バスケのギャラリー
昼休みが残り少なくなり、俺たちはバスケットをやめた。
ギャラリーも大半が散っていった。
「面白かったな」
悔しいが爽やかな笑顔だ。女子が悶絶するのも頷ける。
「
恭平が探したが明音はもう姿を消していた。
「一度よく話をしないといけないな」
同じクラスなのに恭平と明音が絡むことは見なくなった。
「いつも俺のことをボロクソに言う」
全ては恭平のせいなのにこいつは全く自覚がない。
「まあ、いいんじゃね、明音だし」
「そうそう」
この二人は明音の味方だ。明音のファンでもある。
恭平の後ろにいた女子の一人が恭平にタオルを差し出した。
「サンキュー」
恭平が受け取り、汗を拭う。
何これ、絵に描いたような一コマ。
そしてその女子はお決まりのように超絶美人だった。例の新入生だ。
「ところでそちらは?」
俺は普段の「
「ああ、彼女は高等部新入生、一年G組の
そして、と他のテニス部新入生も俺たちに紹介する。悔しいがそういう配慮を簡単に見せる奴なのだ。
「
恭平の隣にいても全く違和感のない美貌だった。本当に高一か? 俺たちと同い年か? S組十傑にはいないタイプだ。
「A組の野郎共だ」
恭平は俺たちを簡単に紹介した。本当に簡単に。
「
耀太が見下ろすように村椿に柔和な笑みを向けると彼女は少したじろいだ。どちらかと言えば悪役令嬢タイプのきつい美貌に可愛い面が垣間見えた。
「
秀一は眼鏡を整える。すかした風に見えるが緊張するとこういう顔をしてしまうのだ。
「で、俺っちが樋笠大地。S組です」俺は敬礼して見せた。
「S組?」
「気にしなくていい、ただの中二病だ」恭平は手を振った。
それはないんじゃね?
自己紹介を済ませると俺たちはあっさりと別れた。
恭平と新たなとりまき女子三人を見送り、俺たちは溜め息をついた。
「ますますハーレムと化してるな」
俺が言うと耀太も秀一も頷いた。
と、俺はスマホカメラの音を聞いた。いやさっきから何度も聞いていた気がする。
目を向けるとそこに新聞部の三つ子がいた。三つ編み眼鏡女子三人。
「
俺は三つ子の一人、新聞部部長の
「良いものを見せてもらったわ」
「それってバスケだけですよね?」
俺は念のために訊いた。俺たちにだって肖像権というものがある。
「昼休みの一コマとしてSNSに載せるわ」
「テニス部の美女に鼻の下を伸ばす樋笠君たちもね」二年生の
狙いはそっちじゃね。
三つ子のように見えて、立っていると天埜さんが一番小さい。しかし天埜さんが最も
もう一人いた女子は新入生だろうか。鼻をつまんで
「
「こいつもイケメンにあてられて鼻血が 出そうになってるな」天埜さんが言った。
「すみません、あまりに尊くて……」伊沢という女子が顔を上げた。「ぷしゅー……」
何だよ、それ。
同じような髪型に見えて、よく見ると伊沢の髪は見事に編み込まれていた。大きな黒フレーム眼鏡。可愛い。どこかで見たような顔に感じたがよくある顔だからか。
「また見せてもらいますね」そう言って伊沢はバシバシとスマホで俺たちを撮った。
「伊沢はあたしたち以上にパパラッチだからなあ」山縣さんが暢気に言った。
もしや俺たちを盗撮しているのは彼女なのか?
「日曜日、スイーツの店に入った?」俺は伊沢さんに訊いていた。
「いいえ」と伊沢は眼鏡の奥の目を丸くした。
「疑っているな、君たち」山縣さんが言う。「情報提供を受けて載せただけだよ。何の企みもないわ」
「そうですか」
「でもプリンセスをはじめS組の君たちが美味しそうに食べている写真があると効果的ね」
「大丈夫、もし非難されるようなことがあれば私たち新聞部が君たちの味方につくよ。制服姿で店に入ることに何の問題もない」
「はあ……」
そうですか。だと良いんですけれど。
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