to call out

恐怖と孤独に包まれ、私は誰とも関わらない様にしていた。

怖い経験をしたのに、私は貰った“実”をどうしても捨てられなかった。

あの時の私はこの“実”に救われたのも事実だったから…。


私は毛布に包まって、今起きている現実に不安になり押し潰されそうになっていた。

すると部屋の窓に何かが当たる音がしてビクッとしていると、微かに聞いた事がある声が聞こえて来た。


「ねえ、居るだろ?

ねえ、窓開けてよ!

外は気持ち良い空だよ!

ねえ、出ておいでよ!」

弾むその声は、まるで音楽を奏でている様な感じだった。

そっとカーテンの隙間から覗いてみると、そこには緑の髪の〝想〟が陽気にクルクル廻りながら手を振っていた。

何だかその姿は、サーカスのピエロみたいで私の固くなっていた顔は自然に緩んでいった。

「おいで!!」

〝想〟の呼びかけに私は頷いた。


「何かあった??

元気ないじゃん。」

私は今起きている事を〝想〟に話して良いのか少し悩んだけど、思い切って話してみた。

「羽…か…

…大丈夫だよ。一枚だけじゃ、君が変わる訳じゃない。

そもそも、ココでは必要無いし。」

〝想〟が言ってる事は私には分からなかった。

「でも、普通は体から羽なんて出ないでしょ?

普通じゃない事が起きちゃって混乱してるの…

怖いよ…」

私はギュっと手を合わせ俯向いた。

「そうだね。

普通は羽なんて出て来ないよね。

君は特別だから仕方無いんだ。」

〝想〟は優しく頭を撫でながら青く澄んだ空を見ていた。


「ねえ、良かったら肩のアザを見せてくれないかい?」

私は半袖の隙間から肩に出来たアザをチラリと見せた。

〝想〟は大きく息を吸い自分の手の平に息を吹きかけ、私のアザに手を当てた。

その手はひんやりしてドキッとしたけど、私の体からスッと何かが抜けていく感じがした。

「多分、羽は出て来ないと思うけど、もう“あの実”はもう食べないで。

今度は助けてあげられないと思うから。

じゃ、行くわ。」

〝想〟はフラつきながら立ち去ってしまった。


部屋に戻り、恐る恐る肩を見てみる濃かったアザは薄くなっていた。

〜えっ!?

一体何が起きたの!?

〝想〟は何をしたの?

ただ手を当てただけなのに…〜

アッと言う間の手品を見た様な不思議な時間に、私は驚きながらもアザが薄れてホッとしていた。

その夜は久しぶりにグッスリと眠ることが出来た。


ー 君は一つ目の羽を失った

 あと二つしか羽は無い

 これじゃ、飛べない  ー


その声と共に私は目を覚ました。

〜 今のは何!? 〜


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