第3話 反省する傭兵呆れる知人
緑に囲まれた隠れ家のようにひっそりと佇む小さな家。
扉の前に掛けられた看板には「フメールの診療所」と書かれており、この付近の医者の家だということが伺える。
室内に入るとハーブや薬品の匂いが立ち込めており清涼感溢れる空気が鼻孔をくすぐった。
「来ましたか…とりあえず付いてきてください」
視界の先には白い白衣をまとった青年が一人。
無断で侵入したこの客人に驚くこともなく、何やら木箱を抱えたままとある部屋へと案内する。
応接室、という名の薬学に関する本が集められた書庫に案内された。
それらは恐らく国中から集められたものであり、クロワールは、この家主の相変わらずの探究心に感心しながら目の前の少年と向かい合った。
ソファへと互いに腰掛けると口頭一番に友人は呆れた表情を見せた。
「手紙を読みましたが、クロワール…君は本当にわからないのですか?」
クロワールの様子とは裏腹に目の前の青年は頭を悩ませるような素振りを見せた。
なぜそんな顔をしているのか理解が出来なかったクロワールは首を傾げ疑問に思ったことをそのまま口に出す。
「あぁ…俺は何も今の生活を変えていないが、それと体調不良が関係あるのか?」
何もわかっていないクロワールに向かい青年は深いため息をこぼし、そしてそばにあるカップに入った紅茶のようなものを口に含んだ。
香りから恐らく薬草を煎じたハーブティーのようなものだろうか。
この青年、エグモントは蒼髪の知的な顔をした巷で腕の良い医者であり、元は昔通っていた学院時代のクラスメイトで、今では腐れ縁となっている一人だ。
しかし実際は国家の資格を持つ名のある薬学士であり、医者というのは仮の姿である。
そんな優秀な医者がクロワールの言葉に頭を悩ませていた。
「君…普段どんな生活を送っているかわかっています?」
「特に普通の人と変わらないんじゃないか…?」
クロワールとしては食べて、働き、寝る、これが出来ていれば人並みの生活をしていると思っていた。
しかしエグモントの見る限りでは違うらしい。
「はぁ…駄目ですねこれは」
呆れたように薄らと笑みを浮かべるエグモントは遠い目をして、もう私の手に終えません…などとぼやいた。
人を変人みたいに…失礼な
「よろしいですか?まず一般人は傭兵なんて職なりません。おまけにクロワールみたいに普段から野営生活を送る傭兵もいません!」
「そ、そうなのか」
いきなりカッと目を見開いてお叱りモードに入ったエグモントにクロワールは気後れした。
「それだけでも身体に負担がかかるというのに普段君が食べてるのは何ですか!?」
「携帯食……」
「携帯食を普段の食事にする馬鹿が何が一般人と同じですか」
「す、すまない」
エグモントから叱責をうけ、謝罪の言葉を口にした。土下座をする勢いで頭も下げると暫く無言の状態が続いた。
だんまりとした部屋の空気に身動きをとらずにしていると、反省の意を感じたのかエグモントは長いため息を吐き、薬棚から何かを取り出してクロワールに手渡した。
小さな小瓶には白い粉が入っていた。
「睡眠薬、とりあえず寝て様子見てみてください隈が酷い。」
「……あぁ」
今度は素直に返事をした。
やっぱりエグモントを怒らせるのは控えよう…。そうクロワールは密かに決めたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
登場人物の改名
エクセル→エグモントに変更します。
修正できていない点もまだあるかもしれませんが改名しますのでよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます