箱と中

御槍 翠葉

目の前に箱がある。

ここはどこだ?

なぜこんなところにいるんだ。確か何かから逃げていて早くしないと大変なことになるような気がしたんだが。

四方が壁に囲まれてまるで目の前の小さな箱の中に入っているような、そんなことより早く出なければ壁に近づき触る硬い。開きそうにない。だがここから出なければいけないそんな気がしてならない。少し叩いてみたが、なんだこれ?振動が反響しているようなそんな感覚がある。壁の奥にも空間があるのだろうかもしかしたらそこにも同じように人がいるかもしれない。

「誰かいないのか?俺はここから出なきゃ行けないんだ。助けてくれ」

そう呼びかける。何も帰ってこない、自分の声が反響して自分の耳に入り込んでくる。

なんだか不思議な感覚だ。もしかしたらまだ起き上がっていないのかもしれない。

ドンッドンッ

壁を強く叩き呼び掛ける。

「おい、誰かいないのか?いるのなら出る方法を教えてくれ」

何も返事は無い。

こうなったら目の前の小さい箱がここを出る方法があることを祈り、近づき触ってみる。

重く、質量のある小さな箱、この重さは俺はいつも感じている重さ

「携帯電話?」

そう、携帯電話と同じ重さがある。

何か押せる部分がないか探してみるが何も見つかない。本当にただの箱のようだ。

どうしたいいのか強く叩いても壊れそうにないそれを俺は壁に向けて投げつける。

ガンガンッ

この音は、もしかしたら壁を壊せるかもしれない。

それから俺は箱を壁に投げつけたり、箱で壁を叩いたりしてどうにか壁を壊そうとした。

どれくらいそうしていたのか壁紙少しえぐれはじめ少しだけ歓喜した。

続ければ出れる。

早く出なきゃ



「彼はもう無理かも知れません。」

「どうしてですか、お願いします夫を、夫を助けてください」

「残念ですが、もう終わらせてあげてください」

「...そう...ですね」

「理解してもらえて良かったです。」

「これで実験を終わりにした方がいいですものね」

「えぇ」

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箱と中 御槍 翠葉 @goyari_suiyou

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