第2話 勇者召喚
またあの日の夢を視ていた。最強の魔族、
あれから、カヴォロスは次に目覚めると宮木竜成という人間になっていた。
しかもここはカヴォロスがいた世界ではなく、西暦2015年の日本だ。
最初は戸惑うカヴォロスだったが、竜成の記憶も有していたため、馴染むのにそう時間はかからなかった。今では宮木竜成としての日常を謳歌している。
そして竜成は高校三年生。今日も授業のために登校しなければならない。
夢の世界に想いを馳せたくなるが、竜成は首を横に振って意識を取り直すと、ベッドから降りる。
身支度をして、家を出る。
「あ、おはよう竜成君」
「
外で待っていたのは、制服のセーラー服に身を包んだ、度の強いメガネをかけた少女だった。彼女の名は
全く雰囲気は異なるが、どことなくララファエルの面影を感じてカヴォロスとしても放って置けない存在だ。
そんな結花と並んで歩く。いつも通りの登校風景。
――だと思っていたのだが。
「えっ、た、竜成君!」
「結花!? 結花!!」
登校中、突如として結花の身体がまばゆい光に包まれた。竜成と結花は互いに手を伸ばしてその手を掴む。
そして光が消えた時、そこに二人の姿はなかった。
※
竜成が次に意識を取り戻すと、そこは見慣れない建物の中だった。木造りの空間には、どこかの国の骨董品のようなものが所狭しと並べられている。
「おや、珍しいお客さんだ」
声にそちらを見やれば、そこには洋物の喪服に身を包んだ妙齢の女性がいた。カウンターらしき台の向こう側に座る女性は、不敵に微笑みながらこちらを見つめてくる。
「あなたは?」
「これは失礼。私はこういう者だ」
スッと、どこからともなく竜成の元に一枚の紙切れが飛んでくる。
そこには、『アンティークショップ『
「さて、他に訊きたいことはあるかな? 宮木竜成……いや、今は四魔神将カヴォロスと呼ぶべきかな?」
「!!」
どうしてそれを、と声に出そうとして、気付いた。
先ほどまで宮木竜成であったはずの彼の身体は、いつの間にか四魔神将カヴォロスとなっていたのだ。
かつての身体を取り戻したことに、今は喜びよりも戸惑いしか浮かばない。何がどうなっている――!?
「おっと、どうやら時間のようだ。手短に説明しておこう。君は勇者の召喚に巻き込まれた。今の君は宮木竜成でも四魔神将カヴォロスでもない中途半端な存在だ。彼女を助けるために、人としての生を捨てる覚悟はあるか?」
彼女とは結花のことか。つまり、結花が勇者として召喚された?
ならば、答えは一つだ。
「……当たり前だ。彼女を守る。そのためなら人としての生など惜しくはない」
「いいだろう。では、そのドアから先に進むといい。その先に彼女が待っているはずだ」
竜成――いや、カヴォロスは頷く。振り返り、サツキが指し示したドアへと歩み寄る。
ドアから漏れ出る光は、先ほど結花の身体を包んだものとよく似ていた。カヴォロスは迷わずドアを開け、まばゆい光に包まれたその向こうへと足を踏み出した。
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