第3話 想い出の場所
こうして決断を下してから数日後のこと……。
そこは花々や樹木が植えられ、気持ち安らぐ公園のような場所。よって、敷地内は遊歩道などが敷かれ、のんびり散歩をするには丁度よい。中でも、一際目を引くのが長い年月を積み重ねた大きな老木。この土地に住む者達からは、千年樹として親しまれてきた。
そんな心癒される場所ではあるも、訪れる人は何処か重い空気を醸し出していた。というのも、ここは自然を楽しむのではなく、遺骨が埋葬された死者を供養するための霊園。
立ち寄っていた理由は、ある人物の命日だったからである。そう……言わずと知れた、亡くなった母親の墓参り。霊園内には、他にも数多くの墓標が立てられており、周囲には同じような人が悲しみに暮れながら佇んでいた。
この中を感慨深く歩き進めていると、やがて目的の墓石前に辿り着く。そこへ
「おや?
「えっ……
聞きなれた言葉の響きに、声のする方へ耳を傾ける陽日。その視線の先に居たのは、開発を共に手掛けていた
「どうしましたか? そんなにも驚いた顔をして」
「ひょっとして……いつも花を供えてくれていたのは、
墓標に活けられた花束を見つめる
「ええ、そうですよ。もしかして、ご迷惑でしたでしょうか?」
「いえ、そんなことありません、とても嬉しいです。きっと母も、喜んでいるに違いありません」
ほんのりと瞳をにじませ、笑みを浮かべる
✿.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.✿【場面転換】✿.。.:*:.。.ꕤ.。.:*:.。.✿
それから暫くして、霊園の近くにある喫茶店へ移動する二人。窓際にあるテーブル席に腰を下ろすと、
「この店、今も変わらず趣きがあって素敵な場所ですね」
「今も……ですか?」
「ええ。ずいぶん昔の話になりますがね、ここは坊ちゃまの両親とよく来たことがあるんですよ」
「僕の両親と……?」
店の中は、木目調のテーブルや椅子が置かれており、落ち着いた雰囲気のレトロな空間。また、カウンター席とボックス席があり、客層も多彩で老若男女問わず利用されていた。
「はい。学生の頃から慣れ親しんだ場所でね、あの頃は本当に楽しかったです……」
「そうだったんですね。親交が深いと聞いてはいましたが、その頃からだとは知りませんでした」
店のマスターが、ふらりと注文を聞きに来る。
「お客様、ご注文は何になさいますか? …………あれ? もしかして、
「さすがマスター、私だと良くわかりましたね」
どうやら二人は顔見知りらしく、マスターは懐かしそうに
「そりゃあ、髪の毛は白くなりましたけどね。あの頃の面影は、十分に残っていますよ」
「はは、お互い歳はとりたくないものですな」
笑い合う二人は、まるで当時の頃に戻ったかのようであった…………。
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