第11話 選ばれたのは、あなたです。
最初は半信半疑だったものの、次第に興味を示し始めてきた父親。話が進んでいくにつれ、徐々に引き込まれていったのだろう。気づけばすっかり聞き入っており、
(ちゅぅ……父さんがちょろくて良かったよ)
「んっ、ちょろい?」
安堵のため息を漏らす
「ちゅぅ、なんでもありません。こちらのことなので、気にしないでください」
「そ、そうか、ならいいんだが。ところで、さっき言っていた代案ってのは、どういう内容のものなんだ」
「ちゅぅ、密着型のことですか?」
「おう、それそれ」
「ちゅぅ。それはですね、先ほども言いましたように、代案というのは予期せぬカップルを誕生させない為のもの。とはいえ、人間と接触する以上、危険を伴うのは明らかな状況。ですが、この大胆な発想は、安全で確実に心を結びつけることが出来ます」
「つまり……お前のような奴が間に入って、二人の仲を取り持つということだな」
「ちゅぅ、そうです。要は矢の代わりに人の言葉を使い、僕達が恋を成就させるというもの」
「へえー、それは名案じゃないか」
「ちゅぅ。といっても、そこに至るまでには、大変な道のりがあるんですけどね」
「なるほど。その恋を叶えるために、天界から遣わされたのがお前だな」
この発言から察するに、多少なりとも理解を示し始めたようだ。といっても、
「ちゅぅ、さすが察しがいいですね」
「そうなると、お前みたいなキューピッドが他にもいるってことだよなぁ?」
「ちゅぅ……あっ、はい」
「ん? どうした、何か問題でも?」
父親から不意に尋ねられた
「ちゅぅ、なんでもありません」
「そうか、ならいいんだが。――で、お前が成就させたい人間ってのは、この学校にいる奴らなのか?」
父親の何気ない問いかけに、
「ちゅぅ。この学校というよりも、僕の近くにいます」
「近くに?」
恋を成就させるための助言。ここからが正念場であり、
「ちゅぅ。ずばりお答えするなら、
「――はぁ⁉ おっ、俺?」
まさか自分の名前が告げられるとは思ってもいなかったに違いない。父親は驚愕の声を上げると、唖然とした面持ちで
「ちゅぅ、そうです」
「いや、待て待て! なんで俺なんだよ」
突然にも突き付けられた言葉。いきなり対象者だと言われても、困惑するのも無理はないだろう。こうして動揺しながら
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます