ボランティア部の四人
俺たちは教室に戻った。
何人かは心配してくれている。特にプリンセス
「大丈夫だったの?」
「何でもなかったよ」俺が答えた。
自分の席を離れて迎えに来てくれるのが純香にしては珍しいから心配していたのは本当だろう。
実は純香は腰が重い。華奢な体格なんだけどね。
「要領が良い
「俺には口しかねえのかよ」俺はむくれた。
「――体は
明音は容赦ない。その矛先は
「――あたしと行かずに野郎二人と行くからだぞ」
明音が梨花の頭をワシャワシャした。
その場に
その代わりというわけでもないが、和泉の立ち位置にいるのが明音だった。和泉、
「で、どうだった?」
「
「ラーメンの話だよ」そっちか。そういう奴だったな、明音は。
「梨花の吐く息
「そういやニンニク臭いな」明音が眉をひそめる。
「本当?」梨花が目をむく。それもまた可愛い。
さきほどは璃乃が鎌をかけただけかと思ったが本当にニンニクの臭いがするらしい。入れすぎたからだぞ、梨花。
それからしばらくラーメン談義に花が咲いた。
「土日に連れてってよ。大地と耀太の奢りで。私たち三人」明音が乗り気になっている。
「良いね、それ」梨花も目を輝かせる。
「土日はボランティア部の活動で……」純香が口を挟んだ。
純香にあのラーメンは似合わないかなと俺は思った。食べきれるかどうかもわからない。純香は少食なのだ。
「部活終わってからで良いじゃん」
相変わらず明音は強引な奴だった。ビジュアルは良いのに性格は男だ。
中等部時代、
セミロングの髪はところどころ跳ねていて、今日は頭の高いところで一つに纏めていた。その髪色は染めてもいないのに明るく見える。茶髪というよりは赤い髪に見えるのだ。いつも染めていない診断書を出しているとぼやいていたな。
「じゃあ久しぶりにボランティア部活動をするか」明音がにっと笑った。
その笑顔は眩しすぎる。
そして明音は数少ないボランティア部専属部員だった。ほとんど幽霊だが。
昼休みに俺は明音、梨花、純香とともにボランティア部部室にいた。
今度の日曜日は学校近くの老人施設に演芸を見せに行くことになっていた。月に一回施設では誕生日会が開かれることになっていて、その余興ボランティアに行くのだ。
俺と明音は結構息のあったコントを得意としていた。俺がファミレスに来た客、明音がヤンキーのウエイトレスという設定で若者にはバカウケする出来なのだ。
しかしそのネタは少なからず場所を選ぶ。幼稚園で披露した際にはこどもの教育上良くないとやんわりお叱りを受けたし、特別養護老人ホームでは職員や入居者の家族は大笑いしてくれたが、肝心の寝たきり高齢者はリクライニングチェアに腰掛けたまま何の反応も示さなかった。
どうも高齢者施設はお笑いよりも音楽の方が良いようだ。そこで俺たちは楽器演奏をやってみることにした。
幸いにも俺たちは一度は吹奏楽部にいた人間だ。
中等部に入学した際、担任の
何しろ当時のA組の大半が入部したからな。俺たちS組十傑も全員だ。何だかんだあって今も吹奏楽部に籍をおいているのは璃乃くらいだが、今でも俺たちはちょっとした楽器演奏ならできる。
「楽器演奏なら制服かな」
「もちろんよ」
「あたしの華麗なる衣裳の出番はなしか」明音が笑う。
「マジックならチャイナドレスなんだけどな」梨花が言った。
うーん、梨花のチャイナドレス見てみたい。明音のヤンキーウエイトレスも明音自作のミニスカユニフォームで破壊力抜群なのだが梨花と純香のチャイナドレスも出色だ。ほとんど明音がプロデュースしたやつだから。明音にはそういう才能があった。
結局制服姿で楽器演奏することに決まった。コスプレはまた今度か。
持ち運びしやすい小さな楽器ということで俺と明音がオタマトーン、純香がフルート、梨花がタンブリン、カスタネットの担当になった。
訪問先によってはピアノやオルガン、鉄琴などをおいているところもあるので、それを借りることもできる。オタマトーンはお年寄りには新鮮に感じられるだろう。
かなりコミカルなバンドになると俺は思った。俺たちはそういうのが得意だ。
そしてボランティアが終わったらみんなで軽食を食べる。純香がいるのでラーメンではなくスイーツの店に入る話が出ている。
女子三人とスイーツか。かたちはハーレムなんだよな。
タイプの異なる三人の美少女と優雅なスイーツタイム。S組の中でも
それが楽しいからこの関係を続けているけれど、本当は俺も誰かと二人きりのデートがしてみたいよ。
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