第8話 傭兵はやる気の無いように見えるだけ
「あ、あんたが新しい剣術の講師か」
「あぁ…クロワールだよろしく頼む」
初授業当日生徒達の前に出たクロワールに生徒達は驚きを隠せない表情で目を疑っていた。
ちなみクロワールは結局剣術の講師を任させた。
腕利きの傭兵だとタグウェスが紹介したためそれなら職に携わることのほうが教えやすいだろうと判断したらしい。
そして話を戻すと、早速授業を始めたところなのだが生徒たちがクロワールを見て固まっている。
なぜならそれはクロワール自身に問題があるからだ。
…クロワールの姿が病人にしか見えないためである。
ボサボサの傷んだ灰色髪を後ろにくくりつけ、
目元にははっきりと主張をした濃い色の隈。
蒼白い顔色…何処となくやる気のない暗い雰囲気。
まだ死神や冥界の案内人と言ったほうが信じてもらえたであろう風貌をしていた。
正直こんなのが剣術の講師だと言ったら信じてもらえないはずである。
しかしクロワールがそうだと肯定したため、
生徒達は今度は困惑した表情を浮かべていた。
「まぁ…そうなるよなぁ」
クロワールとしても剣術系の講師を担当するのなら上背があり筋肉のついたそれこそタグウェスのような人間のほうがふさわしいと思う。
…それにしても久しぶりによく寝た。エクセルの睡眠薬はやっぱりよく効く。
クロワールは呑気にそんなどうでもいい事を考えていた。…疑われたとしてもクロワールの腕に変わりはない、授業を受けてみれば分かることである。
「おいおいこんなのが先生なのか?偽物なんじゃね?」
(おやおや)
「皆も少しは疑えよ、この名門学院がこんないかにも怠そうにやる気の無い教師を雇うか?」
「「た、たしかに」」
(確かに…正論だな)
本来は否定するべきクロワールも何故か納得してしまう。
「よし…とっ捕まえるぞ」
リーダーらしい生徒が剣を抜く素振りを見せた。
「えっ!?でも怒られるんじゃ…っ」
「俺等より弱い教師を雇うわけないだろう?」
「あ、そうか…」
見事に他の生徒もいいくるめられこちらを疑う視線を向けてきた。
教師だと証明するには学院の校章を見せれば問題ない。
しかしあいにくと寝ぼけてしまったせいか寮の自室へとそれを置いてきてしまっていた。
このままでは不審者と言われても不思議ではない。
…なんだかまずい事になったなぁ。
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