その20.主要キャラの背景、性格を、属性にもとづいて決定する

 前回は、思い浮かべている話の概要から必要となるキャラクターを考え列挙。その各キャラに役割と属性を設定する手順の解説をしました。


 

 今回はその続き。各キャラの役割と属性からそのキャラの背景や性格を決定し、それを具体的なキャラ設定に落とし込む手順の解説となります



■主要キャラの背景、性格を、属性にもとづいて決定する


 キャラクターの役割と属性が決まったら、次はそれらを元にキャラの背景とそれに基づく性格を決定します。


 背景というのはそのキャラクターの生まれや育ち、物語のスタート地点に立つに至ったいきさつ、物語上でどういう思いでなにを目的として活動するか、などの設定のこと。


 ちなみに『主人公の出生の秘密』みたいな核心的なネタバレ設定を盛り込むのは基本、このタイミングとなります。

 なぜかと言いますと、例えば主人公が自分の重い過去と宿命を自覚しているのなら、その性格も普通は堅いものか荒んだものになるでしょう。また逆に軽いノリの性格だったとしても、過去に縛られない環境に置かれていたり心温まるようなエピソードがあったりするのが自然であり、ドラマチックな回想を盛り込みやすくもなります。


 また背景は属性にも影響します。極端な話、背景のない人がなんの気なしにある日突然『よし、神様を倒そう』とは思わないわけで。ましてや『造物主を亡ぼす者』の属性を帯びることも普通はないでしょう(※1)。

 このように背景・性格・属性は密接なつながりがあるわけで。できる限り早い段階で関連性が設定されるにこしたことはないわけです。


 ただ、都合がいいとはいえこのタイミングであまりこだわりすぎるのも問題。アイデアが出ないで制作が止まってしまうのは本末転倒と言えます。また、作っているうちによりよいネタを思いつく可能性もあるわけで。

 ですので、すぐに思いつかないのなら『主人公にはなんか暗い過去を持たせたい』位の方向性だけ定め、あとで他の設定や話を作りながら固めていくのもありです。


 また、この段階では背景・性格を他作から拝借してもかまいません。ですが、内容をそのままなんのひねりもなく導入してしまうと(パクリの問題もありますが)、キャラクターが違和感や矛盾などをはらみ読み手が冷めてしまいます。

 ということで、制作しながら自分の作品に合わせてキチンと整形を行い、物語になじませる工夫をおこなったほうがいいでしょう。


 ちなみに繰り返し紹介していますが、新城カズマ氏著の「物語工学論 キャラクターの作り方」には、各類型・属性毎にチャートが用意。そこに内容を記入していくだけでキャラクターの背景の大部分を構築可能ですので、興味あるかたは参考にするといいと思います。



■主要キャラの関係性を決める


 主要キャラクターを決めその役割と属性を設定できたら、次はキャラ同士の関係性を設定します。


 多くの場合、物語では人と人の関わり合いで生じる事件を主に描くことになるのではないでしょうか。

 そこで、キャラ同士の関係性を洗い出すことにより、物語上でどのような事件が発生するか、あるいは可能性があるか、そこで人がどう動くかをあらわにします。


 具体的な設定内容は大体、


○親子、兄弟姉妹、先輩と後輩、師匠と弟子、など立場上の関係性

○物語上でどのように関わり、どうお互いに影響を与えるか

○お互い相手のことをどう思っているか


 これらをすべてのキャラクターの組み合わせについて総当たりする勢いで考え、可能な限り設定します。ただ、物語上接触が全くないキャラ同士についてはムリに時間をかけ考えて設定する必要はありません。あくまでも制作開始優先ということで。

 もっとも、余裕があればそういった無関係なキャラ同士『どう物語を変えれば接触できるか』『もし接触したらどうなるか』などを考えると、キャラや物語の展開の幅が広がる可能性があります。



■主要キャラクターの見た目など具体的な設定を決定しまとめ、その中からアピールポイントをピックアップする。


 主要キャラの関係性の設定までたどり着ければあと一息。次は今までの作業で考えた内容を頭に入れつつ、『名前』『性別』『性格』など具体的な設定を決定、まとめていきます。


 そのまとめ方ですが、『物語を書くときにそのキャラを上手くイメージできるようなもの』になっていれば、基本どのような形式でもかまいません。

 決まったフォーマットに心当たりがない場合は、一般的な公式設定資料集など作るノリで考えてもよいのですが、ただ売られている公式設定集のほとんどはキャラの外面的な設定が主な内容になり、内面的なことがあまり語られない場合が多いと思われるので、注意が必要です。


 ちなみに資料集以外のまとめ方として、例えば


○TRPGのキャラシートみたいなものを作る

○イメージストーリー(登場シーンの妄想)を書き殴り

○キャラに自分自身を自己紹介させたり愚痴を言わせたりする


 なんて方法をとっている人もいます。一般的な設定資料ではしっくりこない方は色々探ってみるといいでしょう。ただ箇条書き形式にしておくと、後述する『アピールポイントの設定』について多少やりやすくなるかもしれません。


 また自分の場合は、


〇名前・性別・年齢

〇一人称

〇物語上での立場

〇コンセプト(そのキャラクターを一言二言で言い表すならどういうキャラか)

〇見た目の印象(他人からどう外づらを見られているか)

〇性格や能力・弱点

〇行動原理・価値基準(なにに対して感情を強く動かされるか)


 これらをなるべく端的にまとめています。



 それと、ここでまとめた物は今後キャラをどう動かすか悩んだときにたびたび見返すことになると思います。ということで、まとめた設定はいつでも見られるようにしておいたほうがいいでしょう。


 これも、人によっていろいろな方法がとられていて、たとえば


○原稿と同じくテキストにまとめる

○EvernoteやNotionなどの多機能型のノートアプリにまとめる

○手書きや印刷で紙に出して手近に置く


 など、様々です。


 ちなみに自分の場合、以前はEvernoteやOneNoteに箇条書きにしていました。しかし最近はNotionでデータベース化しています。エンジニアとしては、VSCodeでの管理に興味がありますが……。そこに時間をかけるのは本末転倒な感じなのでなかなか手が出せない状況。


 また注意点として、あくまでここでまとめた設定は作者自身のためにまとめた資料なわけで。その内容を(物語の理解や表現に不要な設定まで)包み隠さず作品上で直接表現する必要はないです。

 例えば好きな色や嫌いな食べ物などの設定を、なんの意図もなく出すのは避けたほうが視聴者の混乱を招かずに済むというわけです(※2)。



 このように一通り設定をまとめたらいよいよ手順の最後。設定の中からキャラクターのアピールポイントをピックアップします。


 アピールポイントというのは、今風に言うのなら『読者の心に刺さるであろうキャラの特徴』

 またあえて俗な言いかたをすれば『読者に対して売りになるであろう特徴』と言えるでしょう。


 次回はアピールポイントに関して詳しく説明していきます。




 追記


(※1)ただ最近は意外性や狂気などを表現するために、敢えて軽い思いつき、あるいはなんのきっかけもなしにキャラクターに突然突拍子もないことを実行させるような作品もあります。


 もっとも、そういったものはほとんどの場合、『なにも考えていない変わり者・天才あるいは狂人』として計画性をもってキャラを設計・設定しているわけで。

 それもなく行き当たりばったりでそういう行動をさせてしまうのは、かなりの博打になると思われます。



(※2)ただ、最近は一見物語と関係を持たないキャラエピソードが作中で詳細に書かれているものもあります。

 これらは基本的に設定の理解を深めるための説明としてではなく、そのキャラクターの特異性や歪さを意図的に読者に強く感じさせるエピソードとして表現されるものです。


 また中には、一見関係ないように見えて実は物語の核心を暗示する、伏線ないしは前振りとして機能させているものも。上手くやれば高い効果をもたらしますが、その手法を採用するかは自分の技量と相談、という感じになるかと。


 またちなみに、最近は読者が『美人』であるとか『可愛い』であるとかのカタログ的表現に興味を持たない傾向が強いと言われています。(『綺麗な黒髪』など、文章でつらつらとどういう美人かを説明しても読み流される)

 そういった直接的な表現は最小限で軽く済ませ、あとは(街ゆく人が注目している様子を描くなど)物語の描写として溶け込ませるように描く。あるいは美人であることにまつわる特異なエピソードを紹介するほうが読者に読んでもらえる可能性が高いということです。

 またラノベ系の読者はそもそも地の文を読み流す傾向があるようです。そこで、他のキャラに(自然な範囲で)特徴を語らせるのも手だと思われます。

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