18.友達


ーーリーブが傭兵達との戦闘をしている最中、商会の最上階、その一室である応接室では……


「小僧、貴様はもう人質としての価値を持たん。」


「へっ、最初からだろ?」


 レントは、現在何人もの傭兵達に剣を向けられていた。

 その中で一際存在感を放つギョロ目の傭兵。


「抜け目のないガキだ。本当にこんな場所に来ていたとはな。」


「アンタだって、なかなかのやり手じゃん。俺の計画余裕で見抜いてよ。アンタいなかった、そこのおっさん今頃終わってた。」


 レントは笑みを浮かべ、舐めたような目で、商会の会長を見やる。


「なっなんだとこのガキぃっ!!」


 激昂する会長の横で、対象的にギョロ目の傭兵は静かだ。

 なぜか、レントを値踏みするような視線で見ていて、とても薄気味悪く感じる。


「ふむ。貴様はまだガキだが……成長すればとんでもない化け物になるかもしれん。殺すのは惜しいが……ここで殺さなければ脅威なもなりうる。」


「はぇ?」


 いきなりの、ギョロ目の傭兵の過大評価に、一瞬レントは間抜けな声がでてしまった。

 てっきりすぐに首を狙ってくると思っていたが……


 《存外そうでもないのか……なら、なんとか交渉すれば……。》


 「いや、やはりダメだ。貴様のその目……人を操ろうとている時の目だ。脅威として、ここで殺す。」


 なぜかはわからないが、レントが交渉を切り出す前に、交渉が決裂している。

 先程のやりとり……というよりも、ギョロ目の傭兵の考えがなかなか読み取れずに、レントは困惑していた。


 よくわからないが、結局レントの目の前の者達が皆レントの命を狙っているというのには変わりない。

 そのため、、


「殺せれば……の話だけどな。」


 レントはそう言ってナイフを取り出した。


 《傭兵の数は……27人。じゃあ、リーブを釣りに行ったのは5人ってことか。》


 レントは先程からずっと、傭兵の数を数えており、今ここにいる傭兵の数は、ギョロ目の傭兵含め27人。首を締め上げた見張りが全部で32人と言っていたことから、リーブを待ち構える傭兵達は5人と推測する。


 《ま、アイツが俺なんかのために来るわけねぇからな、来ないやつわざわざ待ち構えて、ご苦労なこった。》


 レントはナイフをギョロ目の男へ向け、昨夜のように斬りかかった。

 それをギョロ目の傭兵は、剣も使わず小型のナイフで受け止める。


「力の入れ方も、剣の太刀筋も、動きも、何から何まで素人だ。いくら頭が切れるからと言って、戦闘は向かないようだな。」


 ギョロ目の傭兵が言う通り、レントは戦闘はアニマを使わなければからっきしであり、それもバレていた。


 レントはナイフを下げ、後ろへゆっくりと退がり、ポケットに手を突っ込むと、、


「まぁ、合ってる。アンタの言う通りだよ。俺は戦いはからっきしでさぁ……だから、その頭で戦う。」


 レントはそう言って、ポケットから無色の魔石を取り出す。


「ーーっ!?」


 急いでギョロ目の傭兵がレントを始末しようと、剣を向けるが、間に合わず、レントはナイフで無色の魔石に傷をつけた。

 ひびが入り、一気に強い光を放ち、、


「んじゃ諸君、さらばっ!」


 レントはそう言って、強い光を放つ無色の魔石を傭兵に投げる。


 《止まれっ!》


 魔石が爆発する寸前、レントはアニマを発動させ、世界の時を止めた。


 止まった間抜け面の会長の首根っこを掴み、レントは応接室の窓を突き破って、最上階から外に飛び降りた。

 偶然見つけたひと目につかなそうな建物の間に入り込んで、アニマを解除。


 その間にかかった時間は1秒と0.4秒である。


 アニマが解除されたことにより、世界の時間が動き出し、当然会長も動き始めるが、会長は何が起こったかわからないような顔だ。


「なっなにがっ!?なんで私はこんなところにっ!?」


 会長がいきなりのことに驚いて周囲を見渡していると、爆音が聞こえる。

 その爆音が聞こえる先は、先刻レント達がいた商会の最上階であり、、


「ああっ!!わっ私のっ!私のがっ!!なんでぇっ!」


 次々に爆発が起こっていった。


「爆発が起きれば、その衝撃で近くにある無色の魔石もひび割れ爆発……連鎖爆発だ。」


 レントは最上階の各部屋に無色の魔石を設置していて、当然武器が保管されていた場所も今頃爆破完了だろう。


「傭兵どもを自分を囮にして集め、爆破。最初の計画からずいぶんとずれたが、結局達成ね。」


 これも、最初からレントの計画に含まれていることであり、傭兵を倒す手段は最初からこれしかないと思っていた。


「ま、あの傭兵供はこんぐらいの爆破じゃ死なねぇだろ。たぶん。」


 レントに人殺しの趣味はないため、なるべく死んでいないことを祈りたい。

 しかし、おそらく死んでいないとしても、もう戦える状態ではないだろう。それぐらいの爆破であった。


「きっ貴様ぁぁぁっ!!何をっ!!何をしているんだぁっ!?」


 唯一1名、あの爆破に飲み込まれれば死ぬと思ったので、連れてきたが、とてもうるさい。


「わかってるってごめん。商会潰したのは謝るから。」


 めんどくさくなり、適当に謝るが、会長は涙と鼻水で顔面をぐしゃぐしゃにして、隠し持っていた果物ナイフを突きつけると、突っ込んでくる。


「だからっ、ごめんって言ってんだろうがァッ!」


 レントは会長の顔面に、蹴りをぶち込んだ。

 鼻血を流しながら、地面に転がる会長。


「いくら戦いがからっきしの俺でも、お前見てえな小太りに負けるわけねぇだろ?」


「うがっ、くっくそ……。」


 レントは会長からその果物ナイフを取り上げ、逆に会長の頭に突きつける。


「はぁ、ほら、これ見ろ。」


 鼻血を流しながら精一杯レントを睨みつける会長へ、嘆息し果物ナイフを突きつけたまま、レントは懐から用紙を取り出した。


「………ひっ、なっなんでお前がそれを……!!」


 その用紙を見せた瞬間、会長の顔は一瞬で青ざめ、睨む気力すらないようだ。


「どちらにせよ、お前はもうこれで終わり。商会はぶっ潰れて、あの傭兵供も解散。完全にお前らの負けなの。分かります?」


 そこにさらに絶望の言葉を会長にたたみ込むと、会長は絶望に苛まれもう完全に力が抜けている。


「くっくそ……。なんでこんなことに……。」


「もの売るしか脳ねぇくせして、裏連中なんかと関わるからこうなんだよ。」


 レントがそう言って、そこから立ち去ろうとすると、、


「ふぇっ……ふぇはははっ、、」


「うわぁ、ついに気が狂っちゃった……。」


 いきなり笑い出す会長に、レントはドン引きだ。


「いや違う。今頃、あのガキ……リーブ=フラットはもうっ!!お前の言う通り私はもう終わりだっ!だが、お前達も巻き添えだっ!!ふぃふぃぃ、今頃罠に釣られたあのガキが、うちの傭兵達にやられてる頃だろう!!ざまぁみろっ!!」


 突然ものを言い出したかと思えば、最初からレントが気にも留めていなかったことだ。


「はぁ、もう一つ。俺はアイツに嫌われてんだ。俺を人質にしても意味なんてなかったんだよ。最初からな。」


「残念ながらっ、、私は部下からリーブ=フラットが釣れたと報告を聞いているっ!!しっかり罠に嵌ったんだよあのガキはっ!」


「んな……ばかな。」


 リーブはレントのことを嫌っていて、当然助けになど来るはずがないと思っていた。

 しかし、それはレントがそう思っていただけであり、それを決定づける証拠などどこにもない。


「いや……まさか本当に。」


 逆に、レントを家に連れ帰ったり、自分の料理をレントにも食べさせたり、リーブは義理のある者であった。

 そう考えると、、レントは顔色を変える。


「くそっ、俺が甘かった。そこまで考えてなかったっ!!」


 レントは取り上げた果物ナイフを会長の首に突きつけ、


「おい、早くリーブ達がいる場所を吐けっ!」


「へっ、なんでこの私が貴様なんかに……」


 会長は引き攣った笑いで教える気はないようだが、レントは瞳孔を極限にまで開かせ睨みつけながら、首に突きつけたナイフに少しずつ力を入れる。


「いいから言え。余裕がなくなった。マジで殺しちゃうかも。」


 力を込めたナイフは徐々に会長の首に刺さっていき、血がたらりと流れていった。


「わっわかった……いう。場所は………」


 ついに、恐怖に耐えられなくなった会長は、居場所を吐いた。





 ――――――――――



「くそっ、アイツ……やっぱりいいやつだっ!」


 いいやつだったゆえに、レントは今焦り、必死に走っている。

 会長から聞き出した目的地を目指して、レントは全力疾走だ。


「やばいっ、体力持つかこれ……。」


 すでに、アニマの力をほとんど使い、できることといえば時間逆行で肉体の怪我を直すぐらいだ。

 それでも、魔食の剣という天敵を前にしたリーブ一人が戦うよりもずっと勝てる可能性は上がる。


 乱れた呼吸をなんとか整えながら、全力で走り続けた。

 鉱夫の仕事で培った肉体的体力が功を成し、走り続けることができている。もし、鉱夫の仕事をしていなかったら、ここまで走ることは不可能だっただろう。


 そしてついに会長が示した場所……旧商会の建物へ辿り着いた。


「はぁはぁ……ふぅーーはぁはぁ、、」


 膝をついて、乱れた呼吸を修正してから中庭の方へ向かうと、、


「リーブっ!!」


 中庭を抜けようとこちらを歩いてくるリーブに、倒れた後ろの傭兵達。状況を察するに、リーブは単独で魔食の剣に打ち勝ったのだろう。


 レントの心配は、とんでもない杞憂に終わったわけだ。

 それでも、安心で身体の力を抜けるのを感じる。


「レント……?お前なんで……人質として連れ去られたんじゃっ……!!」


 リーブもリーブで、レントを助けにいこうとしていた途中であり、知らず知らずのうちに、お互いの心配をお互いで解決していたのだ。


「いやぁ、よかった……。」


 レントがその場に座り込み、安心しているとリーブもこちらへ近づいてきていて、、起き上がった傭兵の一人が背後からリーブを狙い、魔食の剣を投げつけるのが見えた。


「リーブっ!!後ろを見ろっ!」


 レントの叫びが間に合わず、魔食の剣がリーブの太ももを貫く。


「ーーいっ!!」


 突き刺された痛みで、リーブはバランスを崩し、地面に転んだ。

 そこを狙い、起き上がった傭兵四人が魔食の剣を持って転んだリーブに飛びかかっていく。


「もうこうなりゃ殺してやるっ!」

「しねっ!」


 逃げようにも、突き刺さった魔食の剣に魔力を吸われ、出ない。

 急いで、魔食の剣を引き抜いた時には、魔力もほとんど残っておらず、もう逃げるのは不可能であった。


「ちっ、こんなとこでか……。」


 案外、死とは認めれば怖くないもので、後悔はあったが仕方ないと割り切りゆっくりと目を瞑る。


 痛みを覚悟していたが、痛みがなかなかやってこない。

 その代わりに生暖かい感触が肌を撫でるように流れていく。

 その生暖かいものは、リーブの顔に降りかかり、その顔を汚した。


 気になったリーブが目を開けると、その生暖かいものの正体が明らかになる。


「レン………ト……。なんで……。」


「ごふっ」


 リーブの前にいたのは、リーブを守るような体制で、自らを盾にし、四人の傭兵に剣で貫かれたレントの姿であった。

 胸に二箇所、腹に二箇所、剣が突き刺さっていて、そこからはおびただしいほどの血が流れている。

 口からは、気泡を混えた血がゴボゴボと出ていた。


「がふっ、おい、……リーブ、お前の時間は戻した。剣に吸われた魔力はもう戻ってるはずだ。」


 リーブが確認すると、確かにレントが言う通り、魔力が戻り普通に動けるようになっている。

 しかし、今は……


「俺なんてどうだっていいだろっ!早く自分直せよっ!」


「魔食の剣は……今、俺にブッ刺さってる。とっととこいつら片付けちまえ。」


 レントの狙いは、自分を囮にして無防備になった傭兵達をリーブの魔法で倒すことだった。

 そして、それをリーブも瞬時に理解する。


「くそっ、大バカがっ!!」


 リーブは残りの魔力を使い青白い稲妻を纏うと、一瞬で傭兵達の背後へ移動した。


「なっ!?なにっ!!」

「くそぉっ!!このガキのせいでっ!」


 傭兵達が咄嗟にレントから剣を引き抜くが、もう間に合わない。

 稲妻で形成された五つの剣が、その場にいた五人の傭兵を貫き、、

 ついに、傭兵達は全員稲妻で感電し、黒焦げになり、白目を剥いて倒れた。完全にピクリとも動かなくない。


「はぁはぁ、てめぇらはもう一生そこで寝てろっ!!」


 すると、拍手する音が聞こえてきて、そちらを見ると、完全元通り無傷のレントがあぐらをかきながら笑顔で拍手していた。


「いやぁ、さすが……。マジで強えぇな電気の魔法。」


 リーブは人の気持ちも知らないで、ヘラヘラ笑うレントに近づき、思いっきりゲンコツをくらわす。


「いてっ、何すんだよ。」


 そのままゲンコツされた痛みで頭を抑えるレントの胸ぐらを掴むと、


「てめぇっ!!無茶ばっかりしやがって!!もっと自分を大切にしろよ……!!」


 涙で顔をぐちょぐちょにして、声を荒げた。


「へへっ、悪い。」


 そんなリーブを見ていると、レントは一気に安心が押し寄せ、顔が緩み、自然と涙がたらりと一滴漏れる。


「レント……初めてみた。お前の本当の笑顔。」


 今、レントはリーブにどんな顔を見せているのかわからない。

 しかし、リーブはレントの顔を笑顔と言った。

 ならば笑っているのだろう。

 レント自身がわかるのは、今見せてる顔が、心の底からの顔だということだけだ。


「あぁ……安心したら……なんかな。」

 

 リーブは、レントの頭をそっと撫でた。


「レント、悪かったな。ずっと認めたくなかったんだ……。ずっとお前は、俺の一番大嫌いなやつに似てると思ってた……だけど、全然違った。お前は……単純で、優しくて、寂しがりで、人を見捨てたりしない大バカだ。」


「それ……褒めてんのか?」


 なんか微妙な評価に顔を傾けるが、それがリーブの褒め言葉だと言うことは分かっている。

 レントは心の底からの笑顔を浮かべ、、


「まぁいいか、許す。その代わり……」


「その代わり?」


「俺の友達になってくれ。」


 そう言って、レントが手を差し出し、握手を申し出るとリーブは少し驚いた顔をして、笑みを浮かべると、差し出したレントの手を握った。


「あぁ俺達は友達だ。」



 レントはいろいろこの異世界でやってきたが、結局はまだ中一で、小学生から上がったばかり。


 純粋に誰かと仲良くしたいという気持ちが一番強いのだ。

 そして、それを理解していたリーブ。

 この日、二人は本当の意味で友達となった。




 ――――――――――――――



 それから、レントがこっそりと兵士の屯所に、商会に保管されていた用紙と写真を置いていったことで、ルービル商会の悪事は公になり、会長は身柄を拘束。雇われていた傭兵達もほとんどが捕まった。

 


「へっ、ざまぁみそ。」


 大道芸通りから、スラム街にある家に帰る途中……レントは串焼きを買って食べながら歩いていた。


 先程たんまり稼いだ金を布袋にいれ、腰にかけ、ぼーっと歩いていると、少年がレントの方をめがけ走ってくる。


「うっうわぁ。」


 結局レントは避けきれずに、その少年とぶつかってしまい、お互い倒れた。


「いてて……。なんだよ……ってあれっ!?」


 立ちあがろうとすると、布袋が見つからない。辺りを見渡すと、先程ぶつかった少年が持ち去っていたのだ。


「嘘だろぉっ!!またかよっ!」


 デジャブ感、以前にも似たようなことがあり、今回のが前回の二の舞にならないことを祈る。


 レントが走って布袋を持っていった少年を追いかけようとした時、、


「ダメだぜ。人のものとっちゃ。」


 そう言って、何者かが明らかに常人ではない身のこなしで少年から布袋を取り返した。


「ちっ、くっそ!」


 布袋を取り上げられた少年はそのまま走って逃げていく。


 布袋を取り返した、その者は………


「あっ……あなたは……確か……流下の星々メテオの人……。」


 真っ赤な燃えるような髪に、星のエンブレムを背負ったマントを羽織り、整った顔の好青年。

 以前ジークスといる時に見かけた、その青年だった。


「神の私兵団の……」


「あぁそれは俺だな。ほら、お前も気をつけろよ。確か、道化師やってた……レントだっけか。」


 どうしても、その青年を見ていると、魅力に引きずり込まれていく。

 以前出会った時よりは、なぜかオーラは感じないが、それでも強い存在感を放っていた。


 その青年が、なぜかレントのことを知っている。当然レントも意味がわからない。


「なんで……俺の名前……?」


「さっき、自分で言ってたろう。道化師レントって。」


「………あ。」


 確かに言っていた。

 つい調子に乗って、、

「道化師レントのマジックショー、ただいまから開催いたします」なんて言ってた気がする。


「確かに、言ったかも。」


「だろう?」


 青年はレントの肩をポンと叩き、、


「レント、またどっかで、会う気がすんな。そん時はよろしく。」


 そう言って、青年はそこから立ち去って行った。


「え、また会うって……いつ会うんすか?」


 レントが振り返って聞こうとすると、もうそこには誰もいない。


「なんだったんだ?夢?」


 今起こったことがどうにも現実感がなくて、夢なのではないかと錯覚してしまう。


「また会うって……どうゆうことだ……?」

 

 青年が言っていた意味深な言葉。それがもし単なる戯言の類いなら気にはしないのだが、なぜか不思議なことに本気で言っていたように聞こえてならないのだ。


「あぁダメだ。考えてもわかんねぇ。」


 いくら思考を巡らせてもわからないものは、わからない。

 そのため、レントは思考を停止させた。


 とりあえず、先刻起こった事は忘れたことにして、レントは帰路についた。

 いろいろ買い足して帰っていたら、いつのまにか夕暮れとなり、空はもう赤い。


 ようやくスラム街に到着し、路上で酒を飲むスラム民達の中を普通に歩いていく。


 そして、我が家に到着だ。


 レントは家の扉をガチャリと開け、「ただいまぁ〜」と家の中に入ると、、


「おかえりレント。」


 と、ルームメイトが笑顔で出迎える。



 

 その後、、レントとリーブの生活はより豊かになり、以前よりも笑顔が増えた。


 レントは相変わらず鉱夫の仕事と、道化師としての仕事を両立し、どんどん金を稼ぐ。


 道化師の仕事は、最初から人が結構集まっていたが、それからもどんどん観客が集まっていき、街での知名度を上げていった。


大道芸通りは、いつしかレントの「どうもーっ!マジックショーやりまーすっ!!」という声を求めるようになる。


 鉱夫の仕事も、道化師の仕事が忙しくなり回数は減ったが、ずっと続けた。


 仕事後は社長やレッキレと酒を飲んでわいわい騒ぎ、、


 家に帰ると、、


「リーブ、あれ、なんかリーブが二人に見える。」


「お前また酒飲んできたのか!やめろって言ったよなっ!」


 という会話から始まり、最後はレントが抱きついて、リーブにぶん殴られるというやり取りが何度もあった。


 リーブは、最初は料理をつくったり家事を行っていたが、レントが紹介した魔物商会から魔物狩りで、その魔法と持ち前の強さを活かして、金を稼いでいる。


 いつのまにか、魔物商会でも一目を置かれる存在まで上り詰めていた。


 二人で働き金を稼ぎ、当番制で家事をやり生活する。


 二人が収入を増やしていったことにより、廃墟みたいだったマイホームはどんどん進化していき、新品の家具も並ぶほどだ。


 暑い夏の日も、雨の日も、曇りの日も、雷の日も、晴れの日も、金を盗まれた日も、寒い日も、雪の日も、寝遅れた日も、飯なしの日も、家が少し燃えた日も、冬の日も、魔物に襲われた日も、喧嘩した日も、、


 起きて、家事をして、金を稼いで、寝て、そしてまた起きて、そんな日常を繰り返し、その間もレントとリーブの笑顔が減ることはなく、、



 そして時はあっという間に過ぎていき………

 

 気づけば、レントとリーブが出会ってから一年という月日が経過していた。

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