第22話 ボス戦決着!!

 トムさんたちがギガントスタージャルフに突撃してから10分。

 僕は、セルヴァさんに守られながら全自動結界弾フルオート・バリエラパッラでジャルフ達を攻撃している。


 トムさんたちはと言うと、開始早々サモナージャルフを瞬殺したマッジョルさんがトムさんと合流して、ギガントスタージャルフに攻撃を仕掛けている。

 トムさんが基本相手をして、奇襲という形でマッジョルさんが攻撃する作戦のようだ。


(それにしてもマッジョルさん凄かったな。一瞬で、敵のところに行ってパンチ1発で沈めるんだもんなぁ)


 マッジョルさんは、開戦1分もしないうちにサモナージャルフの元までたどり着き、腰を低く構えた次の瞬間、サモナージャルフの前にマッジョルさんが現れ、一瞬の内に弾け飛んでいった。


「坊っちゃま。気を抜かないで。サモナージャルフが死んだとはいえ、上位種はまだまだいるんですから」

「は、はーい」


 しかし、そろそろ僕も飽きてきた。

 流石に、トムさんの方もあと少しで終わる雰囲気を醸し出しているし、ここ数十分結界魔法を守ることにしか使用してないのだ。

 単純作業になりつつあり、端的に言ってつらい。


「妖精魔法:悪意のイタズラ。見てください、坊っちゃま。マッジョル達の方も最終局面みたいですよ?」


 そう言われて、マッジョルさんたちの方を見ると、何やらマッジョルさんの背後に大きな黒い盾と斧のオーラが現れていた。


 ※※※※※※※※※※


 時は少しさかのぼる。

 そこには、ギガントスタージャルフを相手に、拮抗きっこうしている2人の老人がいた。


「おいマッジョル。そろそろ決着付けんか?ワシらの裏庭が大変じゃ。それに、わしの体力もそろそろ限界に来ておる」

「トムもですか。私も同意です。これ以上、私の敬愛するオニピローエ様の屋敷を荒らされたくはありません。それに私も久々に零式解放を使ったので、限界が早めに来そうです」

「あっはははは。あの【微笑みの冷静執事クールガイ】と呼ばれておった男がのお。歳はとりたくないなぁ。ガハハハハハハ」


 どうやら、2人とも意見は同じようだ。


「で、どうする?」

「ここは、1つセルヴァに敵の隙を作ってもらい、そこを私とトムで叩くのはどうですか?」

「それはありだなっと、よいしょ」


 ガキィーーン!


 話している間にもギガントスタージャルフは攻撃の手を緩めない。

 トムはパッと、セルヴァの方を見ると、OKと手で大きく示していた。

 流石は、セルヴァ。

 会話を聞いていたらしい。


 それから、数分今までと同じようにギカントスタージャルフに攻撃を仕掛けていた2人だが突然ギガントスタージャルフがコケたことで、一気に攻勢に出る。


「よっしゃあーー!ナイスタイミング、セルヴァ!最後畳み掛けるぞ、マッジョル」

「分かりました」


 トムは、敵に向かいながら、自分の中にある武器に集中した。

 すると、背後に大きな黒い盾と斧が現れた。


「これ使うのも、久々じゃな。武器解放アルマリベラ


 トムが唱えると背後にあった武器たちが一斉に粉々になり、大きな黒龍のオーラとなって、トムにまとわりついた


「ふぅ、それじゃあ決着じゃ。覚悟せい、バケモン」


 トムは、足に黒龍をまとい、一瞬の内に起き上がったギガントスタージャルフの腹の下まで移動し、そのまま腰を下げ腕に黒龍をまとった。


「くらえ!幻黒龍拳・デストラジオン


 黒龍と一緒に放たれたアッパーは、ギガントスタージャルフの腹に見事に命中。

 ギカントスタージャルフは、声もあげることが出来ず空中に一直線に上がって行った。

 さらに、その先には白いオーラを纏って回転しているマッジョルがいた。


「大車輪かかと落とし・一仙いっせん


 ドゴォォォォォォォン!!!


 上空に上昇するギガントスタージャルフの頭目掛けて打たれたかかと落としは、ギガントスタージャルフを強烈な勢いで地面に叩きつけた。


「ガフッ」


 それでも流石と言うべきかこれだけのダメージをくらいながら、ギガントスタージャルフはまだ生きていた。

 四本ある足はあらぬ方向に曲がっており、目は飛び出し、顔中の穴という穴から血が流れている。

 お腹の方も、綺麗に空いており、裏庭に出来たクレーターの中は、血と体液などで大変なことになっている。

 驚異的な生命力だ。

 誰が見ても死んでもおかしくない、あと1歩の所で、ギガントスタージャルフは無理やり立ち上がった。


「ギャオォォォォォォォォォォォォォァッッ!!!!」


 俺はまだやれるぞとギガントスタージャルフは、バカでかい咆哮化をあげると、自信にこれ程の傷をつけた、息も絶え絶えな老人2人を睨みつける。

 トムは、武器解放アルマリベラを使ったことで、完全に戦う力を失い、マッジョルも仙氣を使いすぎたため一時的に動けなくなっている。


「ガァァァァ!!」


 ギガントスタージャルフは、自分をここまで傷つけたことに怒り、目の前に寝ているトム目掛けて噛み付こうとした。

 そこに一閃遠くから、白く輝く1本の弓が放たれてきた。


仙風一射せんぷういっしゃなぎ


 セルヴァから放たれた弓矢は、ギガントスタージャルフの眉間に突き刺さり、一切の音を鳴らすことなく体を通って貫通した。


 バタンッ


 ・・・

 ・・・

 ・・・



「やったぁぁぁぁぁ!!」

「すげぇぇ!!あの邪獣を倒したぞ」

「なんだあの人たち、凄すぎる!!」



「ふぅ、何とか倒すことが出来たな」

「えぇ。最後のセルヴァの一撃には助かりました」

「これで、あとは残った上位種だけか…まぁ、セルヴァに任せておけば大丈夫だろ」

「そうですね。これで少しは楽に…って、あれっ?急に静かになりましたね」


 トムとマッジョルが話していると、突然周りがシーーンと聞こえるほどの静寂せいじゃくに包まれた。


「あぁん?どうしたんだ急に。おまえらァ、もっと騒げよ、ガハハハハ、ハッ!?」

「トム、どうしたんですか?急にッ!?」


 トムとマッジョルが見た先には、黒い獣人に腹を突き破られているセルヴァの姿があった。

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