15.不穏な来客


リーブとの共同生活が始まって早一週間。

 なんの変哲もない、生活を過ごしていた。道化師と仕事をして、鉱夫の仕事をして、金を稼ぎリーブに食を提供して、その代わりに今の新拠点で一夜を越える。


 そう何も変わらない。リーブとの仲も何も変わらず、未だにリーブの笑顔一つ見たことがないのだ。


「あいつ……マジでつれねぇーよな。」


 レントはそうぼやきながら、ツルハシを振るって岩壁を破壊していた。


「つれないって?なんだ女でもできたか?」


 レントのぼやきが聞こえたようで、レッキレが隣から聞いてくる。


「女ねぇ〜。女みたいな顔はしてるけど、、」


 おそらくこんなことを言えば、リーブに殺されるだろうが、現在ここは採掘場であり、リーブはいないため安全だ。


「なんにせよ、あまり気を抜くなよ?気を抜けば危険もあるからな。」


「わかってますよ。」


 レッキレのありがたい忠告を受け、レントはため息を大きくはいてツルハシを振るう。


「お前わかってねぇじゃん。とりあえず俺はあっち掘りに行くから、事故は起こさねぇーようにな。」


「はーい。」


 レッキレはツルハシを持つと、レントの肩をポンと叩き、向かい側の岩壁へ移動していった。


 《うーん。一週間あの態度でいられるってのは逆にすごい気がする。どんだけ嫌われてんだ?俺は。アイツに嫌われたままだといつか追い出されそうで怖い。》


 いつものあの態度を見るに、確かに根は優しいのだろうが、本気でレントを嫌っている。

 今はまだ食のために我慢しているが、いつか我慢の限界を越えられたら、レントはまた宿無し生活への逆戻りだ。


 考えただけで鳥肌が立つ。

 

 そんなことを考えながら、上の空で採掘していると、「ガシン」と、何やら違うものをツルハシで削った感触。


「ん?」


 レントがそれを確認してみると、、


「ーーっ!?」


 《無色の魔石っ!!爆発しちまうっ!!》


 レントが削り取ったのは、無色の魔石でありすでに強い光を放っている。

 いきなりすぎて、パニックになりアニマのことを忘れていたが、すぐに思い出して、、


「戻れ。」


 すると、強い光は消え、魔石についた傷も元通りだ。


「ふうぅーー。あぶねぇ〜。」


 レントが一呼吸して、焦りで流れ出た汗を腕で拭っていると、先程の強い光に反応しざわつき出した。


「なんだなんだ?今の光。」

「この前も似たようなことあったよな。」

「たぶん、俺たちの幻覚だ。」


 やはり無色の魔石がひび割れ、放った強い光だとは気づいていない。


「無色の魔石。これで一体何個目だ?もう森一個開拓できるんじゃねーかこれ。」


 そう言って、元通りになった無色の魔石を拾い上げ、ポケットの中に入れた。

 

 採掘の仕事を始めてから、レントは結構な数の無色の魔石を回収している。

 

 もはや、国家テロを実行できるぐらいの数は所持している気がするが、結局一回も使う機会がない。


「なんか使い道ねぇかな。でも魔物とはあんま戦いたくねぇーしな。まぁいっか。」


 めんどくさいことを考えるのはやめ、レントは今の採掘作業に集中する。

 流石に先程のトラブルから学んだのか、しっかりと集中してツルハシを振るった。


 最初はツルハシを振ると、すぐに肉体的体力を失って休憩していたが、鉱夫の仕事につきもう一か月近く経った今、体力がそこそこついて、休憩回数の頻度が低くなっている。


「へっ、筋肉もだいぶついたし、まだいける。」


 最近は、筋肉がしっかりとついてきて、ツルハシをより上手に扱えるようになっていた。


 そこからあまり休憩を挟まずに、採掘をし続け、、


「今日はもう上がりだぁ!!引き上げるぞぉっ!!」


 という社長の大きな声で、今回の仕事は無事終え、外に出るとすっかり夕暮れになっている。


「ほら、レント手を出せ。」


 社長の言葉に従いレントが手を出すと、社長はレント手に硬貨を乗せ、レントはその硬貨に驚いた。


「あの、社長。硬貨の数違いますよ?」


「いや、合ってる。お前ほとんどずっと休憩入れずにずっとやってただろ。こんぐらいの対価は必要だ。」


 社長がレントに乗せた硬貨の金額は、20000デウスだ。

 いつもの給金が、13000デウスであり、いつもより7000デウスも多い。


「マジすか……。ありがとうございますっ!!」 


 しっかりと、レントの働く様をみているのだから、やはり社長はすごいと思う。


「じゃ、また来まーす。」


 もらった硬貨を握りしめ、社長に挨拶してから帰宅する。


 現場からスラム街への道は結構あり、帰る間に夕暮れだった空は、すっかり暗くなり夜だ。


 ガチャリと扉を開け、「ただいまぁ」と言って家に入るが無視。

 このやり取りも何度もしている。

 

 帰ると、リーブはレントの渡した水の魔石を使って洗い物をしていた。

 相変わらず無視ではあるが、レントのために残された調理済みの料理が鍋に残っている。


「律儀なのかなんなのか……。」


 レントはそうぼそっと呟くと、鍋に入った料理を全部食べた。そして、空になった鍋をリーブは無言で持っていき洗う。


 その間、会話は一度もない。


「まるで倦怠期まっしぐらの夫婦だな。これ。」

  

 そんな1ツッコミを入れるも、それも無視。

 リーブはそのまま風呂へ行こうとする。


《結局風呂かい……風呂ね……。あ、そういやぁ……》


 リーブの風呂へ行こうとする姿を見て、ふと思いついたこたが一つ。


 《チャンス!!》


「リーブ、いいことを教えてやる。」


「あ?なんだよ。つかさっきから独り言うるせぇーんだよ。」


 どうやら、さっきのは全てレントの独り言認定されていたらしい。


「ふふっ、見ろ。これを。」


 レントは赤い魔石をおもむろにリーブに見せつけると、うざったい顔で赤い魔石を見せつけている赤い魔石を指差した。


「だからなんだよ?ムカつくな。」


 そのうざったい顔に、リーブが苛立ちを見せるが、、


「この赤い魔石……炎の魔石ね。使えば炎を出せる。じゃあこれを水の魔石と一緒に使えばどうなるか……。」


「………はっ!!」


 普通に考えれば考えつきそうなことだが、この家に来て一週間全く思い付かなかった。

 思い付かず、ずっと水で体を洗い流す日々を送っていたのだ。


 レントとリーブの二人は、すぐさま浴槽に向かい、水の魔石と炎の魔石を二つ同時に使うと、炎の魔石からは炎が発生し、水の魔石からは水が発生する。

 その炎は水に消火され続けているが、その代わりにその水に熱を与えていった。


 そして浴槽に溜まった水からは……


「ゆっ湯気だぁ。やったぁ。お湯だよ。」


「お……湯。湯……。」


 湯気がたちのぼる、お湯の出来上がりだ。

 レントは飛び跳ねて喜び、さすがのリーブもこれは無視をできない。

 口を抑えて、感動している。


「へへっ、一番風呂は譲るぜ……。」


 レントは格好つけてリーブの肩をポンと叩くが、さすがにリーブも無視ができず、悔しそうに……


「れっ礼を言っといてやる。」


 全く感謝を感じられない礼だが、レントはそれで十分だった。

 口をニヤけさせ、うざったい顔で、、


「感謝……いただいちゃいましたぁぁ〜。」


「……ぐっ。」


 そのレントの顔を見て、リーブは悔しそうに拳を握り、プルプル震えている。


「んじゃ、俺はソファでダラダラしてるから、長風呂楽しんで。」


 そう言ってレントは浴室を出ていった。


 レントのいない浴室でリーブは服を脱ぎ、自分の肌にそっと触れる。


「くそっ、ほんとにムカつくやつだな。これだけは……絶対に隠してやる。」


 少し膨らんだ自分の胸を手で押しつぶして、リーブは自分の身体を洗った。




 ――――――――――


「おいレント、上がったぞ。お前もとっとと入れ。」


「うぃーー。」


 リーブが上がり、今度はレントが浴槽に入ると、早速服を脱ぐ。

 脱いだレントの身体はやはり明らかに筋肉がついていて、綺麗なくびれに割れた腹筋が見え、腕も足の筋肉もしっかりと成長していた。


 そんな身体を泡で包み込み、念願のあったかいお湯で洗い流す。


「ふあぁぁ〜〜、やべぇこりゃ最高だ。」


 風呂を終えレントが浴槽から上がると、リーブは窓から外を見ていた。


「何してんの?」


「うるさい……。今喋んな。」


「あぁ。こんなシンプルな罵倒は初めてだ。」


 窓から目を離さずに、それでもしっかり罵倒は欠かさない。

 レントがソファに腰をかけようとすると、、


 コンコン、、という扉をノックする音が聞こえる。

 確実に扉を二回ノックした音だ。


「なんだこんな時間に……リーブ客がーー」


「うるさいっ!」


 それを伝えようとするも、リーブは聞く耳持たずであり、仕方なくレントが出ることにした。


 レントがノックされた扉を開けると、そこには二人の高そうな服を着た男が立っている。


「あの、こんな時間になんでしょう?」


 すると、男達は困惑した顔を見せ、、


「君こそ何かな?ここの家主に会わせていただきたいのだが……。」


「あぁ……。リーブのお客さんでしたか。どうぞどうぞ。」


 レントはそう言って、家の中に男二人を招いた。

 誰だかはわからないが、リーブにもちゃんと繋がりのある人間がいたと考えると、少し驚きである。


「リーブはこちらでぇーす。」


 と、レントが二人を案内しようとした瞬間、素早い身のこなしで飛んできたリーブが、一人の男の顔面に膝蹴りをぶち込み、もう一人の男の頭を掴み、壁に叩きつけた。


「うおぁぁっ!!お前、お客になんつうことすんだよっ!!ーーいたっ。」


 すると、リーブがレントの頭にゲンコツを食らわせ、胸ぐらを掴む。


「ばかか?お前はっ!!俺に客人なんて来るわけねぇだろっ!!ましてやこんな夜にっ!!」


「あぁ……。確かに。」


 よくよく考えると、スラム街でも怯えられ、街中でもヤバいやつ認定されている者に、普通に家に入ってくるほどの親しい人間がいるというのは、どうにも考えにくい。


「まぁそれもそれでどうかと思うけどな。」


「くそっ、ついに来やがったなっ!!」


「んで、結局こいつらは?」


 リーブの表情を見るに、今ぶちのめした男二人はリーブの敵のようだ。

 全く事情を知らないレントは、まず情報が欲しいのだが、、


「あとで話してやるっ!今はこっから離れることが先だ。」


「え、マジで?ここ離れんのか?」


「死にたいんだったら、残れよ。」


 リーブの焦っている表情から、今が尋常じゃない事態なのだと理解する。


 《そういやぁ、この前すぐ出てくこと、おすすめするみたいなこと言ってたな。》


「あぁ。なるほど。これね。」


 てっきり、レント早く追い出すための嘘だと思っていたが、どうやらリーブも訳がアリアリらしい。


「リーブ、いろいろ準備するからちょっと待ってて。」


「あ?早くしろよ?」


 リーブの言う通り、レントは早急にトランクケースからいろいろ取り出し、衣服や身体に仕込ませた。

 これから予測できることで必要なものを一通り持って、レントは「もう大丈夫。」と合図する。


「いくぞっ。」


 合図を聞いたリーブは、レントと共に、今いる家から飛び出した。

 スラム街を抜け出し、夜の街を全力で走る。


「で、そろそろ教えてくんない?」


 そこそこの距離を走り、スラム街からも離れた頃、レントが話を切り出すと、舌打ちをしてから、、


「あいつらは、俺のことを狙ってるやつらだ。」


「いやそりゃわかるよ。見てりゃ。」


「最後まで聞けっ!」


 リーブの話を聞いてから先走って会話を返すレントに、怒りながら、続きを話し始めた。


「ルービル商会……この街じゃそこそこでかい商会だ。基本的になんでも売ってる万人受けを謳ってるが、そりゃ表面上の話だ。裏じゃ、麻薬の密売に……人攫いをやってる。」


「人攫い?なかなか物騒な単語だな。」


 人攫いに、麻薬の密売……やってることがほとんど裏社会のそれだ。


「あぁ。裏の連中と繋がりがあるからな。で、俺は今そいつらの標的ってわけだ。」


「あぁなるほど。君とんでもなくデンジャラスな人生送ってんのね。」


「だから言っただろ?すぐに出てくって。俺と一緒にいたら、多分お前は殺されるぜ?」


 リーブの言う通り、レントは人攫いの対象ではない。そのため、レントがこのままついていけば、商会の裏の正体を知ってしまった一般人ということになる。

 始末されるのは必然だろう。

 今、リーブから離れて遠くへ逃げるのがレントにとって懸命な判断と言えるが、、


「確かにそうだが、でももうさっきあの二人組に顔見られた。手遅れっぽいよな。」


「はっ、だったらなんだ。ついてくるか?死ぬと思うけど。」


「へっ、せっかく手に入れた家潰されるくらいなら、こっちから潰してやるよ。」


 会話の中で、平然と言ったレントの一言に、リーブはとても驚いた顔をする。


「は?お前、今潰すって……。」


「ああ、言ったよ。潰されるくらいなら、そんなもん潰し返せばいいじゃん。」


 なんの疑いのないレントの顔に、リーブは理解し難い顔だ。


「お前……何言ってんのかわかってんのか?潰すって……アイツらは傭兵も雇ってる。それに武器もたんまり持ってんだ。敵う相手じゃねぇんだよ。」


 あれだけ強かったリーブが言うのだから、相当な強敵なのだろう。何もなく、平常の状態なら、レントもそんな無謀なことは言わない。

 レントは人差し指を立てて、、


「普通に戦えばな。でも普通には戦わない。」


「ちっ、てめぇ何考えてやがる?」


 リーブにはとても違和感があった。

 レントがとても余裕なのだ。普通なら、裏の組織に追われているなど聞けば、恐怖して、我先にと逃げてもおかしくはない。

 しかし、レントはそれどころか戦うと言っているのだ。


「なんでお前、そんなに余裕な顔してやがんだ?」


 もし、レントのメンタルが強靭で鋼並なら、リーブも違和感を感じることはないのだが、少なくとも一緒に暮らしているため、レントがそんなメンタルを持ち合わしていないことは知っている。

 それなのに、妙にレントが余裕なその訳は……


「俺は絶対に自分の命が危なくなることなんてしない。最初から命が危なくなるなんて思っちゃいねぇーのよ。確信してんだ……勝ちを。」


 地獄の森の時も、イラもどきと戦った時も、レントが命の危険に晒された時はいつだって、予想外の時だった。

 しかし、今回は事情を知って、考えもある。

 

 ニヤリと笑うレントに、リーブは一瞬だけ希望を見出してしまった。


「ちっ、こんなやつになんで……。わかったよ。やってやるよ。でもその前によく聞け。」


「なに?」


「俺を本当に狙ってるやつは、この商会じゃねぇ。商会はただ依頼を受けてるだけ。本当に狙ってんのはそのさらに上の存在だ。もし、今回この商会を潰せば、そいつらを敵に回すことになる。その覚悟があんのか?」


 リーブから出た思わぬ新情報。


「え……そうなの?へぇ……そうなんだ。」


「お前………。」


 いきなり圧倒的な余裕が崩れ落ち、情けない顔に戻るレントを、ゴミでも見るかのような目で見るリーブ。


「いやいやいやっ!今からその対策も練れば大丈夫だって……。とりあえずそのことは忘れて、今は商会を潰すことを考えろ。」


「ちっ、それでいいのかよ。」


 結局カッコ悪いレントに、リーブは呆れ、舌を打ちながら腕を組む。


「んで聞きたいんだけど、お前どんくらいやれる?戦闘。」


「まぁ……普通の傭兵ぐらいならまとめてかかってきても余裕で倒せる。お前も知ってんだろ?」


 一度、レントを体力限界にまで追い込んだ実力があるのは承知だ。

 それも、リーブは最初は素手で戦っていた。最初からもし、リーブが稲妻の魔法使って戦っていれば勝敗はどうなっていたかわからない。


「じゃあーー」


「ただ、、」


 レントの言葉を遮り、リーブが話し始めたので、レントはそれを大人しく聞くことにする。


「ただ、それは普通ならの話だ。俺がアイツらと一番やりたくない原因は、アイツらの持ってる武器だ。」


「武器?」


「魔食の剣……狙ったやつの魔力を根こそぎ吸い取るやべぇ武器。特に、俺みたいな魔力を使って戦うタイプのやつにとっちゃ天敵だ。」


 聞いただけで、ヤバいと分かる剣だ。

 確かに、魔力を使う者にとってはとてつもなく危険なものなのだろう。

 もっとも、魔力すらないレントからすれば、ただの剣であることに変わりはないが、、


「剣先を向けられただけで、魔力を吸い取られちまう。これじゃ魔力を纏うこともできねぇ。」


 リーブが怪訝な顔つきで、拳を握っているが、レントは今リーブが言った気になる部分を聞き逃しはしなかった。


「魔力を纏う?」


「ちっ、あんまり言いたくはねぇが、そうだ。魔法に変換する前の魔力を身体全身に巡らせて纏えば、身体がとんでもなく強くなるんだよ。拳一つで岩破壊できるぐらいな。」


「まじか……初耳なんだけど……。お前にもの教える師匠ってなにもんだよ。」


「んなもんいねぇーよ。魔法使って戦ってたら、いつの間にか勝手にできるようになってた。」


 魔法について教えてくれたレッキレは教えなかった新事実だ。否、教えなかったのではなく、知らなかったのだろう。

 魔力を纏う……それがどれだけ難しいことなのかわからないが、それを自分で見つけ出し感覚で使っている。それだけで……

 以前、レッキレが言っていた事……


 《天才か……。》


 そこで一つ、レントはふと気づいた。

 

「あれ……、、もしかして顔面も魔力を纏わせてたり……?」


「全身なんだから当たり前だろ。」


「あぁ、なるほどな。ずっと気になってた……時間停止中の攻撃が効いてなかった理由。やっとわかった。魔力を纏わせてたからか。」


 ぼそりと誰にも聞こえないくらいの声でレントは喋る。


《原理はよくわかんねーが、魔力を纏ってる肉体は時間停止中でもそこまで攻撃が通らないってことか。》


 以前レントがリーブと戦った時に、一番苦戦した原因……それは時間停止中でも攻撃がなかなか効かなかったことだ。

 ずっとそのことが気がかりだったが、皮肉にもこの状況で知ることができた。


「おい、さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」


「あぁ独り言。」


「怪しいな……。」


 リーブがジトっとした目でレントを見てくる。

 確かに、全て手の内を晒したリーブに、自分の手の内を晒さないのは、不公平でズルい気がするが、、 


 《とりあえず、それは後だ。》


「今は、敵を潰すことに集中をーー」


「誰を潰すって?」


 瞬間、リーブが顔色を変え、レントの服を引っ張り地面に伏せると、その上を剣がスパリと通る。


 もし、リーブがレントの服を引っ張ってなければ、今頃レントの首は飛んでいた。


「ちっ、どうこう言ってる場合じゃなくなっちまったみたいだぞレント。」


「おっと……いきなり想定外なんだけど。」


 レントとリーブが頬に汗を浮かべ、見る視線の先には、、


「女は捕獲、男は殺しでいいか。」


 不運にも、ギョロリとした目で、何を考えているかわからないような男が、不気味な剣を持って立っていた。


 

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