0.異世界への扉3



 「ん?」


 切り離されていた意識がいきなり現実に戻され、真っ暗な部屋で目が覚めた。


「マジか……。あぁ、変な時間に起きちゃったよぉぉっ」


 蓮永はやや短い髪をわしゃわしゃとかいて、不機嫌そうに時計を見ると、『2時30分』。


「やばい。目ぇ覚めちゃった。」


 ベットの上で上半身だけを立ち上げ、ぼーっとしていると、なにか異変を感じた。


 その異変とは、、


「うっ、うわぁぁ、なんか光ってんだけどぉ!?」


 蓮永の胸に淡い光が灯っている。


「きっ気持ちわるっ!!」


 なんとかその光を退かそうと、胸をペシペシと叩くが消える気配はない。


「あぁ、こりゃ夢か。」

 

 夜中にこんな謎すぎる現象、夢に違いない。

 そう考えると、馬鹿馬鹿しくなりもう一度寝ようとする。

 しかし、


「これ、この光……線になって……どこに繋がってんだ?」


 蓮永の胸の光は線になって、どこかを指していた。

 部屋の壁を突き抜けて、外へ……


「うーん……なんか気になる。」


 普段はそんなもの気にはしないが、なぜか今回はとても気になった。

 そして、思わず部屋を出て、千鶴さんにバレないようにこっそり家を出る。


「うぅぅ、さむっ。さむいってことはこれ夢じゃねーよなぁ。」


 外は思いのほか寒く、半袖短パンのパジャマには少し肌寒かった。


「なんか少し……ワクワクする……。」


 夜中に出歩くなんてやったことがなかったため、蓮永にとってとても新鮮で、胸が躍った。

 いつもは面倒くさがって何もしないくせに、こうゆう悪いことは楽しいと感じてしまう。

 

 光の線が示す先をずっと歩いていくと……


 「あれ、消えちゃった。」


 胸の光が消えて、線も消えてしまった。

 その代わり、


「ん?壁に……穴?」


 蓮永の前には壁があった。なんの変哲もない幅1メートルほどの壁、その中央に人が入れるほどの穴がある。

 しかしおかしいのだ。

 なぜなら、


「え……。この壁、こっち側は穴が空いてない……。」


 壁の反対面には穴が空いていなかった。

 片面にしか穴がないなんてことは普通あり得ない。


「しかも、この穴入れるんだけど……。えぇ……。」


 この異常、普段なら驚きながらも、蓮永は穴に入ることなどしなかった。

 しかし、なぜか蓮永もまた異常なほどにその壁の穴に興味を持ってしまっていた。

 ゆえに、「少し……だけなら、へへっ」と、蓮永はその穴に足を突っ込んだ。


「なんか、トンネルみたいだなぁ。」


 壁の穴の中はトンネルのようで、しかし出口が見えない。


「そろそろ帰っか。」


 蓮永が飽きて、引きかえそうとした時、


「出口?」


 向こう側に光が見えた。


「あと……少しだけ。」


 その光は蓮永の推測通り出口で、これ以上進むのはまずいという理性を、好奇心が押し潰し、蓮永はついにその出口を出る。


 するとそこは、


「森の中?それも明るい……!!」


 先程まで真夜中だったはずなのに、まるで昼のように外は明るかった。

 それに蓮永がいたのは住宅街であり、森の中に繋がるのはあり得ない。


「いや、そもそもあの壁があり得なかった……。」


 ようやく理性が好奇心を抑え、蓮永はすぐに先程の穴に戻ろうとする。

 しかし、


「おぉ………。マジか。」


 そこにはもう壁も穴も無かった。

 

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