第15話 初召喚は、神界の犯罪者?

 翌朝、僕たち家族は家の前でお見送りをした。


「じゃあ、俺はミュールさん達と見回り行ってくるから、レンもあんまり遠くまで行くなよ」


 ミュールさんとは、お父さんが本島で冒険者をしていた時のパーティメンバーだ。

 体はお父さん以上に大きく、長い緑髪を結っておりエルフだ。

 それに加えてミュールさんは、ドルイドなのに盾と鉄槌てっついを装備しており、パーティ内ではタンクのような役割をしていたらしい。


「わかったー。今日は、邪獣は狩らないから、大丈夫だよ!」

「了解。じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


 兄がどこに行くのかというと、カコの大森林という邪獣の巣窟だ。

 四龍英雄テトラヘロスは統治する地域にそれぞれ役割を与えられている。

 僕達グラナータ家の役割は、カコの大森林に住まう邪獣の魔引きと、時々発生する魔物暴走スタンピードを止めることだ。

 ほかの家にも、それぞれ役割があるのだがそれはおいおい。



 それから僕は、中庭に向かった。

 チルも一緒だ。

 ゴブ助は、執事長マッジョルさんの元に行き、執事修行をしている。


「さて、早速ドーマン式結界を張って行きますか」



 僕は、4年前、五芒星を結界に書くことで、機能性などもろもろが上がったことを機に色々な実験をした。

 そのなかで実用的になった一つがドーマン式結界だ。

 ちなみに、五芒星の結界をセーマン式結界と、よんでいる。


 ドーマン式結界とは、結界に5段の格子模様を書いて結界を展開する結界魔法のことだ。

 この結界は、セーマン式と違い、機能性や柔軟性などは上がらない。

 しかし、セーマン式と比べて、硬さなどが格段に上がり、更に、結界内の敵対生物のあらゆるステータスを下げる力がある。


 今回は、この結界を何重にも張り巡らせ、召喚した瞬間にデバフをかけるという作戦だ。


「結界生成開始。ドーマン入力。範囲拡大」


 ドーマン式結界は、僕もまだ扱い慣れていなく、瞬時に生成させることは出来ない。

 こうやって、一過程ずつ確認しながらじゃないと、失敗してしまう。


 最初の結界は、中庭をちょうど半分覆うぐらいの大きさにした。

 これから、今生成した結界の内側に更にドーマン式結界を生成していく。

 目標は、20個の結界を生成させること。

 ていうか、20個までしか同時生成&結界維持は、出来そうにない。


 こんな感じで、今日の一日は終わった。


 その日の夜、ロイ兄とご飯を食べている時に


「おい、レン。中庭のやつは何だ?屋敷のみんなが驚いてたぞ」

「あー、あれは結界魔法の維持時間の訓練をしてるんだよ!明日には、消えるから気にしないで」

「また、変なことをしてるな?この前みたいにならなきゃいいが…」


 ギクッ

 何か、勘づいていらっしゃる!?


「あはははははは」

「まぁ、程々にな。昼間は俺が居ないんだから」



 ──翌朝──


 おはよう、みんな!

 今日も良い天気だ!

 実験日よりと言ってもいい!

 さあ、アカさん早く召喚しに行こう!!


《分かりましたから、そんなに焦らないで。しっかり朝食を食べて行きますよ》


(はーい)


 その後、高速で朝食を食べ終えた僕は、チルとゴブ助を連れて中庭に向かった。

 今回、新しい配下を召喚するということで、コブ助にも来てもらった。


 中庭に到着すると、昨日と変わらず、結界が張り巡っている。


(よしよし、結界にも異常はないみたいだね)


《そうですね。でも、本当に気をつけてくださいね》


(わかってるって!よしっ、それじゃあ召喚するか)


 僕は結界の近くに行き、結界中央部に召喚魔法陣が出るようにイメージする。


「検出、スライムのみ。範囲、制限なし。ランダム召喚」


 次の瞬間、結界内が風で吹き荒れ、中央にデカデカと魔法陣が現れた。


(へぇー、ランダム召喚ってこんな感じなんだ)


 更に魔法は進んでいき、魔法陣が眩い輝きを放ちながら高速で回転し始めた。


(え?ランダム召喚って本当にこんな感じなの?)


《ちょっと、なんですかこれ!こんなの私は知りませんよ?》


 僕らが不安に眺めていると回転している魔法陣が突然爆発した。


「え!?まさか、失敗?」


 結界内は煙でいっぱいだ。

 僕らが、警戒しながら見守る中、煙が晴れてくると段々シルエットが見えてきた。


「良かったぁ。成功してくれてて。それにしてもなんだろ?あのシルエット、スライムにしてはドロっとしてなくない?」


 この世界でのスライムとは、ドロドロしていて、粘り気のある液体をスライムと指す。


《そうですね。たしかに小さいですけどドロドロとはしてないですね...ってあれはスライム?》


 煙が完璧に無くなるとそこには、前世で言う水色のThe・スライムがいた。


 とりあえず、テイムを試みる。


「スライムさん。僕とお友達になってくださいな。テイム」


 次の瞬間、僕とスライムに1本の光が出来た。


(よし。魂の繋がりも確認できるね)


《マスター。テイム出来ましたか?》


(うん。無事にできたみたい。それにしても、あれって前世でよく知ってるスライムにそっくりなんだけど、アカさんはあのスライム知ってる?)


《いえ、それがさっきからアカシックレコードにアクセス申請を出しているんですけど、一向に許可が降りなくて...》


(そうなんだ。じゃあ、とりあえずステータスでも見てみるか)


 僕は、新しく配下になったスライムを意識した。

 〈魂の柱廊アニマ・ストラーダ〉により、僕は配下のステータスを見ることができるのだ。


 ――――――――――――――――――――


 名前:名無しノーネーム

 種族:スライム【根源種】

 称号:始まりを生みし者、超神級犯罪者、神域牢脱獄囚

 魔法:神・魔命粘生まめいねんせい魔法 (ユニーク)


【固有スキル】

  〈打撃無効〉

【スキル】

  〈形状変化Lv.10〉〈並列思考Lv.10〉〈魔力操作Lv.1〉


 ――――――――――――――――――――


 なんだこれ!?

 ユニーク魔法の部分もそうだが、称号のところが気になりすぎる。

 超神級犯罪者って何?

 それに、神域牢脱獄囚?

 このスライムは何をしでかしたんだ?


《マスター?どうでした?私にも共有してください》


(良いけど、驚くなよ!)


《驚きませんよ。早く見せて...ってええええええ!?》


 共有した瞬間、アカさんはミミを塞ぐほどの絶叫を上げた。

 まぁ、塞いだところで意味は無いのだが。


《ちょっ、ちょっとマスター。なんですかこれ?超神級犯罪者に、神域牢脱獄囚って神界の大犯罪者じゃないですか!》


(ん???アカさん?その超神級犯罪者とか、どういうことかいまいち理解出来てないんだけど...どいうこと?)


《つまりですね。超神級犯罪者とは、神に反逆した者たちのことを指します。それも、とてつもない力の持ち主達の事ですね。まさに神様たちですら手に負えないぐらい…。それから神域牢脱獄囚とは、神域にある神に逆らった者達専用の監獄から逃げ出したことを意味します》


 ・・・・・

 ・・・・・

 ・・・・・


(・・・もしかして、僕ヤバいやつを脱獄させちゃった感じ?)


 アカさんが深く頷いたようにかんじた。

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