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 彼女との同棲期間は、たったの5ヶ月。


 10月からその次の年の2月まで同棲して、彼女が高校を卒業して遠くの美大に通うことになったので僕とは自然と別れる形になった。


 実家から高校に通い始めた僕は、気が向いた日は夕飯だけ家族に作ってあげている。

 父からの小言は、なぜか言われなくなった。家を離れてから家族関係が良好になることもあるらしい。


 そんな具合で、父と自分がそれぞれ仕事と勉強による鬱で食欲を失ったとき作ったのは、野菜たっぷりのシチューだった。昔とは少し違う作り方をしている。


 煮込む前に、鍋とは別のフライパンでじっくりとオリーブオイルで焼いた鶏肉を入れることで、自分が鍋料理に入れて煮込んだ鶏肉を食べるときの気持ち悪さが減るよう意識したもの。

 彼女のおかげで、自分が食べられないものは生っぽさがどこかに残っていて、ちゃんと火を通した食べ物なら美味しく食べられることがわかったからそれを料理でも実践しだしたのだ。


 昔の僕なら食欲がないときに肉を食べることはしなかったが、彼女から疲労度が高いときほど肉を食べるよう言われたので、食欲がないときでも鍋料理に肉が入るようになった。

 彼女と過ごした期間で、自分に食欲がないときでも、大好物のかぼちゃとチーズならいくらでも腹に入ることがわかったのでそれらも沢山入れている。


 そのシチューを食べた父の感想は、「なんでかわからんが、俺好みの賑やかな味になってきた」だった。


 今では、僕の料理は、

 喜怒哀楽の玉手箱かもしれない。


 僕の料理に触発されてか、次の日の夜に父が作ってくれたのは、僕が作るシチューと同じ手順で鶏肉を調理したポトフで驚かされた。

 父は、自分好みの調理を優先して他の家族が食べやすい料理は作らない気質だから、僕を認めてくれたような心地がして嬉しい。


 翌朝は、久々に朝早くから家族と一緒に除雪作業をしたあと、雪質がちょうどよかったのでその場のノリでかまくらと雪だるまを共に作って過ごしていた。

 この場所を離れたら、こんな風に雪と戯れることもできなくなるのかと思うと虚しくなる。


 ふと彼女も今ごろ同じことを考えている気がした。


 久々に会って、

 美味しそうに食事する彼女を眺めたい。

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