第19話 新魔法炸裂っ!!

 チルは僕が作った結界を足場にどんどん進んで行く。

 進んで行くと、段々と裏門の惨状が目に入る。


 どうやら、ジャルフ種の大群が攻めてきている様だ。

 僕を襲った上位種もいるみたいで、苦戦している。

 対応しているのは、グラナータ家自慢の使用人と騎士たちだ。

 グラナータ家は、辺境を任せられている事もあり、使用人も一定以上の戦闘力を持っている。

 


(うーん、これはなんともカオスな状況で)


 突然襲ってきた事もあり、戦場は敵味方入り乱れの乱闘と化している。


《どうして、いきなり来たんでしょう?この前のジャルフ達はロイ様によって全員死んだはずです…》


(そうだよなぁ。まぁ、とりあえず降りて、聞いてみようよ。誰かいないかな〜...っと。あそこにいるのはバルト君じゃないか)


 バルト君。

 茶髪で角刈りを決め込んでいる、ナイスガイである。

 グラナータ家の新人騎士として、3年働いており、見習い騎士の時に遊んでもらってから、仲良くなった。


「じゃあ、チル。あそこの角刈り目掛けて降りてくれない?」

「にゃっ!」


 チルは、勢いよく避難誘導をしているバルト君目掛けて降りた。


「うぉお!びっくりした。って、チルたんじゃないか。なんでこんな所に...?こんなとこにいたら危ないよ?」

「へえ~、バルト君。チルに対してそんな風に話すんだぁ〜」

「えぇぇぇぇぇぇぇ!!レン様!?」


 僕がチルの背中からすぽっと出るとバルト君は、びっくりした顔をした。


「やぁ!今日も髪型バッチリ決まってるね!」

「ありがとうございます...って、どうしてレン様がこんな所にいるんすか」

「なんか、大きな音が聞こえたから、興味本位で?」


 僕がそう言うと、バルト君は呆れた顔をした。


 いいじゃないか、そんぐらい。

 別に死ぬわけでもないんだから。


「それはそうと、バルト君。今はどういう状況なんだい?なんか、トムさんが前線で、バリバリ上位種の邪獣を倒しているように見えるんだけど」

「あははは。流石、生きる伝説トムさんですよね。今は、トムさんと他の先輩達に邪獣の相手をしてもらって、僕達下っ端は、館内の避難誘導だったり、負傷者の手当だったりしてます──」


 今日は、スタンピードが起こるため、何時でも出陣できるよう、トムさんの指示の元、裏庭で武器の手入れだったりをしていたらしい。

 そこに、突然ジャルフ達が襲撃してきたのだとか。

 幸い、装備もしていたため、死人は出ることは無かったのだが、負傷者が出てしまい大変だったようだ。


 最初は、トムさんと中堅の騎士で対応していたらしい。

 しかし、ジャルフの数があまりに多すぎて対応しきれなくなっていた時に、なんと執事長とメイド長が参戦。

 戦場を五分の状態に戻したのだとか。


 そう言われてみると、セルヴァさんにマッジョルさんも前線で上位種を相手にボコボコにしている。


(え!?皆、強すぎない?みんな80代だろ…。僕、この前苦戦しちゃったんだけど...)


「頼もしいですよね!流石、侵略大戦の、生き残りの方達ですよね。憧れるなぁ...。それはそうと、レン様もここはトムさん達に任せて、避難しますよ!」

「えぇー。せっかく面白そうなのに?」

「えー、じゃありません。ほら、行きますよ!」


 バルト君は、強引に僕の手を取って避難させてきた。


(チッ。こうなったら、奥の手だ)


《マスター?今回は、このバルトの言うことを聞いていた方が──》


(うるさいっ。それじゃ、つまんないでしょ!)


「じゃ!ありがとうバルト君。チルはここで皆を守って上げて!それじゃっ!!」

「にゃ!」

「どういう──」


 バルト君の話を聞かないまま、僕は空間魔法で前線に転移した。

 これで、ジャークに試せなかった魔法が使える。


(よしっ、じゃあアカさん。新魔法、いきますか!)


《やはり、こうなるんですね。了解しました。こうなれば、全力でサポートします!》


 アカさんの了承も取れたということで、さっそく新魔法をお披露目と行こう!

 今回、使いたい魔法は、自動で結界針バリエラ・アーゴを飛ばすという魔法だ。

 僕が操作せずとも、敵を空間魔法で感知して、結界針バリエラ・アーゴを倒すまで発射するというシンプルな魔法になっている。


 集中しだすと、僕の背後に5つほどの魔法陣が表れた。


(よしっ!成功みたいだな)


《お見事です。これであとは魔法陣を維持しながら発射させるだけですね》


(見てろ、ジャルフのクソども。この前のお返しだぁぁぁ)


全自動結界弾フルオート・バリエラパッラ5陣ペンテ。目の前にいるジャルフどもを殲滅しろぉぉ!!」


 ドドドドドッ!!


 僕が唱えると、背後の魔法陣が輝きだし、結界針バリエラ・アーゴがどんどん発射されていく。

 流石の上位種でも数には勝てずダメージを食らっているようだ。

 通常種は、数回当たれば死ぬ。

 ふんっ、ザコめが!


(ふぅ、気持ちぃぃなぁ)


《マスター、目立ちすぎです。周りの方達が気づきました。どうするん...あっ、セルヴァ様がこちらに近づいて来ます》


(え!?ちょっと待って。まだ、言い訳考えてな──)


「随分はしゃいでるようで、お元気そうですね」


 ひぃぇえ、怖!

 後ろから、シルヴァさんが優しい声で話しかけてきた。


「あっ、いやこれはなんて言うか...あははははは」

「笑い事じゃありません。どうしてきたんですか」

「面白そうだったから?」

「はぁ…」


 シルヴァさんは、呆れた顔をした。

 今日で2回目だぞ。

 そんなに変かな?


「まぁ、来たものは仕方ありません。レン様の先程の魔法と、結界で前線の人たちをカバーしてください。お願いできますか?」

「了解!!」

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