第1章 第7話 懐かしい母校

 シュフィール学院はこの大陸の想像神女神ティアレシアを崇める聖都の役割も担っている。


 深い森の中心にあるそれはもはや学院というよりも一つの都市となっているようだった。


 警備兵に身分証を見せ、大きな門の中を潜ると真っ先に見えるのは緑と赤レンガの程よく混ざりあった景観。

 下町は多くの生徒で溢れかえっており、いくつもの建物が立ち並ぶ通りは首都の町並みと変わらないくらい圧巻である。


 最奥に建てられた学院の方に向かうと、懐かしい顔が遠くに見えた。


「クロワ〜ル〜!!」


 大の大人でありながら子どものように手を振るのは、

 クロワールをここに連れてきた張本人。

 …タグウェスである。


「少し見ないうちににもっとやさぐれたなぁ〜」


「なら…病人に対してもっと優しくしてくれないか?」


 苛立ちを隠さない様子で言葉を返すがタグウェスは気づいてないのか身じろぎもせずあっけらかんとした様子であった。


「アッハッハ!お前に優しくしたところで何も嬉しくないだろ?」


「黙っているのも優しさの一つだが?」


「相変わらずだなぁ〜」


 クロワールが割と本気で冷たい言葉を浴びせるが、タグウェスは微塵として気にしない。


 もはやこれは合うたびの恒例行事なのでお互いに楽しんでいるのだ。


「さぁて読んでくれたと思うがクロワールに教師を任せたいんだ」


「何で俺なんだ?エグモントのほうが向いてるだろ…?」


「いやぁ今回のこれエグモントからの頼みなんだよなぁ」


「はぁ…?」


 …そして詳細を説明してもらったところ

 どうやら俺の生活習慣を治すために色々としてくれていたらしく

 結果傭兵の仕事を一時的にやめさせるのが手っ取り早いらしい。

 そこで新しい教師を探しているとタグウェスから聞いて丁度いい機会だと意見が合致したとか…。


「…俺の意思は?」


 話を聞くにクロワールの意見がまったくない。

 いや、手紙を呼んでいたときからそうであるが無断で物事を決め過ぎだと思う。


 訝しげな目でタグウェスを見るが本人は笑顔を浮かべたままだ。


 そして満足気に笑顔を見せて親指を立てた。


「これで健康体に戻れるな!」


「…おい」


 思えば昔からこの男には話が通じなかった…。

 通じないというか、跳ね除けされる。


「はぁ…わかった、だが俺にできることは限られているからな」


 やはり断ることなどできなく、半ば投げやりにクロワールはそう言ったのだった。





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