regret
あれから私は二人の事が頭から離れなかった。
どうして〝幻〟は私を恨んでいたのか?
私達はどんな繋がりがあるのか?
そして“あの実”は気づくと白く透明になりかかっていた。
それを見ていると〝幻〟があの時
〜このまま消えていく〜
と言っていた言葉が過ってしまった。
私が〝幻〟にされた事は許せないけれど、一時でも私は癒され救われていた時間は、あの時の私には必要なモノだった。
だから、〝幻〟を憎んだりはしていなかった。
私は〝幻〟が心配になり店に行ってみる事にした。
しかし、あった店の場所は普通の民家になっていて面影すら無かった。
ふと、前に言っていた言葉を思い出した。
〜君が望めば辿り着ける……君の事は分かる……〜
私が会いたいと願ったら二人に会えるのかもしれないと思い、夜の街を当ても無くただ “会える、会いたい” と信じて歩き出した。
暫く行くと、この辺りには無いはずの、でも見た事のある森の様な場所に着いていた。
高校3年のあの時、学校の帰りに見たことの無い鳥を見つけた。
その鳥は紫と緑の入った三枚の綺麗な翼を持っていた。
私は、その魅力にスグさま惹かれ近寄っていった。
眠っていた鳥は私が近付いている事すら気づかなかった。
近くで見ると鳥の翼は色々な色に見えて、私の好奇心をくすぐっていた。
突然ポツリと雨が降り出しすと、その鳥は一枚の羽をピンと突き出した。
それは銀色輝いた美しい羽で、私はどうしても欲しくなってしまい、グィっと抜いてしまった。
鳥はすざましい鳴き声をあげて茂みの中へ入って行ってしまった。
私の手には抜き取ってしまった羽が、瞬く間に色が変色しだし、黒くなり枯れ果てた羽へと変わって行った。
私は怖くなり、その羽を投げ捨て帰って行ってしまった。
それからは、受験や大学生活や就活で慌ただしく過ごし今まで思い返す事は無かった。
自分が招いた過ち…
私利私欲に負けた遠いあの日…
今蘇ってきた。
「思い出したかい?
僕の羽を君が抜いたんだよ…
いきなりピッとね…」
草陰から〝幻〟の声だけが聞こえて来て、私は周りを見渡し探していた。
「今は、君には僕の姿は見えないだろうね。
僕は羽を取られ、自由を失った。
僕だけじゃない。
〝想〟もだけどね。」
「どうして??
あの鳥と〝幻〟は繋がっているの?
それに、〝想〟もって…」
私の頭は過去の記憶と〝幻〟の話でグチャグチャになっていた。
「ごめんよ。
こんな所で寝ていた僕らが悪いんだ。」
振り向くと〝想〟が淋しい顔をして立っていた。
「僕と〝幻〟は一つの体に二つの魂を持つ鳥だったんだ。
全く別の魂だから、上手く飛べるように三枚の翼を持たせて貰ったんだけど、たまたま君が見つけた銀色の羽は、僕らの調和を取る為の大事な羽だったんだ。
だから、それを抜かれ僕らは別々になった…」
あの羽が大切な羽だったと知り、私は自分の愚かさに涙が溢れ〝想〟を見る事が出来無くなっていた。
「僕もね、最初は君を許せなかったんだ…
僕らは一緒にいる事で、お互いの足りない部分を補って幸せに暮らしていたんだ。
おまけに、二人で一つの体の時は不死を与えて貰っていたから、死にゆく恐怖を知ったんだ…」
切ない顔で語る〝想〟を見て、自分のせいで二人の運命を変えてしてしまったんだと胸が苦しくなって息が出来ないほどだった。
「私の…
せい…」
すると草陰に紫の光がたち
「僕の最後の力を使って、君を僕と同じ絶望へと導く!」
声と共に〝幻〟らしき物体が現れた。
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