第5話バーチャルRPGシステム
研究所の中央には、まるで歯科医院の診察台の様な椅子が5つ…その上には、無数の配線に繋がれたヘルメットが置かれていた。どうやらこれが、話題にのぼっていた『バーチャルRPGシステム』という機械らしい。
「なんか、ゲーセンのバーチャルゲームみたいね…」
子豚のそんな感想を、瀬川博士は不愉快に思ったのだろう…自分の開発したこの機械を指差して、子豚に詰め寄った。
「これのどこがゲーセンのゲームに見えるんだ!あんなモノとバーチャルRPGシステムを一緒にするんじゃないっ!」
「だって、椅子の横に『SEGA』って大きく書いてあるじゃないの」
「それは、私の名前『瀬川』の『SEGA』だよっ!」
紛らわしいよ…瀬川博士…
「それで博士…この機械の使い方なんですけど…」
初めてこの機械を目にしたシチローは、瀬川博士にその説明を求めた。
「使い方は簡単だ。君達は、このヘルメットを被って椅子に座ってくれれば良い。この機械は、君達の脳波をコントロールして君達を『mother』の創るバーチャルワールドへと、ネットを通じて送り込んでくれる」
「なるほど…直接戦うんじゃなくて、バーチャルだから命の危険は無い訳ですよね」
シチローは、そう言って安堵の表情を見せた。
だが…シチローのそんな言葉を耳にした瀬川博士は、困った様な顔をして凪の方を振り返り、その凪も何か浮かない顔で俯いていた。
「いえシチロー…今まで何人もの人間が、この機械を使って『mother』のバーチャルワールドへと送られて行ったわ…けれど、無事にこの場所へ帰って来れた人は1人もいないの…」
「なんですとおぉぉ~!」
凪の衝撃的な告白に、4人は一斉に声を上げた!
凪は、更に詳しい説明を続ける。
「確かにバーチャルだから、体に受ける外傷は無いけれど…このバーチャルワールドに居られる時間は24時間…その間に『mother』を破壊出来なかったり、敵に倒される様な事があれば、送り込まれた人間の脳波は二度と現実の体に戻る事が出来なくなるの!」
なんと、既にこのバーチャルRPGシステムで『mother』のバーチャルワールドへ送られた『ネオ・チャーリーズエンゼルパイ』のメンバーは敵の刺客に次々と倒され、誰一人として現実に戻って来てはいないのだという。
これは機械軍と人間の存続を懸けた戦争であるという現実を、シチロー達4人は改めて思い知らされた。
てぃーだは、瀬川博士に疑問を投げかける。
「バーチャルでも現実でも、結局命を懸けて敵と戦う訳でしょ?
それなら、このバーチャルRPGシステムのメリットって何なの?」
その質問に瀬川博士は、こんな例えを使って説明をしてくれた。
「例えば、プロ野球の選手と野球の勝負をしても勝ち目が無いのは明白だ。…しかし、それが『野球ゲーム』だったらどうだろう?…それなら我々にも充分に勝機はある。…現在、火力を用いた武力による戦いでは明らかに機械軍の力が上回っている事は、紛れもない事実なのだよ……」
♢♢♢
それからおよそ十数分後…シチロー達4人と凪は、バーチャルRPGシステムの椅子の上に座っていた。
「凪も一緒に行ってくれるんだね」
「勿論です!皆さんにこんな危険な役を押し付けて、私だけ安全な場所で見物している訳にはいきませんから!」
このバーチャルRPGシステムという機械…シチロー達には、まだまだ解らない事が多い。
ガイド役として凪がいてくれれば、シチロー達にしてもありがたい事だ。
ちなみにメルモは、この5人の動向を研究所のモニターで監視する役目になっている。
「さあ!それでは始めようか!」
瀬川博士の合図で、5人はそれぞれ持っていたヘルメットを頭に被った。そして、瀬川博士が機械のスイッチを入れると、5人はまるで同時に催眠術でもかけられたかのようにゆっくりと深い眠りに就いていった。
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