新薬

Grisly

新薬

「やっとできた。」


月明かりの中、試験管を見つめ、

N博士は感動の表情を浮かべた。


彼の余命は3年。

その最後の日に、

記念すべきこの新薬を開発したのだ。





「これで数千人の命が救える。」


彼自身も感染してしまったその病気は、

数万人に一人という難病。


当然、研究も進んでおらず、

特効薬も、治療薬もなく、ただ死を待つのみ。


この新薬を開発するのは容易ではなかった。

しかし、彼はやってのけたのだ。




「間に合った。

 助けを待つ数千人の命は救われた。


 道筋は立った。

 きっと私の後を継ぐ者が必ず解決してくれる。

 いや、そうしなければならない。」


そう言うと、N博士は微笑みを浮かべ、

安らかに息を引き取った。







世界有数の頭脳を持つ彼だったが、

残念な事に3年で特効薬を作るのは不可能。


加えて、世界で数千人しかかかっていない病気

当然だが、資金も集まらない。


解決法は1つ。母数を増やす事である。




その晩、

ロケットに乗り、世界中にばら撒かれたのは

彼が開発した新薬。

というよりは、生物兵器…




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新薬 Grisly @grisly

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