第8話 宮廷伯爵の嫉妬
私は、デニス・アンジュー。
スペランシアー王国で、宮廷伯爵として司法官を任されている。
今日は、我が息子エルトが祝福の儀を受ける、とても大事な日だ。
朝から色々動き回り、いざ行った祝福の儀の結果、エルトはユニークスキルを持っていた。
これには私も目が飛び出るほど驚いた。
ユニークスキルとは、数万人に一人持っていると言われる希少なスキルだ。
ユニークスキルを、持っているだけで優遇され、能力も折り紙付きだ。
つまりこれは私が出世するべきと、神からの啓示が来ているのかもしれない。
いや、そうに違いない!
そんな私は、今玉座の間にて、他の貴族らと共に、英雄達を待っている。
しかしながら、英雄達は王が入ってかれこれ十分も経つというのに一向に来ない。
何か、問題があったのかもしれない…
「どういうことなんだ?」
「流石に遅すぎないか?」
周りからもそんな声が聞こえ出した頃。
「
やっと、来たようだ。
入口から、ネオロエ様を筆頭にオニピローエ様、アーヘルライト様が入ってくる。
ん?オニピローエ様の後ろに白髪の子供がいるな…。
・・・はぁ。グラナータ家の子供はまた、純血ではなく、混血みたいだな。
それもよりによって、髪の色の九割が白髪とは…。
欠陥品だな。
だから私は結婚することに関して、あれほど反対したのだ。
高貴な血に、どこぞのエルフの血を混ぜるなど…。
私の意見も聞かずに強行突破するからこうなるのだ。
英雄達は、王の前に跪き、王との挨拶もそこそこに、王は今回集まってもらった経緯を話した。
なんと、魔道具開発局が魔力量を量り、更には魔法適性まで分かる魔道具を開発したらしい。
アリアン皇国との共同開発と言ってはいるが建前だろう。
実際は、局長やスペランシアー王国随一の魔道技師がほとんど作ったに違いない。
(ふむ。これは使えるな)
これは、私にとってもチャンスかもしれない。
エルトのユニークスキルは、〈魔導の導き書〉。
なんと、普通なら知りえない、沢山の魔法について書いてある魔法書が出せる。
しかも、魔法を覚えている覚えていないに関わらず、魔法書に書かれている魔法は詠唱なしに唱えることが出来るのだとか。
こんなユニークスキルを持っているということは、魔力量もすごいはず。
ここは、王にアピールをして私が出世する足掛かりにするしかない。
それから、局長が、魔道具を持って現れた。
大きな台座に大きな布がかかってある。
「それでは、皆さんご覧下さい。我等、魔道具開発局とアリアン皇国の素晴らしき技術者の方々との合作。魔道具名は、
局長が布を取った瞬間、その場にいた全員が驚いた。
局長が言っていた魔道具とは、向こうの方まではっきり見える程に透明で大きな水晶玉だったのだ。
「おぉーー、あれが!!」
「あんなに透明なものは見たことないぞ!」
「なんと素晴らしい!!」
これは予想を遥かに超える程に素晴らしい…。
芸術品にも勝る素晴らしい魔道具だ。
それから、局長は魔道具の使い方を説明した。
使い方は簡単で、魔道具の前に立ち、水晶に手を添えるだけでいいらしい。
試しに、魔法師団小隊長が現れ、魔道具を使った。
小隊長レベルだと、ぽわっと光るレベルだ。
それと魔法適性は、光る白で分かるらしい。
小隊長の光は、茶色に光ったので、土魔法に適性があるということらしい。
「なるほど。素晴らしい魔道具だ。なにか褒美をやろう。後で聞くので考えておくといい」
「御意に」
「では、これより未来の英雄達の力を見てみようじゃないか」
よしっ、きた!!
「王よ、突然すみません」
「おぉ、そなたはアンジュー卿。どうしたのだ?」
私は、前に出ると宮廷作法の通りに膝をおり、手を胸に当て頭を下げる。
「はい。私のお願いをひとつ聞いて欲しく…」
「ふむ…」
王は、少し考える素振りをする。
「まぁ、良いだろう。して、そのお願いとは、一体何なのだ?」
「お聞きくださるよう、配慮頂き誠、ありがとうございます!」
(やった!通ったぞ!やはり、これは私に流れが来ている!)
「
私は、膝をつきながら、はっきりと言った。
「な、なんとユニークスキルが…」
「アンジュー伯の所にユニークスキル持ちだと!?」
「なんとそれはめでたい!!」
周りの貴族は、私を次々に褒め称える。
そうだろう、そうだろう。
もっと私をほめるがいい。
いずれ、私は司法長官になる男なのだからな。
「ふむ、それは素晴らしい。では、最初はアンジュー卿のご子息に魔道具を使ってもらおう」
「提案を受け入れていただき、ありがたき幸せ。エルト、前に出てきなさい」
私の呼び出しと共に、エルトは、緊張した面持ちで、魔道具の前に立った。
「緊急ではあるが、ユニークスキルを持っていたというアンジュー卿のご子息から、魔道具を使ってもらう」
エルトは、王の許可を貰うと、魔道具に手を添えた。
次の瞬間、先程の小隊長の時よりも少し輝きが強く、赤と緑に光った。
「おぉー、凄い!!2属性に適性があるぞ」
「魔力量も、4歳にして小隊長にならんでいるとは…」
「4歳にしてその魔力量。更には
「はっ!お褒めに預かり光栄です」
ふっふっふっ。
流石は私の息子。
素晴らしい!!
これで、私の地位も上がるチャンスが舞い降りて来るに違いない。
しばらく、私は将来の司法長官になった自分を想像する。
すると、急に目の前が茶色と金色の光でいっぱいになった。
な、なんだ!?
魔道具の方を見てみると、ネオロエ様の息子であるヴァリエンテ様が魔道具を使っていた。
「こ、これは!?」
「流石は
「なんだぁ、金色の光!?」
「局長、金色は、なんの魔法属性を表しているのだ?」
「・・・すみません。今まで、金色の光というものは観測できていません。ただ…、推測ですが、もしかしたらユニーク魔法を表しているのではないかと考えます」
「ユニーク魔法!?ネオロエよ。そなた息子はユニーク魔法を持っておるのか?」
「えぇ、持っております」
「なんと、ユニーク魔法だと!?」
「魔力量だって小隊長レベルを軽く超えておるぞ?」
「局長、この魔力量はどのレベルを表しておるのだ」
「はい、以前魔法師団の大隊長殿に試してもらった時にこのような輝きが出ました」
「では、ユニーク魔法を持ちながら、魔力量は大隊長レベルだと言うことか!?素晴らしいではないか!!」
ク、クソぉぉぉ!!!
これじゃあ、私が前座みたいじゃないか!!
次にアーヘルライト様の息子であるヴィザーム様も魔道具を使うと、先程と同じ輝きをした。
更に、光った色が金、赤、青、緑、茶、黒であった。
「
な、な、な、なんだと!?
私の実績が更に霞むじゃないか…!!!
クソォ、このままでは出世できるチャンスが潰されてしまう。
忌々しい、
英雄だか、なんだか知らんが、平民出の分際で、、、、!!
だが、だが、次は大丈夫だ…。
なんて言ったって、白髪で混血の欠陥品だ。
せいぜい、しょぼい結果をだして少しでも、私の評価をあげてもらうとしよう。
「次は・・・ああ、グラナータ家か」
「次は、期待できなそうだな」
周りの貴族も、白髪だということもあり、残念な雰囲気が漂い出した。
白髪の子供が魔道具の前に立ち手を添えたその瞬間。
目が開けれないほどの、赤と金の輝きが魔道具から発した。
次の瞬間。
ピキッ、ピキピキ、パリン
何か割れたような音が辺りに鳴り響き、目を覆うほどの輝きも無くなった。
「なんだったんだ?全く…、!?!?」
私が目を開けると、そこには無惨に割れた魔道具の姿があった。
「な、何だこれは!?局長、これは一体?」
「私にも何が何だか…。王よ、少し時間を貰ってもよろしいですか?」
「もちろんだとも。よろしく頼む」
なんだ、なんだ?
魔道具が壊れているではないか。
あの欠陥品、まさか……
我ら、王国の英知の結晶を壊してしまうとは…。
それから数分、局長は魔法陣を出し、慌ただしく魔道具をいじった。
「王よ、お待たせしました。なぜ割れたかわかりました」
「うむ。それで、どうじゃった?」
「はい。恐らくですが、レン様の魔力量が魔道具の判定の許容を超えたため、暴走して割れたのだと思います」
「ほお。それは真か!! 」
「はい。それにここからは推測になってしまうのですが、魔法師団大隊長に、協力してもらった時にも割れなかったのですから、レン様の魔力量はそれ以上。魔法師団長または
はあああああああああ!?
それなわけあるか、白髪だぞ!!
白髪が、ユニーク魔法を持っているだと!?
更には、魔力量が師団長クラス!?
そんな、そんなわけあるものかぁ!!
そんなの、ただの魔道具の故障だろ!!
「それは凄い!!これは将来が楽しみだな」
魔道具の故障など、一切疑わず、王は、これみよがしに喜び、レンを褒めた。
だが、周りの貴族は素直に喜べはしない。
なぜなら、レンは9割以上白髪なのだ。
今まで、生まれつき白髪があった者は軒並み、無属性しか使えず、無能で欠陥品と蔑まれてきた。
まぁ、実際は、神の力の使い方が分からず、更に力が強すぎて、普通の魔法を使おうとしたら制御出来ずに、飽和爆発を起こしてしまうから。
更には、ほとんどが平民出という事もあり十分な教育が施されていなかっただけなのだが、現代の者たちは何一つ知らない…
「だけど、白髪だよな?本当か?」
「白髪がそんなに、すごいわけないだろう?」
「局長は、魔道具の故障を隠したいだけなのだろうか…」
周りの貴族たちが
デニス・アンジューである。
息子のエルトがいい結果を出したにも関わらず、次から次に覆す様な判定結果が続きイライラしていた所に、白髪で欠陥品で見下していた子供が、エルトよりも素晴らしいと言う結果が出てしまった。
更に、王がその事実を疑わずに信じ、褒めるという追い打ちまで来た。
・・・もう、我慢の限界である。
「王よ!それは間違いではないんですか?局長も、局長です。もう少しちゃんと調べてください。白髪である者が、こんな判定になるわけないのは皆分かりきっていることでしょう?」
私は、失礼ながら許可なく王に進言した。
今いる貴族の中で、王に進言できるのは、宮廷伯爵である私以外存在しないだろう…。
「アンジュー卿、そうは言うが局長が言うなら事実であろう。アンジュー卿も見たじゃろう?目を開けることの出来ぬ程の金色と赤の光を」
「王よ、あれは偽りであります。王も分かっているはずです。白髪を持つ者がそんな凄い訳がないと!それに──」
「アンジュー卿。その辺にしておけ。事実は事実じゃ。周りの奴らもあまり騒ぎ立てるな」
そう言うと、王は私を見ずレンという白髪のガキを見た。
「すまんな。レンよ。それにしても、その魔力量にユニーク魔法とはすごいじゃないか」
「王よ!!だからこれはそこの白髪が起こした、事故なんです。周りの皆様は気づいてるのにどうして気づかないんですかっ!!
ドゴ
ガシャーーーン
「あんたね、さっきから私のレンに無能無能ってうるさいのよ。殺すわよ?」
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