confused
朝日が窓から差し込み、私は目を覚ました。
一瞬、昨夜の事は夢だったのかと思ったが、床に落ちていた一枚の羽を見て本当に起こった事だと分かった。
私の肩から出てきたその羽は、黒く古びていて変な感じがした。
〜確か昨日の夜は薄い黄色に見えたのに…
それに、こんなに傷んで古びた羽じゃなかったのに…
〜私の勘違い??〜
混乱しながら、自分に起きた不可解な出来事が怖くなった。
《あの実は食べちゃダメ》
〝想〟に言われた言葉が繰り返し私の頭で響きわたっていた。
確かに〝幻〟に貰った“実”を食べてから、歪んだ私の心は解き放され楽になっていたから、こんな事が起こるなんて考えずに食べ続けていた。
両肩に痛みを伴うアザが出来て、謎の羽まで出て来て、私にはどうして良いのか分からなかった。どうしても〝幻〟にこの不可解な現象を聞かなきゃいけないと思い夜になるのを待ち店に向かった。
店に入ると〝幻〟は悲しそうな顔をして私を見た。
「せっかく、君を嫌な事から自由にさせてあげる為に“アレ”をあげたのに、君は迷っているんだね?」
そう、始めてココに来た時から〝幻〟は私を見抜いていた。知るはずも無い私の事を気持ちを分かっていた。
「どうして私の事分かるの?
ココでは特に話もしていないのに…
それに“あの実”は何かの薬みたいな物なの?」
私が聞くと〝幻〟はクスっと笑いカクテルを作り出した。
「君の事は見ていれば分かるよ。
僕はね、人の思いや考えが分かるんだ。」
そう言って、紫の泡のカクテルを差し出した。
〜そんな人っているの?
それも詳しく分かるなんて…〜
私は差し出されたカクテルを飲まず俯いたまま考えていた。
「人の事が分かるなんて、気持ち悪いかい?
…そうだよね、知られたくない事も知られちゃうしね。
でも…
君には、つまらない苦しみや哀しみは持たないで自由でいて欲しいから、その為に僕は“あの実”をあげたんだ。
実際、嫌な事から解放されていたでしょう?」
〝幻〟は穏やかに優しく語り掛けていた。
「気持ちは楽になったけど…
両肩にアザが出来ちゃうし…
昨夜は羽みたいなのが出てきちゃうし…
何か…怖くて…」
私がポツポツと言うと〝幻〟の顔は蒼白になり、暫く考えこんでいた。
「…羽みたいなのが出たって…その羽はどうしたの?」
「ビックリして、思わず自分で抜いてしまったけど…」
「えっ!?
抜いたの!?」
〝幻〟は頭に手を置いて震え出した。
「その羽は…
君にある心の羽なのに…
それを抜いてしまうなんて…
何てことを…」
私は動揺していた。
〜抜いちゃいけなかったの?
でも…
普通ビックリして抜くよね?
…何で??
心の羽って何??…〜
〝幻〟は黙ったまま私を見て困っているみたいだった。
それから不穏な空気に耐えられず店を出て夜道を行くと星が綺麗に輝いていた。
〜私…これからどうなっちゃうんだろう?…〜
不安に押し潰されてしまいそうだった。
ただ、束の間でも癒されたかっただけなのに、こんな事になるなんて思いもしなかった。
自分の愚かさが悲しくて、涙が止まらなくなっていた。
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