その19.話の流れから主要キャラを決定し、その役割と属性を設定する

 前回までで『読者に親しまれやすいキャラクターの類型』について7つの属性の概要を挙げ、その運用方法について語らせていただきました。

 今回はそれらを踏まえ、どうキャラを作っていくか手順を交え語らせていただければと思います。



 まず、基本的な方針ですが、


『常に話の流れを意識しつつも、自分の好みや世間の流行をキャラクターに乗っけていく』


 こんな感じです。



 今まで読んでいただいた方の中には『話の流れの邪魔をしないキャラクターが最適なのだから、話に沿ってキャラを作っていくだけでいいのではないか』と思った人もいるのではないかと。

 ですがキャラとしては最適でも、物語自体がベストな物になるかというと、そうとは限りません。


 とくに、話の流れをあまりにも意識しすぎてそれに都合のいいキャラクターを出してしまうと、登場人物がまるで物語を進めるための駒のようになってしまい、魅力がなくなってしまう場合があるのです。


 もちろん脇役などの役割によってはそれでよい場合もありますし、敢えて駒のようにキャラを配置してストーリーを見せていく作品も中にはあります。ですが、そういう狙いがないのなら、話の邪魔にならない範囲でキャラクターの魅力をより高めておくにこした事はないでしょう。



 そのあたりを踏まえた上でのキャラクターメイキングの手順は大体以下になります。


1、話の流れから主要キャラを決定し、その役割と属性を設定する

2、主要キャラの背景、特徴を、属性にもとづいて決定する

3、主要キャラの関係性を決める

4、主要キャラのアピールポイントを設定する


 順に細かく説明していきます。



■話の流れから主要キャラを決定し、その役割と属性を設定する


 まず、これから描く物語を構成するのにどういう役割をもつ人物が必要かを考え、列挙していきます。


 役割は『主人公』『ヒロイン』『宿敵』『犯人』『ライバル』『コーチ』など、この段階ではありがちで大雑把なもので大丈夫です。


 またその際、「妹」「幼なじみ」など『これから書く物語に必要とは言えないが、自分はこのキャラクターを入れたい』というものがあれば入れても大丈夫、というか可能であれば積極的に入れてかまいません。

 ただ、いきすぎると話の制御が難しくなる場合もあるので、慣れないうちは注意が必要。


 もし人物や役割が思いつかない場合は、上記に挙げたような『主人公』『ライバル』などの定番の役割をまず思い浮かべ、それらが物語上でどう動くかを考えるという手もあり。

 また前回までに語られた7属性のそれぞれ1つを持つ7人の登場人物を考え、その人物がどのポジションに当てはまりどう動くか想像しながら役割を固めていく、というやりかたもあります。



 ただ注意点として、主人公や敵サイドの人数をあまり多くしすぎると同じような性格のキャラクターが並んで印象を薄めたり、読者の混乱を招いたりする元になります。多くなりすぎるようなら、上手く書けなさそうなキャラを吟味して削ったり、複数の役割を一人の人物にまとめたりしたほうがいいでしょう。


 そしてどの人数に納めるか、その目安となる数字が(主人公も入れて)敵味方それぞれのサイドに5人以内。


 5人というのは、『キャラかぶりをさせずに読者の関心を維持したまま個性的にかき分けがしやすい標準の人数』と言われています。昭和付近の戦隊物の主人公サイドの人数が5人であるのもこの辺りが関係しているという話も。敵方に関しても『四天王+ボス』というのは定番の配役でしょう。


 戦隊物は東映だけでも現在50作近くやっており、それぞれが毎回主人公サイドのキャラクターについてどう魅力に富んだものにするか四苦八苦しており、5人組の役割と動きの見本として良質で栄養価が高いと思われます。


 そのメンバーの性格や役割は長年の経験則からおおまかに定番化しており、概ね以下のような割り振り。


○リーダー:主人公格であり、物語のテーマを体現したような特徴や性格を持っています。話を大きく動かすために積極性や情熱性を持ち合わせる事が多いですが、その分他者の心情の機微に鈍感な場合があります。能力は全般的に高いです。


○サブリーダー:主人公のライバル的なポジションでリーダーに対して多少批判的な態度を見せることが多く、テーマのアンチテーゼとして機能します。冷静沈着などリーダーと逆の特徴を持つことが多く、また(知能派や美形など)リーダーがどうしても勝てない美点を1つ以上持つことが多いです。


○第3リーダー:リーダーの親友など理解者的ポジションでありながらサブリーダーにも一目置かれ、二人の仲介役に収まることが多いです。また物語の落とし所へ誘導する役割を担うことがあります。行動は控えめで良識的であり、ゆえにあまり目立ちませんが、ポイントポイントでおいしいところを持っていきます。2人と比べ年上視点になる場合もあります。


○仲間1:基本的に物語のテーマとは関係ない動きをし、お調子者やドジっ子としてふるまいます。トラブルメーカーであり、主人公サイドがやっかいごとに巻き込まれたり不運な流れになったりするトリガーとして働く場合が多いです。リーダーたちと比べ年下視点になるケースもあります。


○仲間2:一見仲間1と同じくテーマとは関係ない動きをしますが、よりマイペースであり、あまり周りの空気を読みません。自分勝手にふるまっているかと思うと、突然物語の核心を突くような動きをすることがあります。


 以上ですが、ちなみに基本としてヒーロー物に適した組み合わせに特化されている上に、成功した組み合わせを比較的踏襲しがちではあります。なので、参考にする際は元ネタの組み合わせを積極的にひねるのもあり。

 ひねり方によってはバトル物だけではなく、チームプレイが必要な部活・業界物や、クラスを巻き込むような学園恋愛物などにも十分適応可能だと思います。


 また5人としましたが、あくまでも『多すぎる場合はこの人数に納めるべき』という目安なので、それよりも少ないメンバーで物語を構成できる(あるいはしたい)なら1~4人でも問題ありません。

 特に上の例のうちリーダーだけを採用したタッグ(2人)やトリオ(3人)の組み合わせは集団メンバーの構成人数として多く採用されています。


 また逆に6人以上でも、本当に必要ならかまいません。

 実際、現在の戦隊物は物語途中でさらに1人が追加され、最終的に主要メンバー6人で戦うのが定番となっています。



 このように主要な登場人物とその役割を設定したら、一人一人に(先日挙げた『さまよえる跛行者』『塔の中の姫君』などの)属性を設定していきます。


 そのさい一人に複数の属性を設定してかまいませんが、あまりたくさん盛ってしまうとキャラクターが現実味を失ったり制御が難しくなったりしますので、本当にその属性を設定する必要があるかよく考えた方がいいでしょう。大体、多くて4つ位が限界だと思います。


 属性を設定できるほどキャラクターをイメージ出来ていない場合は、いったん以下のような定番で仮設定してもいいでしょう。


主人公 :『さまよえる跛行者』や『二つの顔を持つ男』や『時空を超える恋人たち』や『造物主を亡ぼす者』

ヒロイン:『塔の中の姫君』や『武装戦闘美女』や『時空を超える恋人たち』

ライバル:『二つの顔を持つ男』や『危ない賢者』や『時空を超える恋人たち』

ボケ役 :『危ない賢者』や『武装戦闘美女』

インテリ:『危ない賢者』


 また、先ほど挙げた5人組ですと


リーダー  :『さまよえる跛行者』『造物主を亡ぼす者』『二つの顔を持つ男』

サブリーダー:『二つの顔を持つ男』『危ない賢者』

第三リーダー:『時空を超える恋人たち』『危ない賢者』

仲間1   :『時空を超える恋人たち』『武装戦闘美女』『危ない賢者』

仲間2   :『さまよえる跛行者』『危ない賢者』


 各役にいずれか1~2つの属性がつくことが多いように思います。



 以上となりますが、ちなみにここで設定したものは『仮』のものとなります。なので、作業を進めていくに従ってもっと良いアイデアが見つかったり他の設定の邪魔になったりするようでしたら、元の設定にこだわらず修正や変更を加えてもかまいません。


 拙作「劣等スキル~」も、企画段階では


リーダー  :農民、主人公、熱血系、『さまよえる跛行者』

サブリーダー:鑑定士、ライバル、頭脳派、『二つの顔を持つ男』

第三リーダー:姫、ヒロイン、金髪少女、『塔の中の姫君』『時空を超える恋人たち』

仲間1   :鍛冶士、トラブルメーカー、オタ、『危ない賢者』

仲間2   :商人、不思議系、ブラコン、『時空を超える恋人たち』『二つの顔を持つ男』


 として農民を主人公にした話を考えていたのですが、大筋を書き出しているうちにサブリーダーの鑑定士を主人公にした方が、話が転がりやすく面白い事に気がつき大筋を鑑定士視点で書き直したという経緯があったりします。



 長くなりましたので、手順2~4は次回に語らせていただきます。

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