


「……すごい」


と料理長がつぶやいた。


キルティナが尋ねる。


「何がですの?」


「ええと、あんな魚のさばき方は、見たことがないと思いまして。それに、彼……ラング様の包丁さばきは、プロ顔負けのレベルですよ。どれだけ修行したらああなるのか、想像もつきません」


「ふうん。そんなに凄いんですのね。でも……わたくしのような素人にはよくわかりませんわ」


キルティナが肩をすくめる。


最後に塩などの調味料と片栗粉をつけて……


油でげる。


お好みでマヨネーズを用意。


よし……


完成だ。

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