第2話 邪神の呪い

 目を開けると、真っ暗な暗闇の中に神々しく輝く2つの球体があった。

 隣を見ると、びっくりした顔をしたしゅんちゃんが居て、僕と球体と視線を交互に動かしている。

 この感じ…、僕は前に体験したことがある。


「はじめまして、神様」


 そう言って、僕がお辞儀をすると、しゅんちゃんは、大袈裟にこっちを見てきて


「はぁっ!? 大将、今神様って言いました?」

「うん。神様には何回か会ったことあるからね。雰囲気で分かるんだよ」


 すると、白く輝く球体の表面が波打って


「流石、我が世界の最高戦力。その通り、わしこそこの第3世界を統べる主神である」


 その瞬間、目も開けられないような強烈な光が球体から溢れてきた。


「うわぁっ、眩しっ!!」


 しばらく経って目を開けてみると、目の前には「私たちが神様です!」とでも言わんばかりのオーラを纏った1人の老人と苦労人感が出てるイケおじが1人いた。

 僕達が、神様から発せられるオーラに呑まれていると、イケおじの神様が突然、土下座をし始めた。


「この度は、我が世界の不始末に巻き込んでしまい大変申し訳ありませんでした」

「わぁーお、神様土下座だ」


 僕達は、あまりの突然過ぎる出来事に対応することが出来ずしばらく固まってしまった。




「ねぇねぇ、しゅんちゃん。あの神様が、僕たちに土下座してるよ」

「――えっ、えっ!? なんで大将そんな冷静なんすか」


 数分経ってようやく飲み込めた僕は、まだ惚けている鬼に声を掛けた。

 それにしても、神様の土下座とは…、滅多めったに見ることの出来ない貴重な光景を見てしまった。

 それに、土下座してない方の神様は、土下座を止めるということなど全くせず、満足そうにさっきからずっと頷いているだけだ。


「あの~、すいません。僕達、いまいち状況が理解できてないのですが、なんで僕達は、神様に土下座されてるんでしょうか」


 至極真っ当な疑問をぶつけてみると、後ろで頷いていた神様の方から返事が帰ってきた。


「うむ、簡単に言うとじゃな。そこの神の不始末によって、君たちが今の状況にあるからじゃな」


 今の状況?

 僕達は今、神域みたく周りは何も無い所にいる。


「今の状況ってどういうことですか? 僕達、確か転移魔法陣っぽいのに乗ってきたと思うんですけど…」

「その説明は、私からさせて下さい」


 僕と主神が話していると、今まで空気と化していたイケおじが話し出した。


「初めに私の自己紹介を。私は第86世界で主神をしております。この度は、私達の不始末に巻き込んでしまい申し訳ありませんでした」


 第86世界の主神様は立ち上がり直角の綺麗な礼をしながら言った。


「えぇっと…、謝罪は受け取りました。それで、僕はなんとお呼びしたら良いんでしょう?ほらっ、ここには2人の神様がいるので…、そのぉ…」

「確かに。私たちには名前という概念がないので、忘れてました。私の事はお好きにお呼びください」


 新情報だ。

 そもそも、神様たちの世界だと、名前が無いらしい。


「うぅーん、じゃあ、ハロ様って呼びますね!ほらっ、86だから!!」

「おぉぉ、いいなそれ。わしもハロって呼ぶことにしよう!」


 何故か、我らが主神様ももノリノリで乗っかってきた。


「それに、1つやり残したことはありますけど、今はワクワクが勝ってるので、気にしてません」

「うわぁ、さすが大将ですね。どんな状況でも楽しむことができる。やっぱり頭のネジぶっ飛んでますよね…」

「酷いじゃないか、しゅんちゃん!こんなハチャメチャな展開ワクワクしない訳なくない??こんなにワクワクするのは、このピアス貰った時以来なんだけどなぁ~」


 僕は、ピアスを払いながら言った。

 このピアスは特別で、なんとうちの神さんから直接授かった物なのだ。

 形は、陰と陽のマークがあり、そこから下に神さんの髪の毛で編んだ糸が流れている。



「ありがとうございます。そう言って頂けると少しは楽になります」

「いえいえ。それで、僕たちの状況を説明してくれるんでしたっけ?」

「はい。今回、このような自体が起こったのは私たちが、ある1柱の神を逃してしまったからです」


 そう言って、ハロ様は話をしてくれた。

 ある日、第4世界で禁忌を犯した神の一柱が、第86世界に逃げてきたという。

 その神は、降りてくるやいなや、第86世界を侵略し始めたそうだ。

 逃げてきたとはいえ、腐っても元上位世界の神。

 第86世界の神達も応戦して必死の戦いの末、何とか侵略してきた神を封印することが出来たらしい。


 しかし、最近その封印が、中途半端に破られてしまい神の意識だけが外に出てしまったというのだ。

 そこで、封印されていた神は力をつけるため比較的、生物が弱い星を選んで、僕が住む地球に侵略を開始した。

 しかし、いくら刺客を送っても侵略が進まないので業を燃やした神は、その原因を調べてみる。

 すると、ある1人の男の手によって全ての刺客が殺されていることがわかった。


 はいっ、一人の男というのは僕の事ですね!!


 ここからは簡単。

 僕の存在が邪魔になった邪神は、僕を殺そうと計画を立てて僕を罠に誘導した。

 その罠にまんまと嵌ってしまった僕は、今の状況に至るという訳だ。


「あぁ、なるほど。最近やけに異界からの贈り物バケモノが、多いなぁと思ってたらそういうことだったんですね」

「はい、大変申し訳ありません」

「ああ、全然大丈夫なんで、顔を上げてください。――それで、僕達はこれからどうなるんですか?」


 すると、今まで後ろで黙っていた主神が口を開いた。


「うむ、そこからはワシが。実はその禁忌を犯した神というのは、わしの後輩での。生意気にもわしの管轄内の者を殺そうとしておったからな。罰を与えようと思うのじゃ」

「な、なるほど…」

「それでじゃ。本格的な罰は後からするとして、とりあえずあいつが今、嫌がることをしようと思っての」

「なるほど…」

「それがまさにお主がずっと生き続けることじゃ。お主が生き続ける限り、お主の配下が世界を守るじゃろ?」

「まぁ、そうですね」


 僕が、しゅんちゃんだけと行った理由が正にこれだ。

 僕がいた世界は、僕が契約してる限り、式神たちが世界を守る。

 そのために、他の皆は置いてきたのだ。


「なんなら、あいつを直接ぶん殴りに行ってもいいぞ?わしらじゃと、罰を与えるにも必要な手続きが多くてなぁ。そのために、わしはお主にチートスキルを渡しに来た。しかしな、ちと厄介な事が起こっての…」


 僕と主神様が話をしていると、ハロ様が気まずそうに目を背けた。


「あのぉ~、ハロ様どうしたんですか?」

「ハロよ。覚悟を決めよ。」

「分かっています。どの道、転生前に話さなければならないこと」


 さっきまでの和やかな空気から一転して、急に2人から、どんよりとした不穏な空気が流れてきた。



 ・・・ん?転生?



「では、我が世界の住民である蓮よ。心して聞くのじゃ」

「ははぁー、なんなりと。──それで、なんなんですか?」


「簡潔に言うと、お主には邪神から無茶苦茶な呪いが付与されておる。このまま行けば転生して1年も待たずして死んでしまうのじゃ」


「・・・はぁ?」

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