恭平ハーレム②
その後あちこちに顔を出して下校。駅へと向かう途中、俺のスマホに
「今、暇か?」
「何か面白いことある?」
「気晴らしだ」
「行く行く」
俺は仏頂面をしながらチャラ男の「
これはもう完全に染み付いてしまっている。中等部の頃、
俺たちは学校の最寄駅から二つ離れた駅で落ち合った。
「耀太は?」
「今日は
それは相手の数を示す。
待ち合わせ場所に現れたのは
昔からこうした集まりは年上女子だった。そのお蔭で俺は年上女子を相手にする方が緊張しない。完全に道化になれるからだろう。
俺はお笑い担当のムードメーカー。恭平とは補完し合う仲だった。
「ラクロス部の……」と言って恭平は女子を紹介してくれた。
二人とも凄い美少女だと思ったが、名前はすぐに忘れるだろう。同じ相手に二度会うことは滅多にない。
ほとんどの場合、どちらかが恭平への告白が目的で、もう一人は付き添いだ。俺はその付き添いの方を相手にすれば良かった。
しかしいったいどうやって知り合うのだろう。街を歩いていて女子の方から声をかけられるのだろうか。それでも不思議ではないが謎だ。
俺たちは制服姿のままスポーツジムに入った。
このジムは俺たちの親が入っていて俺たちも家族会員として利用できる。
秀星学院の女子二人も同じ身分のようだった。
俺たちは一時間ほどスカッシュを楽しんだ。
恭平はテニス部のウェア、女子二人は秀星学院のラクロス部の練習着で俺だけが学校の体育のジャージだったがそれが俺のキャラだから違和感はなかった。
それにしてもみんな体力があるな。恭平も女子二人も体育会系部活をしてきたばかりだと言うのに。俺は頭が下がる思いだった。
女子二人のどちらが恭平狙いなのかはすぐにわかった。
恭平に恋い焦がれる女子は皆同じ目をしている。明音や村椿さんと同じ目。俺にはそれが判別できた。
多分恭平自身はわからないのだろう。こいつは意外と鈍感なのだ。
恭平に気がある方の女子は
スカッシュをしている時の顔つきは間違いなくスポーツ少女。しかし平時は清楚系で
どうも森下さんと恭平がこのジムで出会ったのが
二人が付き合うことになるか俺にはわからない。いや、一週間程度の短い付き合いなら恭平は同時進行で日常茶飯事のようにやっている。
それでどこまで関係を深めるのか俺の知るところではなかった。
学園内では生徒同士の恋愛が校則で禁止されていたから他校の生徒と付き合っている生徒は時々いるようだ。恭平もそれを狙ってやっていたと思う。
徐々に恭平と森下さんが一緒にいることが増えていき、ジムを出る頃には俺は成り行きでもう一人の女子と話をするようになっていた。
「あなた、いつも付き添い役をしているの?」
「そうでーす」俺は軽薄そうに答えた。「
「何度かあるわね」
彼女はヨザウオといった。どんな字を書くのかわからない。ただ、ビックリするほどの美人で、俺は初対面の時から衝撃を受けていた。
ふつうどんな美人でも最初に衝撃を受けても徐々に見慣れていくものだが彼女の場合、お喋りをしたりスカッシュをする姿を見ていくうちにどんどんその美しい姿に引き込まれていくのだ。
それは恭平も同様で、森下さんの相手をしながらヨザウオさんの姿をチラ見する様子からも彼女の凄さがわかる。
なんでこんな人が付き添い役をしている?
主役を食ってしまうではないか。俺は目の保養ができて構わないが。
「
「チャラいでしょ?」俺は声を潜めた。恭平には聞かせられない。
「そうね、昔見たときとは印象が違う」
「昔会ったことがあるのですか?」
「何度かね。我が校と
この人も恭平に興味があるようだ。
「私にも目の保養をする権利くらいあるでしょう?」
「そ、そうですね」
外見上はこの人に泉月のイメージを重ねていたが全く違う。妖しげな雰囲気が滲み出ている。
「彼と付き合ったら
ヨザウオさんの囁きに俺はドキッとする。
「興味深いわ。私は
「まさか、いくらなんでも……」
恭平が一か月も同じ女子を相手にしている気配はなかった。それが何を意味するのか俺にはわからない。
短期間で深い仲になって捨てているという可能性も否定はできない。恭平についてはまだまだわからないことがある。
恭平の誘いで俺たちは遅い夕食を食べて帰った。意外と最後はあっさりとしていた。
恭平と森下さんは次に会う約束をしたようだ。
俺はヨザウオさん相手にそんな約束が交わせるはずもなかった。互いに付き添い役だったし。
しかし別れ際ヨザウオさんは意味深なことを言った。
「楽しかったわ。交流もあるし、これから何度か顔を合わすことになりそうね」
「それは楽しみっす」
俺は
ヨザウオさんはクスッと笑った。
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