第14話 束の間の休息

 僕たちが家に帰る途中、アカさんに言いたかった事を思い出した。


(ねぇ、明日はランダム召喚試してみない?)


《・・・マスター?それは危険だと前から言ってますよね?》


(いいじゃん。一回だけだよ?それにいい方法思いついたんだ!)


《また、マスターの悪いところが出てますよ。この前だって、結界の中に極限まで火魔法を溜める実験をして、裏山が丸ごと吹き飛ぶ所だったじゃないですか!》


(偉大なる発見には失敗は付き物なのだよ、アカ助手)


《誰が、助手ですか!だれが!!それで、どんな方法なんですか?》


 よしよし、アカさんが食いついた!

 今回は、前回より凄いぞ!


(うん、召喚魔法が神域ってことを活かして、ランダム召喚の検出指定をスライムだけにしようと思って、 どうかな?)


《なるほど…。・・・って、スライム舐めてるんですか?スライムの中には、1国を余裕で滅ぼすことの出来るスライムもいるんですよ?》


(そこは考えてるさ。ドーマン式結界を何重にも張り巡らせて、そのなかで召喚するんだ。もし、ヤバそうなやつだったら瞬時に送還させれば大丈夫だろ?)


《確かにそうですけど…分かりました。但し、本当にやばそうだったら、私が勝手に送還させますからね》


 よしっ!ヤッター!!

 これで、新しい仲間ができる!

 せっかく貰った〈魂の柱廊アニマ・ストラーダ〉も今まで全くと言っていいほど活躍出来てないからな。


(じゃあ、そういうことで。明日から3日ぐらいかけて、準備しよう。ちょうどお父さん達もいなくなるし、少しは自由にできそうだしね)


 僕が、アカさんを説得していると、いつの間にか裏門に着いた。

 裏門には、長年門番をやっている今年で86になるトムさんがいる。

 86歳なのに、まだまだ現役でそこらの騎士、複数人を相手に余裕で勝てるらしい。

 だたただ、化け物である。


「あ、坊ちゃん。今日も元気に邪獣退治ですかい?」

「うん、そうだよ!今日は何と48匹も殺したんだ!」


 僕が、トムさんに今日の記録を自慢げに語ると、トムさんはいぶかしげな表情になった。


「それは、凄いですね!でも、こんな浅瀬に一日で、そんな数集まりますかね?・・・まぁ、坊ちゃんが無事で何よりです」

「ありがとう!じゃあ、またね」


 僕は、トムさんに手を振り中に入っていった。

 家に近づくと、目の前から大型犬並にデカい猫が走ってきた。


「おぉーい、チルー。ただいまぁー」

「ニァオーーン」


 チルは、勢いよく僕に飛びついてきた。


「あはははは。よく待ってたね。よしよし」

「ニャーン」


 この大きな猫は、名前をチルと言って、僕が7歳の時にハロ様からもらった、1番最初の配下で神獣だ。


 ――――――――――――――――――――


 名前:チル

 種族:神獣(幼体)

 称号:神からの遣いつかい

 魔法:風魔法、雷魔法

【ユニークスキル】

 〈神獣解放〉

【スキル】

  〈爪術Lv.2〉〈空中機動Lv.4〉


 ――――――――――――――――――――



 しゅんちゃんが、まだまだ時間がかかるということで、それまでの護衛として、チルを貰った。

 今は幼体ということもあり、こんなステータスになっているが、生体になっていくにつれ、どんどん強いスキルだったり魔法を覚えていくらしい。


「ゴブ」


 僕が、チルと遊んでいると、執事服を着て、ちょっと長い銀髪を生やしているジャブリンが後ろから現れた。


「ただいま、ゴブ助もいたんだ。今日は、ゴブ助にお土産として、ジャボアを狩ってきたよ」

「ゴブゥゴブ」


 このジャブリン、群れからいじめられ、追い出された所を僕が見つけて、テイムしたのだ。

 なんでも、ジャブリン界では力が全てらしい。

 そのなかで、ゴブ助だけは、非力で常にいじめられていたらしい。

 僕が、見つけた時なんて、体中血だらけで原型を留めていなく、生きてるのが不思議なぐらいだった。


 そんなゴブ助だか、驚いた事にユニーク魔法を持っていた。


 ――――――――――――――――――――


 名前:名無しノーネーム

 種族:ゴブリン(邪)

 称号:夢幻を導きし者、突然変異

 魔法:幻想魔法 (ユニーク)、空間魔法(劣)

【スキル】

  〈執事Lv.2〉〈並列思考Lv.3〉〈魔力操作Lv.1〉


 ――――――――――――――――――――


 ゴブ助のユニーク魔法は、実物の幻影を生み出すことの出来るチート魔法だ。

 では、なぜゴブ助が執事服を来ているのかと言うと、実はゴブ助、ちょっとイケメンなのだ。


 銀髪、イケメン、執事服。

 最高だろう!

 最近では、ゴブ助の愚直で真面目な行動も相まってグラナータ屋敷内でファンクラブが出来たとか。





 そんなこんなで、僕たちは話しながら屋敷に入った。

 ゴブ助に空間魔法を教えたり、チルと遊んでいたら、夜になってしまった。

 今日の夜は、ちょっとしたパーティーなので、急いで食堂に向かう。



 僕達が食堂に入ると、みんなは来ていた。

 どうやら、僕が1番遅かったらしい。


「「にいたま、にいたま」」


 自分の席に向かおうとすると、僕を呼び止める天使が2人。

 4年前に産まれた、僕の弟と妹になる双子だ。

 弟の方はアルドーロ、妹の方はローラという。

 2人とも、真紅の髪色で可愛い。


 2人に対応しつつ、僕は自分の席に座った。


「じゃあ、レンも来たということで。 お父さんとお母さん、それからクロエにアルドとローラは1ヶ月ぐらい家を離れるからお別れ会だ!」


「いぇーい」

「にいたま、あっちの料理とってください」

「うん?分かったよ。レン、そっちの皿ちょっとこっちに押してくれない?」

「・・・」


 僕が、乗っただけで、皆フル無視だ。


「くぅぅ、みんなが無視する。レジーナぁー、子供たちが…」


 カオスだ。

 お父さんは、いじけてお母さんの方に行くし、兄弟は、無視してご飯を食べながら祝福の儀について話している。


「はいはい、みんな。お父さんの話を聞いて上げて。ほら、あなたも。シャキッとして」



 そんな感じで、いつもの家族風景に呆れながらも楽しみつつパーティーは終わった。

 明日から、家には僕とロイ兄しかいない。

 つまり、フリーダムだ!

 よぉおし、明日から色んな実験をするぞ!


 僕は明日から何をするか、ワクワクしながら眠りについた。

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