0.異世界への扉2
「はっ………!!」
長く長く、恐ろしい夢から解放された少年は見慣れた家の天井を見る。
黒髪の若干短髪の少年は、飛び上がるように上半身をベットから起こした。
びっしょりと汗をかいていて、ベットのシーツや枕は濡れている。
「はぁはぁはぁ、俺は……一体……何を……。」
まだ現実と夢の区別がつかず、混乱し息遣いも荒い。
そんな時、ガチャリと部屋の扉があいて、綺麗な女性が部屋に入ってくる。
「蓮永くん、そろそろ学校に行く時間よ。起きて」
「千鶴さん……。」
「どうしたの?すごい汗で、それに顔色も少し悪いわ。」
「いや、なんでもないっすよ。少し変な夢を見てて……。」
「あら、そうなの?体調が悪いわけじゃないならいいわ。朝ご飯できてるから、顔洗ってきなさい。」
「ありがとうございまぁす。」
少年がそう言うと、入ってきた女性……千鶴さんは部屋の扉を閉めずに階段を降りて下に行った。
「そうだ。俺は、蓮永……
流れる汗を腕で拭いながら、少年……
用意されていた朝飯を食べて、身支度を整えたら、学生服を着る。
いつもの、なんの代わり映えしない変哲な日常がまた始まった。
今年から中学生であり、まだ慣れない新調したての学生服を着て、学校に向かう。
「ふぁぁ〜。変な夢見たせいで、眠い。学校めんどくせぇなぁ。」
蓮永が大きなあくびをしながら、不機嫌な顔で歩いていると、
「おっ、蓮永じゃん!!一緒に学校行こうぜぇっ!!」
「あぁ、うるさいのが来た。」
小学生から中学生に上がったといっても、地元の中学なので、学校の友達はほとんど変わらない。
今、元気マックスで蓮永の首に腕をかけ話しかけるのも、小学生の時からの友達だ。
「お前、朝っぱらからしけてんなぁっ!!もっと元気だせよっ!」
「うるさい、逆になんでお前はこんな朝っぱらから元気爆発なんだよ。」
「へっ、普通だろ。お前がしけすぎなの。」
そのまま、その元気爆発少年の友達と学校へ行き、授業を聞き、一日を過ごす。
成績はまぁまぁいい方ではあり、友達もそこそこいて、決して悪い学校生活ではなかった。
しかし、少し平凡すぎる気がする。
思春期入りたての蓮永からすれば、この平凡すぎる日常は少し退屈で、それでいて面倒が嫌いな蓮永からすれば、この退屈な日常も別に苦ではない。
矛盾が入り混じったなんとも言えない日常だった。
「なぁ、蓮永っ!!今日ウチでゲームやろうぜ!他の奴らも誘ってるからさっ!!」
朝とは違う別の友達、今度はゲームが好きな友達だ。
「えぇ、めんどくさいからやだぁ。帰って寝るぅ。」
蓮永は極度のめんどくさがりであり、ゲームでさえめんどうに思えるため、なかなかやらない。
「ちぇっ、つまんねーの。別にいいもんね。」
授業が終わった放課後、蓮永は今日一番の元気を出して教科書をバックにつめ、ダッシュで帰っていった。
「アイツ、いつも帰る時だけは元気だよなぁ。」
勢いよく家の扉を開け、靴を乱雑に脱いで家の中に入る。
「ただいまっすぅ。」
と大きめの声で言うと、リビングのソファにどかっと座った。
すると、笑顔で食器を履いている千鶴さんが
「おかえり」
優しく微笑みながら返す。
「こらこら、蓮永くん、手洗いうがいはしなさいよ?」
「はぁい。」
友達との遊びの誘いを断って蓮永のやることは、『何もしない』だ。遊び……ゲームにしろ、カラオケにしろ、買い物にしろ、自分が動くという動作が蓮永にとってはめんどくさい。
そのため、蓮永はさっきからずっとソファの上でぼーっとしている。
ダラダラしていると時間はあっという間にすぎて、気づけばもう外は暗い。
どこの家庭ももう夕食の時間帯で、ウチも例外じゃなく、夕食の時間だ。
千鶴さんと蓮永、二人で食事を囲む。千鶴さんの旦那さんは今出張中であり、家にはいない。
そのため、二人しかいないのだ。
「蓮永くん、今の生活には……慣れてきたかしら?」
千鶴さんは少し心配そうな顔をして、蓮永を気に掛けている。
「まぁ、はい。だいぶ慣れてきましたよ。もう三ヶ月経ちますし……。」
「そう……なら、よかったわ。」
「………。」
話題が尽きて、食卓の間に気まずい時間が流れてしまった。
千鶴さんの家に蓮永が住み始めてニヶ月、まだ少し面と向かって食事をすると気まずい。
ニヶ月前に蓮永の両親は交通事故で死に、中学校生活と共に、新たな家での新たな生活が始まった。
だいぶ慣れてきてはいるが、まだ両親が死んだことの傷は癒えていない。
なんとか普通に生活し、平気を装ってはいるが、全然平気というわけではないのだ。
「ふぁぁ、眠い。今日はすぐ寝れそうだぁ。」
夕食を終え、風呂に入り、もう完全に眠る体勢に入った。
「あぁ、早く慣れねーと」
ゆっくりと目を閉じ、すぐに意識が現実から切り離されていく。
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