第7話 四龍英雄筆頭現る…!!

 僕達は、何故か突然始まった本気の喧嘩殺し合いを見なければならなくなった。

 完全に被害者である。

 もう1人の被害者であるヴィザーム君も死んだ目をして二人を見ている。


「ヴィザーム君、僕達は将来どんな事があってもあんな事しないようにしようね」

「そうだな。俺もあんな事、しないようにするわ」


 悲しくも、4歳児に反面教師にされる大人達である。


「まだなんか言い合ってるけど、マジではじめるのかな?」

「どうだろう?流石に大人としてわかってんだろうけど・・・」


 両者とも言い合いに夢中で周りの事が見えなくなってきており、段々と大きすぎる魔力が空間を伝ってミシミシと言わしている。

 僕とヴィザーム君が、不安に思っていると僕たちの後ろから、1人の大柄な男が現れた


「ちょっと失礼。通してもらうよ」


 !?

 一体いつからそこに?


 《すみません、マスター。認識出来ませんでした。魔力が一切感じられません》


 遅れて、先程の王女の護衛だった子供も大柄な男の後ろに着いていた。


「ヴァリ。君もここにいなさい。せっかくだから、3人仲良くなってくれると嬉しいな。お父さんは、あのバカ二人を止めてくるから」


 そう言うと、あの危険地帯に歩いていった。

 2人は、言い合いに夢中なのか、男の魔力隠蔽術が凄いのか、全く気づかない。


「えっとー、とりあえず自己紹介でもする?」

「そうっすね。あとから来たのでオイラから。オイラは、ヴァリエンテ・シュッツ・エスコティエって言うっす。みんなからは、ヴァリと呼ばれてるんでそう呼んでくれると嬉しいっす」


 そう言ったのは、王女の護衛をしていた子供だ。

 ということは、今 2人に向かっている人が四龍英雄(テトラヘロス)筆頭、ネオロエ・シュッツ・エスコティエさんか。

 髪は茶髪で刈り上げ。体は父より大きく、歴戦の猛者感漂う風貌ふうぼうだ。


「初めましてヴァリ。僕はレン・ドル・グラナータだよ。同じ四龍英雄(テトラヘロス)の子供として、仲良くしていこう」


「全くその通りだな。よろしく、ヴァリ。俺はヴィザーム・ハン・ヴァッサーだ」


 僕達は、自己紹介をそこそこに自分たちのステータスについての話で盛り上がった。

 なんと、ここにいる3人ともユニーク魔法を持っている奇跡が起こっていた。


 ドゴォォォォォン


  キーーーーーン


 僕たちが話している間、向こうも喧嘩が絶賛進行形で、進められているみたいだ。

 お父さんなんて、何処から出したかも分からない、炎で出来た身の丈程ある大剣を使って攻撃してる始末である。


 お父さんとヴィザーム君のお母さんが打ち合っていると、突然二人の間に土の壁が盛り上がった。

 2人とも一瞬でその場から離れたのだが、離れた先に突然現れた黄金色のゴーレムによって、ハグする形で捕獲されてしまった。


「んな!?いつの間に」

「この魔法は…、先輩だな?」


 2人が大人しく捕まっていると、ネオロエさんが2人の前に現れた。


「やぁ、久しぶり。2人とも毎回、会う度に殴りあってない?」

「いや、だって。先輩、このクソババアがレジーナの悪口を言うんですよ!!」

「はっ!何がレジーナ、レジーナだ。私は、間違ったことは言ってないぞボケが」


「はぁ〜、まったく。アーヘル、何回も言ってるだろう。人の家族に対して口出しするなと」


 また、はじまった口喧嘩にネオロエさんは何回も見たことあるような呆れた顔をしながら言った。


「君たちは、いつまで学生気分なんだい?もう何十年も前だろ。このまま君たちが王城を破壊するのだとしたら私が相手しないといけないんだけど・・・・いいのかな?」


 ネオロエさんは、ニッコリと笑って二人を見た。

 次の瞬間


「「すみませんでした!!」」


 あの二人が勢いよく謝ったのだ。

 なるほど…ネオロエさんは怖いっと。覚えとこ。


「それに、君たちはあの頃とは違って、子供がいるんだ。そんな姿見せたらガッカリするだろうなぁー」


 チラッ。

 ネオロエさんは僕たちを見ながら言った。

 予想以上にその言葉が聞いたのか、それ以降2人は大人しくなり、僕たち一行は玉座の間に向かった。





 少しのトラブルはあったが、ネオロエさんのおかげもあって、ようやく玉座の間の扉まで来た。


「いいか、レン。入ったあと、玉座の前まで行って膝を着く。その後は──」

「もう、大丈夫だから。何回も聞いたから、完璧だって」


 本当にお父さんは、心配性である。

 こんなのアカ様にかかれば楽勝だっての。


 《マスター?それって私が完璧なだけでマスターは完璧じゃない気が……》


(うるさい。いいんだよ。アカさんは僕の能力だから、僕が完璧なの!)


 僕とアカさんが心の中で言い合っていると、真面目な顔をしたお父さんが話しかけてきた。


「レン。行く前に少し…」

「ん?」

「入って何か言われたとしても無視しろ。お前は何があろうと俺たちの息子だからな!」


 そう言って、いきなり僕の髪をぐしゃぐしゃしだした。


 ???

 急に何を言い出すんだ?

 ていうか、せっかくセットしたのに台無しだって!


「ちょっとやめてよ!それに、僕はお父さんの息子だよ?」

「まぁ、杞憂だったらいいんだがな…」


「それでは四龍英雄(テトラヘロス)の方々がお入りになります」


 空気が重くなり出したところ、中から大きな声が聞こえた。

 やっと、僕たちが入る出番が来たようだ。

 門番の人が大きな扉を開ける。


「では、私が先に行くから、その後に続いてくれ」


 そう言って、ネオロエさんは先陣を切って行った。

 ネオロエさんに続くように、グラナータ家、ヴァッサー家が順番に入っていく。


 中に入ると、豪華絢爛(ごうかけんらん)な内装に目を奪われた。

 目の前にいる沢山の貴族なんか目に入らず、王の前まで来てしまった。

 途中、ねえねがいたので軽く手を振ったりもしたが、まるで他の人が目に入らなかった。


 王の隣には、さっき一緒に祝福の儀を受けた王女様と、王女様より年上の2人の男性がいた、

 僕達は、膝をつき王の言葉を待った。


「面をあげよ。オニピローエとアーヘルライトは、久しぶりじゃな!」


「「お久しぶりで御座います」」


「さて、挨拶もそこそこに。今回みなをここに集めたのは他でもない。我が魔道具開発局が魔力量と魔法適性が分かる魔道具をアリアン皇国の者らとの共同開発の末、見事完成した。その偉業を褒め称えるためである!!」


「おぉ、それはすごい」

「な、なんと!?」

「素晴らしい!!」


「そこでじゃ、ここにはこの国の未来を支えるであろう子供たちがおる。せっかくじゃから、デモンストレーションの意味も含め彼らの力を見たいと思っておるのじゃが、どうだろう?」

「御意。して、その魔道具とはどこにあるのですか?」


 ネオロエさんが、僕たちの代表として話をしてくれるみたいだ。


「ちょっと待っておれ。おい、局長を呼んで参れ」


 近くの衛兵が、扉を出てから数分、大きな物音と共に布が被った台車と髭が立派なおじいちゃんが現れた。


「よく来てくれた。それで、局長。皆にその魔道具を紹介して欲しいのだが」

「ふぉふぉふぉ。了解しました、王よ」


 そう言うと局長は、台車の前に立ち布を握った。


「それでは、皆さんご覧下さい。我等、魔道具開発局とアリアン皇国の素晴らしき技術者の方々の努力の結晶。魔道具名は、魔道判明機マジック・クリスタルです」


 その瞬間、局長は勢いよく布を取った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る