03-05 二度と私はリカを許さない。
まばたきを一つ。
「……すまない。気を失っていたようだ」
肩を押したタイミングでバラハが発生させた風魔法を敷き布団代わりに、目を開けたまま気を失っていたジーが唐突に、ようやく、しゃべり始めた。
ムクリと体を起こしたジーを見て床に座り込んでいたオリーとバラハ、ラレンは驚いた様子で振り返った。そして、気絶に追い込んだ張本人とも言えるリカは――。
「ジー君が目を覚ましたぁぁぁーーー!!!」
ぶわぁ! と目に涙を浮かべるとジーが吹っ飛ぶほどの勢いで抱き着いた。
「なんだかよくわからないが……すまない、心配をかけたようだ」
「ごめんね、ジーくぅぅぅーーーん! 僕が悪かったよぉぉぉおおおーーー!!!」
あいかわらず淡々とした表情のジーと、そんなジーの頬に涙と鼻水まみれで頬ずりをするリカを見てオリーとバラハは苦笑いし、ラレンは目をつりあげた。
「平然としゃべり始めましたね、ジー。見てるこっちはいつ意識を失ったのかも、いつ意識を取り戻したのかも全然わかりませんでしたよ」
「お前……本当に顔に出ないんだな」
「そんなことよりも勇者様から離れろ、魔王!」
「ジー君が優しくて繊細だってよく知ってるのに! 神剣で自分の首をバッサリなんて惨状に直面するよりも前に想像だけで気を失えるくらい優しくて繊細だってよく知ってるのに! ごめんなさい、ジーくぅぅぅうううーーーん!!!」
「勇者様も
オリーとバラハのあきれ顔とラレンのご立腹具合とリカのご乱心っぷりをじーっと見つめたあと。
「そうだった……私は剣を自分の首にあてるリカを見て驚いて気を失ったんだ」
ジーはぼそりとつぶやいた。
「この魔王、今、思い出したのか!?」
「みるみるうちにジーの顔が青ざめてくな」
「これはもしかしたら思い出し気絶をするパターンかもしれませんね」
そう言いながらバラハはいつでも敷き布団代わりの風魔法を発生させられるようにと杖を構えた。そんなバラハを大丈夫だ、心配ないと言うように手で制してジーはリカに向き直った。
「リカ、一生懸命に作ったと言ってもしょせんは泥人形だ。土魔法で作り上げた〝物〟でしかない。だから、壊したことは怒っていない。どうか気に病まないでくれ」
青い顔のジーはそう言ってリカの肩をそっとなでた。
「だが、もしまた自らの命を自らの手で……なんてことを考えるようなら、そのときは二度と私はリカを許さない。私のことも、私が作った物も大切に想ってくれるのなら、同じように私が大切に想っているリカ自身のことも大切に想ってくれ」
片目は眼帯に覆われている赤い瞳で心配そうに見下ろすジーをリカはじっと見返した。
かと思うと――。
「ジー君、ごめんなさいーーー! 二度としないですぅぅぅうううーーー!!!」
「……ぐふっ」
「ジー君ってばホント優しい! こんな僕なんかにも優しい! 大好きぃぃぃいいいーーー!」
ぶわぁ! と目に涙を浮かべてジーがうめき声をあげるほどの勢いで抱き着いた。それを見たラレンは床をガンガンと杖で叩きながら怒鳴るのだった。
「だから、勇者様! 魔王なんかにひょいひょい抱きつかないでください!」
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