第19話
「……は?」
僕がゆっくりと開いていく扉の先に待ち構えていた、羊の頭蓋のような頭を持った異形の怪物に呆然としていると、その脇から一見すると只の人間のようにしか見えない様なフードを被った男が出てくる。
『ようこそ、出来損ないの失敗作とおまけの皆様……。おや? 微弱なせいで気が付きませんでしたが、まさかもう一匹失敗作が居るとは。いやはや、ツイてますねぇ』
「貴様は誰だ!?」
『私ですか? 私の名前はカプリコルヌス。一応貴方達の言い方に合わせると山羊座の邪神。でしょうか、とても短い時間になりますがよろしく』
カプリコヌスは仰々しくお辞儀しながら、槍を構えて警戒する凛子さんの問いに答えた。
「嘘! 邪神は全部勇者様が倒した筈ですッ!」
『ええ、そうですよ。忌々しい勇者達の子孫、セイントヴァレー王国のお姫様。確かに私は一応一度勇者に殺されましたとも。ですが、私はこれといった戦闘力がない代わりに不死身でしてねぇ。一度殺されて、息を吹き返した後隠れて機会を伺っていたんですよ』
そう、山羊座の邪神カプリコヌス。コイツは不死身であり、『サイン・ハート』と言うゲームのラスボスだ。コイツはストーリー中盤から出てくるようになるが素の戦闘力は皆無で、裏で様々な陰謀を企てたり大抵強力なモンスターや邪神を嗾けてくる。だがストーリーのラストで、主人公や他の邪神から力を取り込み合体。特撮映画に出てくるような怪物となり、戦う事になる。そう、こんな再序盤では本来影も形すらも掴めてないような敵なのだが……。
「目的はなんだ……」
『目的……? ああ。ここに居る羊座を司るモノの魂の欠片から作られた、ガワだけの不完全な偽物。今は仮にエイリアスと呼んでいますが、失敗作とはいえコレと同じくの魂の欠片を持つ者を取り込む事でコレを完全に近づけようと思いまして』
そう言って羊の頭蓋のような頭を持った異形の怪物……羊座の邪神エイリアスの肩を叩きながらカプリコヌスは気安くそう言った。
エイリアスが偽物……? 確かに何度倒されてもも出てくるし、教団員共からの扱いも使い捨てって感じで雑だったり、星座の順番で強さの序列が決まっていると公式から名言されていて、羊座なのに邪神の中で一番弱くて逆じゃないかと突っ込まれてはいたけど……。ココに来て原作や公式からも明かされていなかった新情報なんて。
『さて、もう喋るのにも飽きてきました。さっさと始めましょう』
カプリコヌスに指示されて、いよいよエイリアスが動き出す。そんな中、僕は焦っていた。
だ、ダメだ。勝てるわけがない……! エイリアスのレベルは60。一方の僕らは一番高くて凛子さんと石塚副会長のレベル25。戦いにすらならない! ましてや僕達は……。
「くッ……来るぞ!!」
「やるしかないのか!?」
逃げ道はない! やるしかない! やるしかないんだ!!
「クソぉ!!」
僕は力を解き放ち、凛子さんと主人公の二人と共に前に出た。
『ハハハ、それでは無様に死ぬ姿を見せて貰いましょうか!! エイリアス、失敗作どもは取り込みそれ以外は全員殺しなさい!』
カプリコヌスの声が聞こえた瞬間。エイリアスが猛烈な勢いで飛び掛かってきて、とても長く鋭い異形の爪を僕に振り下ろす。
「ッ!」
一撃目を防ぎ反撃したが、爪で防がれてしまう。その直後、凛子さんと主人公がエイリアス目掛けて攻撃を仕掛けようとした瞬間。
「何ッ!?」
「なッ!?」
エイリアスは何かのフィールドのようなモノを発生させて、僕達は弾き飛ばされ吹き飛んだ。
「会長!」
「この!! ファイアーボール!」
「喰らえッ!」
僕達が態勢を崩されて危うくなったその直後、石塚副会長と愛華の魔法や遊矢の放った爆発性の弓矢が着弾して爆炎でエイリアスが見えなくなる。
「やった!!」
「よしッ!」
「まだだッ!」
喜ぶ愛華と遊矢を石塚副会長が抑えた直後、透明な何かが爆炎を切り裂き三人を吹き飛ばした。
「噓ッ!? 皆さん!?」
「セイントヴァレーさん! 三人の回復を!」
「は、はい!」
そして、無傷のエイリアスが爆炎から現れる。
「爪による斬撃を飛ばした……のか? マズいな、余りにも勝ち目が……」
「このッ! よくも愛華を!」
「待つんだ、神田君!」
凛子さんは冷静に分析しながらも機会を伺っていたが、愛華がやられたところを見てキレたらしい主人公がエイリアスに飛びかかる。
「なんだ? 神田君の目もスエヒロ君と同じ様に赤く……それになんだあの動きは、まるで獣のようだがとても今日ダンジョンに入ったばかりとは思えない。まさか、スエヒロ君と同じレアスキル持ちなのか?」
「覚醒、したのか……」
獅子座の邪神レオの力が覚醒したらしい。主人公はまるで獣のように素早く、かつ人間としての動きを忘れたようがむしゃらに攻撃を繰り出す。
「行ける!」
そう思ったその時、主人公がエイリアスに首を掴まれる。
「マズいッ!」
そしてエイリアスは主人公の首を掴んだまま地面に叩きつけると、それ以降主人公は動かなくなった。
「噓……だろ……」
その後、遂に主人公を片付終えてエイリアスが残ったこちらに向かって来て、僕は動きについていけず咄嗟にロングソードに魔力を纏わせて防いだ。
「しまっ……!」
なんとか防いだものの、ロングソードが弾き飛ばされる。そのまま追撃されるかと思ったその時、凛子さんが割り込んで来て僕を突き飛ばし槍で攻撃を受け止めようと……。
「……え?」
「ガハッ!?」
「凛子さん!?」
エイリアスの攻撃を受け止めた筈の槍がバラバラになり、凛子さん自身も血を吹き出して腹に手を当てながら数歩後ろによろめいた後倒れる。
それを見て凛子さんに駆け寄ろうとした瞬間、エイリアスの攻撃を受けて僕は宙を舞って壁に叩きつけられた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は全部書き切ると文字数が五千以上になりかねないんでここで切りました、それと遅れて申し訳ない……。まほよコラボの為に使える時間全部石溜めまくってました、ちなみに何故か呼符4枚目に来たので別段溜めなくって良かった件。ナニモンナンデスさんと邪ンヌが大爆死したぶり返しかね……。
なんで6日間も投稿して無かったのにPVも星もブクマ爆増してるの……? いつも応援してくださってる方々、ありがとうございます! 後ホントに遅くなって申し訳ない……! 次の話は今日明日中に投稿するんで!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます